第二十二話 スライム部隊⑧解決編
「お前たち。
何故、箒をオークが使って、塵取りをゴブリンが持たなかったのか?
背が高いオークが柄の長い箒を使い、背の低いゴブリンが床に近い塵取りを使えば、解決するではないか?」
「「「「「ま、魔王様っ!!」」」」」
その発想は無かったのか?
たかがこれしきの事で、尊敬のまなざしを送るのは止めて欲しいものだな。
口々に「オラたちの魔王様は天才でねえべか!?」とか「何故思いつかなかったでやんす!」だの、「オラたちは、今、新しい歴史が始まる瞬間に立ち会ったんでガンス・・・・。」
などと言いながら涙を流して拝みだす者たち迄現れた。
オイオイ。
吾輩は魔神ではなくて、魔王だぞ?
拝まれてもご利益なんて低そうだぞ。
「とりあえず、ス・ラ・リーン。
ス・ラ・リーンは在るか?」
(魔王様の御傍に。)
「わぁ! こんなに近くに居たのか!?」
いつの間にか、ス・ラ・リーンが吾輩の足元の影に潜むように、吾輩の影の形で蠢いていた。
(いついかなる時でも、魔王様の影をお守りするために!)
「あ、そう。
影だけ守られても困るんだが・・・・。」
(無論、影からついでに魔王様本体もお守りするつもりでしたが・・・・。)
(ついでかよっ!?)
(私たちは影の存在ですから。)
(うーん・・・。)
返答しずらいなぁ。ヲイ。
しかしながら、スライム部隊が万能と呼ばれる一端がこんな形でも表されるとは。
やはり、コイツらが戦力から欠けてしまうのは大打撃だ。
なんとか説得して、これまで通り働いて貰わなければ!
(それで、ス・ラ・リーンよ。
お前たちスライム部隊に確認したいことがある。)
(何なりとお聞きください。
私たちに隠し事はありません。
この身の透明さに懸けて!)
スライムだけに身も心も透明だとでも言いたいのだろうか。
逆に腹黒いスライムが居たら、文字通り透けて見える内部の中心でも黒くなっているのだろうか?
(お前たちは『人間やある程度知性のある対象を生きたままで消化吸収するのが辛い』と言っていたのだな?)
(はい。我が君。)
(であれば、死んだ状態の人間や獲物であればどうなのか?)
(・・・・!?
死んだ状態であれば、悲鳴は聞こえませんから、大丈夫だと思います。)
(そうか。分かった。ありがとう。)
(こちらこそ。
魔王様。我らの気持ちを大切にしてくださり、心から感謝申し上げます。)
原因は分かった。
対策も判明した。
後は、そのことを宣言するだけだ。
「この場に集まった、第五階層の者たちに告げる。
今後スライム部隊は、無理をして生きたままの人間や敵対する者たちを消化吸収する必要は無い。
その代り、これまで通り、エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮内での清掃活動従事に戻って欲しい。
これは、吾輩からの勅命である!」
その場に集まっていた自我を持つスライムたちが嬉しそうにピョンピョン跳ねたり、身体をプルプルと震わせたりして、全身で喜びを表現しているようだった。
ついでに、掃除が苦手なオークやゴブリンたちも抱き合って喜んでいたようだ。
これで、第三階層に続いて第五階層におけるストライキ問題は解消されたようだ。
「これにて一件落着!」
「「「「「魔王様万歳っ!!」」」」」
「「「「「我ら一同! 変わらぬ忠誠を魔王様に捧げますっ!!」」」」
((((捧げます!!))))
スライムたちも大喜びで吾輩に対する忠誠を誓い直してくれた。
この調子で、他の階層のストライキ問題も解決できれば、再び人間どもの勇者一行や冒険者、墓荒らしどもを一刀両断に粉砕して、絶望と恐怖に引きつった顔の表情を拝める日がやってくるのだろうか。
先に書いた短編
「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」
の本編になります。
https://ncode.syosetu.com/n5851fq/
少しだけ書き溜めることができたので、公開してます。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス




