第六十六話 ストライキ再発!②脳筋
勿論、彼らの言い分も分からない訳ではない。
曰く、魔物が人と戯れあうなど言語道断。
曰く、テーマパーク如きで、人族からの差別や攻撃が止まるなどと思えぬ。
曰く、そもそもが四天王である我等の頭越しで計画が強硬に進められてて気に食わん。
曰く、デリラだって脳筋雌ゴリラじゃねーか、黙って俺たちに味方してろ!
曰く、魔王様もこっち側だろ? 今更いい子ぶんな!
曰く、バーカバーカ!
ヲーイ。
最後の方、子どものケンカか!
やはり、脳へ回す分の栄養が筋肉へ化けた結果、足りていなかった結果であろうか。
自分たちが、ガチンコバトルが出来なくなりそうだからって、ストライキを決行するなどとは。
だがしかし、彼らの言い分にも一理、いや、もっと正しさがあるやもしれんな。
たしかに、ここは地下大墳墓迷宮である。
ダンジョンすなわち、人類と魔族が戦う場である。
そんな場所で、「戦ってはならぬ。」などと命じられればどうなるか?
答えは彼らが出しているではないか。
しかし、吾輩たち魔族の悲願達成のためと、これまで長年に亘り人間どもと戦い続けているが、一度たりとして達成されたことが無いのである。
必ず、人間どもの勇者が現れ、我等歴代の魔王たちを倒してしまう。
あと一歩、あと一歩で、亜人を含む全人類を魔族の手で征服し、悲願が成就する。
そう思わせておいてからの、魔王討伐。
どれだけの魔王たちが苦心惨憺、臥薪嘗胆の想いで、魔族による「差別も戦いも無い平和な世界」を望み、計画し、実現させようと努力してもである。
我らが魔族が人間に何をしたというのか。
我等魔族は、同族同士では、争いはしても、無駄に殺し合いなどせぬ。
弱肉強食と言われるが、「強いものが正しい」のであって、無駄に命までは奪わぬ。
翻って、人間どもはどうであるか?
主義主張、宗教や思想、人種や国家、社会的な分類など、何かにつけて理由を付けては争い、憎しみ合い、殺し合っているだけではないか。
動物や魔物、魔族でさえ、家族や同族には手を出しはせぬ。
群れの中で殺し合いなどすれば、他の種族から付け入られるではないか。
だが、人間は違う。
血の繋がった家族であろうと、妻や恋人、果ては弱者であるはずの赤子や老人に至るまで、手当たり次第に同族で命を奪い合っておるではないか。
このような愚かな種族に、なんの生きる価値があるというのであるか。
魔王である吾輩には、サッパリ思い浮かばぬ。




