第十九話 スライム部隊⑤タピオカミルクティー
吾輩が、深刻そうな顔で俯くと、デリラがタピオカ入りのミルクティーを差し出してきた。
「魔王様。最近流行りの『イ・ン・グ・××の目玉入りミルクティー』でございます。
コレでも飲んで、一寸休憩しませんか?
そんなに根を詰めては、行き詰まる前に魔王様が倒れてしまいますわ。」
「そういえば、ダンジョン入り口にあるカフェの様子はどうか?」
「はい。順調そのものでございますわ。
魔王様の寛大なる差配により、ゾンビ部隊から奇麗どころを集めて、接客させておりますから、毎日のようにカフェは開店前から冒険者や墓荒らしが並ぶほどの大盛況が続いております。
売り上げも、右肩上がりで順調に伸びており、このペースですと、王都や大都市を中心に支店展開も可能になる勢いかと。」
「そ、それ程までに順調に売り上げを伸ばしているのか・・・!?」
「メニューはどこにでもあるごく普通のものばかりではございますが、ネーミングと時々奇抜さに極振りしたトッピングなどの見た目に、若い女性を中心に爆発的な人気が出ているようです。
近頃は、バイトの申し込みも殺到してきて、その・・・・
この場所はダンジョンですから、雇うというわけにも行かず『近いうちに必ず支店をオープンさせるから、そちらで働いて欲しい』と理由を付けてお断りしている状況ですの。」
顎が外れそうになった。
最早予想の範囲外過ぎて、惑星軌道を一周回って帰ってきたような気分だ。
どんだけ、壮大な驚き方だよ。
「そ、それだけ儲かっているのならば、我がエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮への化粧代金分の還元はっ!!」
一番大事なことである。
我がダンジョンの運営にまで関わる問題だ。
期待しても良さそうだよな!?
「その件でございますが・・・・。
衣装代、新たにエンバーミングを施しているアンデッド部隊員がまだまだ控えており、死化粧代もこれから更に膨れ上がり、売り上げの半分がそちらに回っておりますので、食材などの仕入れ代などと相殺されて、現時点での純粋な利益は5%ほどかと。」
「ハ?」
「ですから、女性の衣装代や化粧代は、まだまだこれからも膨れ上がる予定だと思う仕上げました。売り子をしているゾンビ少女隊にも給料を払わなければ、モチベーションも上がりませんし。」
「な・・・・!?」
そうか、思ったよりもカフェそのものは順調だが、直ぐに迷宮運営費への補填へは回せないらしい。
「で、では、吾輩の所有物である迷宮を使っておるのだから、土地の使用料を徴収するというのではどうだろうか?」
我ながら、良いアイディアである。
従業員たちから直接徴収するのではなく、テナント料として徴収するのだから、それ程抵抗感は無いだろう。
「・・・・。
恐れながら、魔王様。
その方法では、『ダ・レ・トール・カフェ』は王都や他に良い条件の場所へ移転してしまうかもしれませんよ?
そうなると、売り上げは当然人間たちの税金や店舗の購入もしくは賃貸料に消えてゆくこととなります。どっちみち、魔王様にはビタ一文入らなくなりますが、よろしいでしょうか?」
冷ややかに言われた。
えーーーーーっ!?
ダメなのか!?
折角良い方法だと思ったのに・・・・。
吾輩がガッカリした表情を見せてしまったせいか、デリラが慌てたように言葉を続けた。
「あ、で、でも、売り上げがなかなか魔王様に還元されないのは、今だけですよ。
きっと近い将来には、右肩上がりで伸びている売り上げと、人間どもの都市での支店からの売り上げ収入で、この地下大墳墓迷宮にも還元されて、ウハウハの毎日に変わりますよ! きっと。
私が言いたかったのは、『金の卵を産みだす鳥を絞め殺してはいけない』ということだけですわ!」
そうだと良いのだが・・・・。
「まあ、その、なんだ。
あ、ありがとう?」
「ど、どういたしまして?」
少しぎこちないが、とりあえずカフェについての話題はこの辺で良いだろう。
先に書いた短編
「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」
の本編になります。
https://ncode.syosetu.com/n5851fq/
ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開しました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス
夜にもう一話分投稿予定です。