第十六話 スライム部隊②
そんなことを考えながら歩いていると、スライム部隊が常駐している第五階層入り口までやってきていた。
この第五階層には、ゴブリンやオークなどが常駐しているのだが、如何せん連中には、『掃除をする』という概念が皆無だ。
暴れるだけ暴れて、死体や糞尿迄もが放置されがちになる階層は、常に異臭で満ちてしまう。
そこで、一番汚れやすい場所に、何でも溶かして消化吸収してしまうスライム部隊を常駐させた。時々定期的に他の階層へも保守点検を兼ねて、出張させることで、全10階層から成るエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮の衛生状態を清潔に保っていたのだ。
魔物と言えども、死霊など霊体の魔物以外は、全員がなんらかの肉体を所有している。
特に、魔獣などの肉体がある種類では、不衛生にしていたら、病気にだってなる。
病気から新種の魔物が生まれたとしても、知性が失われたり、ある程度のコミュニケーション能力が無くなると、吾輩に服従させることすら難しくなるケースもある。
そんな魔物たちの中でも、便利に用いられているのが、スライム部隊たちだ。
何せ、魔素さえ与えておけば、素直に服従してくれるし、粘度の高い身体はあらゆる攻撃や魔法を寄せ付けない。
その上、レベルさえ上げておけば、魔法攻撃すら消化吸収し、自らの魔法に用いて反撃するのだから、下手な魔物なんかよりも余程頼りになる連中だ。
そんな彼らが、何を考えたのかアンデッド軍団がストライキを始めると、同調して自分たちまでストライキに加わってしまったから、現在第五階層や他の階層は異臭や悪臭が漂っている。
それでも、知性があり、ある程度自分たちで片づけたり、掃除する魔物たちの階層はまだマシだ。
ここ第五階層は、例えるなら、独身男性の台所や便所の排水溝レベルか。
人間どもの言葉に「男所帯に蛆が湧く」「女所帯に花が咲く」というのがあるらしい。
第五階層は、前者の言葉がそのまま当てはまりそうな状況だ。
もはやあちこちから下水溝のような臭いが漂っている。
まあ、そんな感じでゴブリンやオークの食べ残した残骸やら、糞尿の臭いがあちらこちらから漂ってくる。
うん。
鼻が痛いぞ。
咽る上に、眼に染みるな。
コノ臭い。
この吾輩に物理的ダメージを感じさせるとは、侮りがたし!
「フム。もしや、スライム部隊のストライキの原因は、コレか?」
「魔王様。異臭がどうかなさいましたか?」
デリラめ。ちゃっかり自分だけ防護服にガスマスク着用かよ。
え。吾輩の分もあるの?
あ。ありがとう。
ここは素直に受け取っておこう。
先に書いた短編
「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」
の本編になります。
https://ncode.syosetu.com/n5851fq/
ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開してみることにしました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス