第五十五話 魔王対絶対勇者④第二形態!
「おいおい。随分と涙ぐましい努力をしているようだな?」
「あらあら、魔族にもそんな風習があったのねぇー」
最強最悪の二人組が、吾輩たちの目の前に立ちはだかる。
最早、逃げ場も、逃げるための隙間も失われてしまったようだ。
「お前たちは、これまで奪って来た人間たちの命を数えたことがあるのか?」
「さあ。懺悔のお時間ですわよ。」
最低最悪だ。
◇
ダンサツ・ダンメツの二人が相手では、吾輩でも第三形態まで使っても生き残れるかどうか。
「デリラよ。お前の最大級の補助魔法を掛けてくれ。」
「畏まりました。魔王様。」
デリラは、ハイ・ダークエルフと呼ばれる種族の闇大神官だ。
召喚系が特異なアルビダと異なり、補助魔法や呪殺系が得意だ。
魔力を高め、最大級の補助魔法を吾輩へかけるべく、呪文を唱える。
吾輩は、その間に第三形態へ変身するために必要な魔力を体内で高める。
第三形態へ変身するには、幾つかの条件があり、一度倒されないと、次の形態へ変身できないのが難点だが、それでも構わずに、魔力を高め続ける。
「お前たちが、クリスを誑かし、ゴールディたちを甚振ったことは明白である!
死んで詫びるが良い!」
「お祈りは終わったかしら?」
二人の殺気が頂点に達したと思ったら、次の瞬間には、吾輩とデリラ、周囲で構えていた親衛隊の全員が、床に這いつくばっていた。
「っ!?」
またしても、一瞬の間に、最初に吾輩がダンサツの放った全身よりも大きく見える巨大な拳に一撃で倒され、同時にデリラがダンメツの美脚にのされていた。
親衛隊員である骨騎士と彷徨鎧たちの混成部隊は、全員が全身を覆う盾を構え、衝撃や攻撃を受けきる構えを取っていたにも関わらず、吾輩とデリラが倒された衝撃波だけで、盾は砕け、ねじ伏せられていた。
「クッ・・・。」
全身の骨という骨が、一撃で粉々に打ち砕かれたようだ。
どこに力を入れようとしても動けない。
「魔王・・・様・・・。
ぅっ・・・。」
デリラもまた、床に伏せたまま、吾輩の名を呼ぶが、すぐに気を失ってしまったようだ。
くそっ!
「こんなもんじゃないのだろう?」
「噂では、第三段階でしたっけ、変身できるのでしょう?」
ダンサツとダンメツが吾輩の最終形態までの変身能力を把握済みとは。
やはり、侮れない。
「ほう。そこまで知っているとは、やはり恐るべき相手、であるな。」
これでも、魔王だ。
精一杯の強がりと余裕ぶって第二形態へと黒い閃光と共に変身を遂げて見せる。
通常の吾輩の姿が、普通の背の高い人間寄りで、頭に二本の角と背中の羽、尻尾が目立つくらいなのに対して、第二形態では、より竜種に近い姿となる。
その分、闇竜としての特殊能力が増える。
変身後は、変身前に蓄積されていたダメージも全て回復し、魔力も満タンだ。
「では、仕切り直しといこうか。」
「望むところである!」
ダンサツの挑発に応じて、全力で刺突する吾輩の両手刀と尻尾。




