第六十二話 デリラ・レポート②ほぁ!?
「デリラよ。
お前の報告書兼提言は、読ませてもらった。」
「はい。魔王様。
如何でございましたか?」
「うん。その・・・。
言い難いんだけどな・・・。」
「なんでございましょう?」
や、ヤメロ。
そんな、期待に満ちたキラキラした目で吾輩を見つめるな!
正直に「分からなかった」などと言えば、絶対怒られるであろう・・・。
「う、うん。
なかなかに、興味深い内容であったと、うん。
あったと、思うような気がする・・・。」
「随分、奥歯に物が挟まったような言い方ですわねえ?」
「そ、そんなことは、な、ないぞォー。
うん、きっと、多分。」
ダメだ。
完全に見透かされている!
吾輩がよく理解できていないことを!!
大変マズイ事態である。
「魔王様?
私、そんなに大それたことを書きましたでしょうか?」
「え、いや、そのぉ・・・、なんだな、随分とまた、思い切った内容だったと思うぞ?」
「そうでしょうか?」
「うん。特にこの、運営計画の見直しとか、戦争による支配ではなく、平和的なとか・・・。吾輩には、壮大過ぎて、ちょーっと理解に苦しむと言うかなんと言うか・・・。」
「ハァー。
やっぱり、魔王様でも、そこで引っかかりますか・・・。」
いやだって、当たり前だろう!?
これまで永年に亘って、繰り返されてきた人族との抗争は、全てそこに尽きると言って良い原理原則を、変えるようなものだぞ。
吾輩の代でそこまで急激な改変をしなければならぬのであろうか?
吾輩が目を白黒させながら、必死で良い案は無いかと考え込んでいると。
「魔王様。
いえ、今だけは、昔に戻った気持ちで、お願い。
ゲオルグ。」
「ほぁ!?」
不意打ちであった。
これまで、一貫して吾輩を呼ぶときは、他者の目の無い場所でも「魔王様」と呼んできたデリラが、突如として、名前で呼ぶのだ。
超驚いた。
「でも、こんな感じなのよ?
私たち魔族が、人族を支配しなければならない理由や動機も分かるわ。
でもね、その理由や動機に、私やゲオルグが支配されなければならない理由なんて、あるのかしら?」
ん?
これは、一体なんの謎かけであるか?
吾輩の呼び方と、人族の支配。
どんな繋がりがあるのかな?




