第四十五話 勇者到来③勇者一行乱入!
なんて、少し頭の中で吾配下の顔と名前を思い浮かべていたら。
「クリス!! クリスはどこだぜっ!!」
「クリス! 私よっ!! ルシエラが助けに来たわっ!!
さぁっ! 今すぐ姿を表してちょうだい!!」
「俺たちも助けに来たぞっ!!」
「やい、魔物どもめぇっ!! さっさとクリスを出しやがれっ!!」
「・・・・こんな、テーマパークみたいな外見で偽装したって、俺たちの目はごまかされないぞっ!!」
「早くしないと、全部消し炭にしちゃうわよぉ~!」
何やら、表が騒がしくなっている。
人間の勇者一行と思しき連中が、大声で怒鳴り込んで来たかと思えば、既に何発かの火炎魔法やら風属性の切断魔法を使って、施設のあちらこちらを破壊して回っているようだ。
周囲には、巻き込まれたらしい来客者=人間たちが負傷したり、倒れている。
止めに向かった従業員の魔族たちも、負傷したり、手足が切断されていたりする。
「!?
何てヒドイことをっ!!」
窓から見下ろして、人間の勇者一行の蛮行を非難するデリラ。
「なんで・・・・どうして・・・・。」
その姿を、三階から見下ろしながら、愕然としているクリス。
「あやつら・・・・許せんっ!!」
吾輩はといえば、見ると同時に、素早く開いた窓から跳躍して、勇者一行の真中へ降りた。
「お前が魔王かっ? だぜっ!!」
「やい、魔王っ! 俺たちのクリスを返せっ!!」
「卑怯者の魔王っ! 大人しくクリスを返しなさいよっ!!」
「そうよそうよ!」
「面倒だっ! 殺しちまえっ!!」
「おうよ!!」
人間の勇者一行は、白銀のプレート・アーマーで身を固めた男勇者、ルシエラと名乗った大剣持ちの女戦士、鋭い眼付きの男戦士、凛々しい外見ではあるが階位は高そうな男僧侶、漆黒のローブを纏った女魔法使い、少しガラの悪そうな男召喚士の六名であった。
コイツら、吾輩が不在の時に攻め込んできて、暴れまわった連中ではあるまいか?
もしそうなら、今回の分と合わせて、ここでキッチリと落とし前を付けなければ!
吾輩から殺気が漏れ出たのであろうか、勇者一行が一斉に吾輩を敵と認識して、刃を向ける。
「ゴールディ! 戦闘作戦パターンは!?」
「無論、『ガンガンに行こうぜ!』一択だぜっ!!」
「「「「おうっ!!」」」」
白銀プレートの勇者らしき人物が、女戦士からの誰何に、応えるや否や、吾輩の周囲に包囲陣が素早く組まれた。
「なんとも、野蛮な連中だな。
挨拶も無しに、一方的に殴り込みとは。
田舎者か、チンピラどもか?」
「なぁぁぁにぃぃぃぃぃっだぜっ!!」
「このアタイらをチンピラ呼ばわりとは・・・・。
アンタ、死にな。一万回は死ね!!」
「問答無用!」
勇者と女戦士が、素早く吾輩と交差するような形で、剣戟を打ち込んで来た。
女魔法使いも、キレ気味に切断魔法を放つ。
男戦士と僧侶は、それぞれ第二撃目を狙っているようだ。
召喚士は、他の者たちが稼いだ時間で、詠唱中だ。
「ひっ!」
吾輩の身体へ斬撃が繰り出されたのを見て、クリスが悲鳴を上げる。




