第五十七話 魔王対絶対勇者⑥唯一無二なダンジョン
「そうだったのか。すまなかった。」
「私も、ゴールディちゃんたちから聞いたお話しと、このダンジョンの姿が随分違うって感じてたわ。」
「そうですよね。それに、このダンジョンは、もっと他の魔王が支配する場所と違うところがあるじゃないですか!!」
クリスが更に語気を強めた。
「違うところ、ねぇ?」
「ほう、言ってみろ。」
すると、ダンメツ・ダンサツの二人も、興味を示したようだ。
「それは、コレです!」
「まぁ!」
「こ、コレは・・・。
うーむ。」
この間吾輩完全に空気であるな。
しかし、この場面で、コレであるか。
「お二人も、ここへ来る道のりで、目にしてこられたでしょう?」
「「確かに。」」
見事にハモってらっしゃる。
クリスが手にしているのは、所謂ファンシーグッズである。
「こーんなに可愛らしいヌイグルミやらキャラクターグッズを売ってるダンジョンは、他にはありません!」
言われてみれば、確かにそうであるな。
よもや、このような場面でガダモン爺さんからのアドバイスが役立つとは思えなんだ。
あの時、第一階層をショッピングモールへと改修し、第二階層をファンシーランド化した際に、商人であるガダモン爺さんから『折角じゃから、オリジナルのキャラクターグッズでも作って、売ればよかろうに。』と何気なく言われた一言がきっかけで、爆誕したのであったっけ・・・。
「他にも、ここのダンジョンでは、こんなに美味しい食べ物まで作ってるんですよ!」
あ、ソレ、第一階層や地上の『ダレ・トール・カフェ』で売ってる焼き菓子やらテイクアウト可能な食べ物じゃないか!
「一口食べてみてくださいよ!」
「どれどれ?」
「あら!?」
クリスがダンサツ・メツ二人に勧めたのは、焼き菓子の一つ、チュロスと呼ばれる細長いスティックみたいな形状で『ソートス・スティック』と名付けられたものであった。
「ほう、食べやすいな。」
「シナモンが利いてて、なかなか美味しいわね。」
なかなかに好評である。
さてと、そろそろ吾輩も空気になっている場合ではないのであるな。




