第六話 副官デリラ
私の名は、デリラ。
闇神官として、偉大なる魔王様に仕える身であり、同時に副官でもある。
闇神官の出身種族は様々で、私はハイ・ダークエルフと呼ばれる亜人族から、邪神様と交流する特殊な力を授かって生まれたお陰で、幼いころから身分の高い方々の側近くで育てられたの。
今の私の仕事は、秘書みたいに魔王様の側近くに仕えていることが多いのだけど、魔王様不在の時や、魔王様の名代として交渉ごとに赴くこともある。
周囲からは、容姿端麗、眉目秀麗、魔王様の懐刀だなんて煽てられてるけど、これでも結構努力してるんだけどね。
実は、ここだけどの話しなんだけど、現在の魔王様と私は、幼馴染でもあるの。
まあ、知ってる人は知ってるって程度だけど、公私混同って非難を避けるためにも、あまり公表はしていない情報だけどね。
魔王様は、闇竜人族の出身で、ご先祖様に当たり、このエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮の開祖直系の子孫であられる、いわゆる由緒正しいお家柄。
闇竜人族とは、竜種と人種との間に生まれた混血で、純血種の竜や龍よりは劣るものの、長寿で様々な分野に秀でた能力を持つ者が多いと言われているわ。
その中でも、“闇”と付く竜人種は特殊で、多くの魔王を輩出していると言われる竜 人族の中でも上位種。
かつてこの地下大墳墓迷宮をこの地で拓いた開祖様は、竜魔人族と呼ばれる種族の出で、魔王五段階変身最終形態として、邪竜神化まで行ける程の凄いお方だったらしいけど、近代では三段階邪竜変形までが限界と言われているみたい。
これって魔王様の血筋の力が弱くなっているのかしら?
私には良くわからないけど、『劣性遺伝』と言われるものかしら。
私は、それなりに家系図を見ると由緒正しい闇神官の出ではあるけど、所詮は、魔王様に仕える家系とも言える訳で・・・・。
幼いころは、あまりそんな上下関係とか、男女だなんて意識せずに、接していられたけど・・・・。
ううん。
嘘だわ、やっぱり、いつの間にか私の中には、無視できない心の疼きが生まれていたんだもの。
でも、今では主従関係の壁を超えることは、恐れ多くて躊躇われてしまう。
大分改善されたとはいえ、未だに身分の差に拘っている者たちも少なくないしね。
だから、決意したの。
『このお方を生涯、影ながら支えて行こう!』って。
そりゃ、夢見ることだってあるけど・・・・。
身分違いの叶わぬ恋、とか、ある日突然互いの気持ちに気づいてしまって、結ばれる、とか・・・・。
でも、魔王様ってば、そっち方面には、超が8ケタ付くくらいに滅茶苦茶疎い人なのよね。
朴念仁ってゆー言葉がこれほど見事に当てはまる御仁は、世界広しと言えども、悲しいけど私の周りでは魔王様が常にトップ入賞。
ハァ。
私みたいな女が、このお方の隣に立ち続けるには、人の何倍も努力し続けて、周囲からも副官として、秘書として、決して劣らない才覚と手腕を見せ続けなければならないもの。
でも、この気持ちは決して誰にも悟られない様にしなくちゃ・・・・。
たとえ、それが魔王様本人だとしてもね。
なにせ、私が仕えている魔王様は、歴代の魔王様と比較しても『優秀』と呼ばれるお方で剛毅な性格で凛々しいお姿だし、我らが全魔族の悲願である、『魔族が平和に暮らせる世界』を達成できるのではないかと期待されているお方だもの。
私事に、気を取られている場合ではないでしょうから、私がしっかりと支えてあげなければ。
先に短編で書いた「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」の本編です。
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ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開してみることにしました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス
本日最後の投稿です。




