第十七話 スライム部隊③スライムたちの本音
ガスマスク付けるからちょっと待ってね。
よし。
「うむ。スライム部隊には、希望すら聞かずに、何でも溶かすその便利な能力から第五階層や他の階層の清掃も任せていたが、もしや、これ程の異臭や悪臭を放つ場所となるとは思わなかった。
彼らが職場放棄したくなる気持ちも少しは理解できるというものかもしれない。」
「ですが、彼らスライム部隊が第五階層から離れてしまったら、一体誰がこの階層の衛生状態をマシに保てるとお思いですか?
もしや、魔王様御自ら・・・・!?」
「イヤイヤイヤイヤイヤっ!
無いわぁー、絶対にソレだけは無いわぁー!」
ドコの世界に魔王自ら清掃活動に取り組まなければならないダンジョンがあるというのか!?
あったら怖いけど。
「とりあえず、今はスライム部隊と接触するのが先決だ。
清掃活動の解決方法については、後でゆっくりと考えれば良いだろう。」
「私は掃除は、苦手ではありませんけど、第五階層全体を統括管理して、掃除までなんてムリですからね!」
「誰も、お前に掃除まで頼もうなんて、考えていないからっ!」
デリラから掃除は別物だと断られてしまい、ある意味退路を断たれてしまった。
さて、どうしようか。
「あ。スライム部隊隊長のス・ラ・リーンさんですよ。
こんにちは。」
ス・ラ・リーンと呼ばれたスライムは、嬉しそうにプルプルと身体を震わせながら近づいてきた。
「それで、どうやって会話すれば良いのだ?」
「あ、魔王様、テレパスでなら隊長クラスともなれば会話が可能ですよ?」
「そういえばそうだったな。」
ここ数百年に渡って、スライムとの会話なんかしていなかったから、すっかり忘れていた。
(それで? スライム部隊の要求とやらはなんだ?
吾輩は時間が惜しい。単刀直入に申してみよ。)
(はぁ、魔王様。お久しゅうございます。
先日ひ孫のス・ラ・ルーンが二体の分身体を生み出して、益々大所帯となりました。
ところで、最近のダンジョンはエサが乏しくて、以前のように美味しいエサがすくなくなりましたなぁ・・・・。)
(ム? ひ孫が更に分身して、夜叉孫が生まれたということか?
それはおめでとう。吾輩からも祝いの言葉を贈ろう。
エサと言ったな?
すると、今回のストライキは、エサへの不満から参加したのか!?)
(ス・ラ・ルーンの分身体への祝いのお言葉、ありがとうございます。
でも、エサへの不満は違います。エサが減ってきたのは、ストライキを起こした後からですから。)
(それでは、お前たちのストライキの原因は一体なんだと言うのか!?)
(それはですね・・・・。)
重い口をようやく開いた様に、スライム部隊隊長であるス・ラ・リーンは、事情を話してくれた。
(私たちって、スライムじゃないですか。)
(うん。スライムだな。)
(スライムの特徴と言って、魔王様が思い浮かべることと言えば?)
(そりゃ勿論『何でも溶かす!』超が付くほど、便利で各方面に用いられる能力だよな!)
(そうでございますね。
『何でも溶かす』これが悩みのタネでもあるのでございます。)
(え?
だってお前たち、その特技で、護って良し!攻めて良し!死体の処分やあらゆるモノを始末することすら可能とする、正に万能選手ではないか?)
(万能選手とはまた、魔王様からそのようなお褒めのお言葉を頂けるとは。
嬉しくはありますが・・・・。)
先程から会話しているが、そこから先がなかなか出てこない。
一体全体何がそこまで不満だと言うのだろうか?
デリラをチラリと見たが、訳知り顔のクセに、吾輩たちの会話を横から傍受するだけで、特に何も助言しようとはしてこない。
吾輩が独力で解決しなければならぬようだ。
(それで?
ハッキリと言って欲しい。
何処に不満があり、何を吾輩に要求したいのか、を。)
(はぁ。それではですね、怒らないでくださいよ?)
(何をだ?)
(だから、聞いても絶対に怒らないとお約束してください。
そうでなければ、打ち明けるのにも勇気がいるのですから・・・・。)
スライムがそこまで怯えながら打ち明ける悩み事って、一体何事だと言うのか。
むしろ、吾輩の方が興味が湧いてしまったぞ。
(良かろう。
我がゲオルグの名に懸けて誓おう。
お前たちスライム部隊が抱えている悩み。
それを聞いても、決して怒らぬ、と。)
(ありがとうございます。魔王様。
それであれば、私も安心して打ち明けられます。
実はですね・・・・・。)
先に書いた短編
「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」
の本編になります。
https://ncode.syosetu.com/n5851fq/
ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開してみることにしました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス