第五十話 ゲオルグ説教コース!
「クリスよ。
お主は人間側の勇者であろう?
勇者であれば、あの者たちのように、我輩やその眷属を滅ぼそうとするのが当たり前、なのではないか?」
「・・・・。」
クリスは辛そうに俯き、目には薄っすらとではあるが涙を浮かべている。
「・・・。
魔王様・・・。
私は・・・。
私は・・・。」
鼻をスンスンと鳴らしながら、肩を震わせるクリス。
我輩はそっとハンカチを差し出してみた。
「あ・・・。
ありがとうございます・・・。」
チーン!
あ。
鼻はかむのね。
奇麗に整った顔の彼女が、まさかのリアクションに吾輩茫然。
「あ・・・。
後で洗って返しますから!」
「・・・。
うん。構わぬ。
くれてやる。
貰って構わぬ。」
「・・・。
は、はい・・・。」
顔を真っ赤にして俯いてしまうクリス。
うん。可愛いじゃないか。
やはり、女とはこのような美しさと可憐さを兼ね備え者を言うのであろうな。
何故か吾輩の周囲には、脳筋雌ゴリラ?
我輩より強いんじゃねーかってバケモノばかりが・・・。
コホン。
あ。デ、デリラさん?
いつから、そこに?
え。
マジで。
ずっと吾輩の脇で控えていた?
さっきからのやりとりも全部聞いていたと?
は、ハイっ!
調子に乗ってスンマセンしたっ!
いや。さっきのは全然デリラさんのことなんかじゃありませんよ!
絶対違うから!
ちょっとクリス!
おま!
こんなところでクスクス一人だけ楽しそうに笑ってんじゃないだろ!!
なになに?
我輩とデリラの会話が面白すぎるって!?
いや、半分はお前のせいもなぁ?
ちょ!
待って!
一人だけ無関係な顔して、さっさと帰り支度始めやがって!
「わつぁいを助けてくれたゴーレムと会えるようでしたら、また次回来た時にでもお願いします。」って。
え、ちょ、マジ!?
そんな、丁寧に頭を下げられても!?
いや、確かに、氷柱と化している勇者一行はお持ち帰りして欲しいけど!
はぁ、まあ、持ち帰るにしても、人数集めないと持ち帰れないのはそうだが。
デリラさん・・・?
待って、クリスと今大事な話ししてる最中だから!
勇者一行お持ち帰りの交渉中だからっ!!
な?
え、ダメ?
はい。
すんませんしたっ!
いえ、誰も雌ゴリラとか言ってません!
デリラさんは、素敵な素敵ナ、くーるビューティーデスヨ?
(声が裏返っちまったが、大丈夫だ。なんとか誤魔化せてるはずだ!)
ハイ。
ハイ。
ハイ・・・。
(この後小一時間こんこんと説教コースだった。
クリスめぇ、本当にさっさと帰りやがって!)
氷柱勇者一行の回収は、翌日に行われた。




