第四十七話 勇者到来⑤絶対零度
いくら仲間であるクリスが心配だからとはいえ、周囲に同族である人間まで居るにも関わらず、大規模攻撃魔法を平気で放てるなど、神経を疑う。
いや、神経よりも正気を疑う方が先かもしれんな。
「おのれ、魔王めぇ!」
「卑怯だぞ! クリスを洗脳したのか!!」
言うに事欠いて、洗脳、だと。
愚かにも程がある。
マジで俺の怒りに更なる油を注いでくれるとは、勇者の名は伊達じゃないようだな。
「もうこれ以上口を開くな。」
「「「「「「ヒッ・・・・・」」」」」」
心なしか、周囲の気温が一気に下がったような気もするが、きっと気のせいであろう。
「漆黒の沈黙を持って、償いとせよ。
絶対零度!」
後には、勇者一行であった氷像が残った。
こんなカスどもとはいえ、クリスの身を案じて来たことに免じて、命だけは助けてやったが、解凍後も、余程高位の治癒魔術師に看て貰わなければ、後遺症が残るレベルで氷漬けにしてやった。
で、吾輩の気も少しは晴れた。
「クリス殿。クリス殿。」
「ン・・・・、ココは・・・・!?」
先程までの戦いに巻き込まれて、攻撃魔法を受けてしまったクリスには、同性であるデリラを付けて、医務室へと運ばせたが、間もなく意識が完全に回復したようなので、中断されていた面会を再開することにした。
クリスから勇者一行の構成員を聞いたところによると、吾輩のダンジョンへ突撃して暴れまわったのは、やはりかつて攻めてきたうちの六人だった。
未熟者の新米勇者一行らしく、無礼にも程がある。
このまま死滅させてやろうかと思ったが、クリスが懇願するので、仕方なく命だけは助けてやることにした。
人間の勇者一行
白銀のプレート・アーマーで身を固めた男勇者:ゴールディ
大剣持ちの女戦士:ルシエラ
鋭い眼付きの男戦士:リガルド
凛々しい外見ではあるが階位は高そうな男僧侶:ルヴル
漆黒のローブを纏った女魔法使い:ミラー
少しガラの悪そうな男召喚士:ダーエ
こいつらは、吾輩を常々目の敵としており、悪の権化とか言って、度々攻めて来ている連中だ。




