第三十八話 ストライキは終わったものの④人々の反応
当然だが、周りには人間どもが大勢集まっている。
ざわつく周囲を気にする様子も見せずに、デリラは吾輩の腕を掴み、グイグイ目当ての店へと引っ張て行く。
引っ張る力が、その、ちょっと、いや、大分痛い。
「デ、デリラよ。
急に吾輩の姿を見せては、人間どもが・・・。」
「いいえ。魔王様。
大丈夫です!」
「これのどこが大丈夫なのだ!?」
「よくご覧ください。
周囲の人間どもの反応を。
誰か悲鳴を上げていますか?」
言われてみれば、誰も人間たちからの悲鳴は聞こえてこない。
どちらかというと、好奇心、野次馬らしき反応にも見受けられる。
「魔王様が、この地下大墳墓迷宮の主であることは、周知の事実でございます。
その上で、人間たちは、その主である魔王様がお姿を表した事へ、恐怖よりも関心を示しているのですわ。」
そんなもんだろうか?
どこかこう、子供が吾輩の姿を見て泣きだすとか、老人が腰を抜かしてしまう等の反応があっても不思議ではないのだが・・・?
あれ?
子供が吾輩とデリラの姿を見て、気軽に手を振っている?
老人は、なにやら微笑ましいものでも見たかのような反応だぞ。
一体どうなっておるのやら・・・。
ん?
よく見れば、我輩よりも、吾輩の隣にいるデリラに向けて、手を振ったり、笑いかけているようにも見える。
「先日は、迷子の孫を探し出してくださって、ありがとうございました。」
「いいえー。また来てくださって、嬉しいですわ。」
「お隣りはどなたかのお?
デリラさんの旦那さんかい?」
「嫌ですわ!
おばあさまったらもー!!」
立ち止まって、気軽にデリラと会話を交わしているこの老婦人は誰だろう。
見るからに上品で、気品を感じさせる老婦人だが。
「デリラさんに良い人が居るようで安心したわー
それじゃあ、孫が呼んでるから行くわ。
ごきげんよう。またね。」
「ハイ。メアリ王母様も、お元気で!」
王母・・・だと!?
しかも、メアリ王母と!?
かの大国の王をも操れると評判の人物ではないか!
本当に凄い人って、全くその凄さを感じさせずに、普通にしているけど、思い返してみるとやっぱり凄かったって経験ありません?




