第五十九話 魔王対絶対勇者⑧デリラ復活!
「吾輩の覇業には、行く手を阻む者が多すぎるのであるな・・・。」
「誰も、魔王に支配されたがる人間は居ないと思うぞ。」
「そうねぇ、魔王さんが良い人なのは分かったけど、それとこれは、話しが違うわねー」
「すみません、魔王様。
でも、お二人が言うことは正しいと私は思います。」
吾輩の溜息と共に吐いた呟きに、ダンサツ・ダンメツが答え、クリスが止めを刺してくれた。
心が折れそうになるわ!
「う・・・ん・・・・?」
先程、最初の攻撃で気を失っていたデリラが目を覚ました。
これで、一人でも吾輩の味方が増えてくれるなら!
「デリラよ。
大丈夫であるか?」
「魔王様っ!?
ご無事でしたか!!
あの二人はっ!?」
スクっと立ち上がり、吾輩に抱き着いて来るデリラ。
待て待て、誤解されるじゃないか、吾輩とお前は、上司と部下。
魔王とその副官だ。
余程嬉しかったのか、周りが見えていないようであるな。
「コホン。
その二人であれば、それ、そこに居るのである。」
「っ!?」
驚きと恐怖と警戒。
そんな、色んな感情が一度にごちゃ混ぜになったような表情で、デリラが吾輩の影に隠れようとする。
「大丈夫だ。もう攻撃はしない。」
「本当よ。さっきはごめんなさいね。
一応謝っておくわ。」
「!?」
分かるぞ。
お前の気持ちは、吾輩だってよーく分かるつもりである。
だから、デリラよ。
そんな、鳩が豆鉄砲食らったような顔は止めよ。
と思ったら、以心伝心か?
吾輩の気持ちが通じたのか、すぐに平静を保つような表情へと、顔の表情筋を総動員して、なんとか笑顔を浮かべようとしていた。
ちょっと、右頬の辺りがプルってて、可笑しかったが、今指摘するのは不謹慎であろう。
とりあえず、デリラにも先程までのやり取りを説明した。
「魔王様。それであれば、既に私が答えを考え付いておりますわ。
後程、詳しく報告書に意見をまとめて、提出しますから、確認してくださいませ。」
なんと、デリラは今回の騒動以前から、ダンサツ・ダンメツ対策を考えていたとでも言うのであろうか。少し期待して意見具申を待つことにしよう。
「それでは、騒がせたが、俺たちは出ることにしよう。」
「今度は、戦闘じゃなく、遊びに来るわ!」
そう告げると、ダンサツ・ダンメツの二人は、颯爽と吾輩のダンジョンから去って行ってしまった。本当に暴風が過ぎ去ったような爪痕を残して。
だが、負傷者は数えきれないほど居たにも関わらず、死んだ者は本当に居なかった。
真の強者とは、ここまで実力に差があり、恐ろしい存在であったのだな。
そう言えば、あの二人、去り際になにやら呟いておったな。
「ゴールディたちには、あれ程周囲に迷惑を掛けるなと、何度も注意したのだが・・・。」
「帰ったら、説教部屋ねぇ。」
ダンサツが運転する魔道具サイドカー付きバイクで、疾風のように去って行く間際に聞こえた一言であった。




