第四十二話 カーミラと吸血鬼部隊③実証実験
「吸血鬼部隊。第一陣、整列終了しました。」
「第二陣以降は、第一陣の無事が確認され次第、順次陽光の下へ出るように。」
「誘導係及び作業班、対陽光防護服着用モレ在りませんね? 了解です。」
「第一から第三までの吸血鬼部隊、整列が終了しました。」
「メインモニターへ映像出ます。」
「サブモニターは、周辺に人間が誤って侵入しない様に見張ってください!」
「各種センサー、記録及び計測開始。」
「扉、開けます。周囲の吸血鬼は注意してください!」
結構物々しい中での、実証実験となった。
容姿端麗、粒揃いの吸血鬼たちが、整列し、巨大な扉が開くのを待ち構えている。
先日、勇者一行が地下大迷宮内で暴れまわった後から、一早く襲撃現場へ駆けつけるための対策として、各所に監視カメラとなる魔道具水晶を設置してあるのが役に立った。
周辺には、様々な魔道具による観測・記録機器が設置され、吸血鬼部隊が陽光の下で耐えられるかを観測している。
「第一陣、出ます。」
「誘導及び作業員は、直ちに第二陣の位置まで下がってください!」
「おぉ・・・・!」
吸血鬼部隊から志願して、第一陣に二列で並んでいた50名ほどの美男美女たちが、嬉しそうに陽光の下へ出た。
その笑顔があまりにも眩し過ぎたのか、待機しているはずの第二陣、第三陣の吸血鬼までもが、静止を振り切って飛び出してしまった。
結果、一人残らず灰燼に帰した。
灰は一粒残らず回収し、吾輩の魔力をたっぷりと注いで、迷宮内の吸血鬼族専用棺で一昼夜掛けて蘇生再生させる事態となった。
うん。実験する前から結果は分かっていたさ。
でも、本人たちにとっては、真剣な願いだったのだから、受け止めるのもまた、魔王だろ。
ちなみに、カーミラ一人だけは、陽光だろうが、昼日中だろうが、気にせず歩き回っている。
「真祖、だからぁ~♡」
などと、周囲の残って作業している吸血鬼たちからの嫉妬の籠った視線を軽く受け流しながら、のほほんと呑気に歩いて見せる。
まあ、責任取らせて、吸引魔法使用の上で、灰の回収作業では一番多くの灰を回収するように命じたけどな。
「魔王様のイケずぅ~!!」
なんて声が聞こえた気がするのは、きっと、気のせいだ。
だが、この実証実験のお陰で、第三階層のアンデッド軍団は悉く吾輩の支配下へ戻った。
この実験後、吸血鬼たちもカフェやフードコート、ショッピング・モールで働きたいと言う希望者は、人間相手の接客をするようになった。
一部の店舗に限りだが、24時間オープンに業態を変えて、旅行者や冒険者などを相手に、食事や宿泊業を行なうようになったためだ。
夜の森では、魔物も活性化して危険度が上がる。
そこで、フードコートやショッピング・モールもそうだが、アミューズメント・パークと化した第一階層、第二階層へ泊りがけで遊びに来る者たちへ宿を提供していたが、窓口が24時間利用可能となったので、利用する予定が無かった冒険者や旅行客までもが滞在するようになったのだ。
これで、益々利益が得られるというものだ。
「ついでだ、カーミラ。お前も働け!!」
「えぇぇぇぇぇーーーーっ!?
魔王様ぁ~ 私は接客業に向いてませんよぉ~」
容姿端麗でワガママボディだろ?
客にお酌でもすれば、大金落としてくれるんじゃないだろうか?
そう思って、カーミラにも接客をさせてみたのだが・・・・。
結果は、言うまい。
『想像に任せる』というやつだ。
ええ。
実験なんかするまでもなく予想通りです。
本人たちさえ満足なら良いのですよ。
やり直しが効くきくならですけどね。




