第二話 アンデッド軍団の離反①
「魔王様に物申すー!」
「「「「「魔王様に物申すー!」」」」」
「我ら不死軍団に、安寧をー!!」
「「「「「我ら不死軍団に、安寧をー!!」」」」」
なにやら、ダンジョン内に、大きなバリケードを作成して、その上で、手に手にノボリやら横断幕やプラカードを手にしたゾンビ部隊を中心に、アンデッドモンスターたちが喚き声を挙げていた。
「ハテ? 不死軍団に安寧とは?
ま、まさかっ! こいつら全部彷徨うのに飽いて、成仏でもしたいのかっ!?」
「それが、そのう・・・・。」
デリラの奴は、言いにくそうにモジモジするばかりで、要領を得ない。
ここは一つ、吾輩自ら直談判した方が早いのだろうな。
「コホン。吾輩直属の八部衆が一つ、アンデッド軍団の諸君よ。
これは、一体なにごとかね?」
吾輩の姿を視認したアンデッドモンスター軍団の面々は、驚愕し、その場でひれ伏すものや硬直したまま、背筋をピーンと限界まで伸ばしたかと思うと。
「魔王様万歳っ!!」
などと叫び出した者まで居た。
フム。どうやら、吾輩の支配力が及ばない訳ではなさそうだな。
「良い。お前たちの言い分を聞きに来たのだ。
率直な意見を聞きたい。
腹を割って話そうではないか?」
「「「「「おぉーーーっ!?」」」」」
「オイオイ。
いくら『腹を割って』とは言え、直接臓物を差し出すのは止めよ。」
「フワァイ・・・・。」
吾輩の下手に出る作戦が功を奏したのか、オズオズと自分の腹を文字通り割って、内臓を差し出そうとして来る愚か者までいたので、慌ててその動作を止めさせた。
所謂お約束な身体を張ったアンデッドギャグなど、化石レベルだ。
見飽きているのだよ。
「して、先程の文言の意味とはなんだ?
『不死軍団に安寧を!』と聞こえたが?
よもや、成仏したいなどと言い出すのではあるまいな?」
それでは、吾輩が困ってしまう。
八部衆が一角、不死軍団は、アンデッド系モンスターを中心とした、我が軍の主力部隊の一つだ。
文字通り、不死なる魔物たちが中心となった軍団故に、第一に、敵に倒されても、何度でも立ち上がり、襲い続けることが可能だ。
次に、不死軍団の多くが、噛みつくと、対象となった者たちが死んだ後、浄化魔法さえ使われなければ、我が軍にそのまま加わるという、無限に増殖できるという利点がある。
戦場では、そのまま敵兵士たちの死体が、アンデッドとなって復活し、生前味方だった者たちへ襲い掛かるのだから、浄化・成仏さえしなければ無敵だ。
吾輩の問いかけに、一人のゾンビ少女がおずおずと進み出て来て答えた。
「いえ。魔王さま。
私たちは、聖魔法による成仏はしたくありません。
むしろ、このダンジョン内での待遇の改善を求めているのです。」
「ほう? ダンジョン内での待遇改善とは?」
第三階層でのダンジョン守備部隊であるアンデッド部隊が、たまには他の階層へ入れ替わりたいとでも言うのであろうか?
その程度であれば、吾輩も受け入れる余地が無い訳ではない。
いや、むしろ、エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮の活性化のためにも、時々そのようなイベントがあっても良いのかもしれないな。
今回のアンデッド集団によるストライキを一つのけっかけとして、迷宮全体の気分転換など、構造改革となるかもしれない。
先に短編で書いた「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」の本編です。
https://ncode.syosetu.com/n5851fq/
ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開してみることにしました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス




