第十四話 アンデッド軍団解決編②
再びマリイらアンデッド軍団が待つ第三階層までデリラと共に出向いた吾輩。
「聞け!
アンデッド軍団よ。」
「「「「「偉大なる我らが支配者!
魔王様っ!!」」」」」
全員が片膝を付いて、頭を垂れた。
ストライキなんぞする割には、このような場面では、絶対服従って、良くわからない連中である。
「先程副官であるデリラから、お前たちの要求について進言があった。
お前たちの要求は全面的に飲んでやろう。
ただし、身体欠損や既に骨と化してしまった者たちについては、その技術の及ぶところまでが限界であることを承知して欲しい。」
吾輩が宣言すると、マリイらゾンビ部隊やスケルトン部隊を中心に、アンデッド軍団の面々がハイタッチを交わすなど、ぱぁーっと明るい表情となった。
「これより、死化粧、エンゼルメイク及びエンバーミングによる身体修復を許可する!
希望する者は、デリラや他の階層に居る化粧が得意な者たちから協力してもらうが良い。臭い対策についても、有効と思われるものを使用して構わん!」
女性魔族たちが若干引きつった笑顔になったが、仲間であるアンデッド軍団のためである。
お互いに協力し合って、この難局を乗り越えて貰いたいものだ。
こうして、第三階層のアンデッド軍団によるストライキは解決へと向かっていった。
ちなみに、アンデッド軍団の化粧品・香油代として、馬鹿高い金額を請求されたのは、我がエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮始まって以来の最大の経済的危機となったが、已むを得まい。
ガダモン爺さんの人脈がここで役立つとはな。
これまで、人間どもからコツコツと奪い続けてきた金貨や財宝を使ってでも、人間どもの町から化粧品や必要な物資を仕入れさせた。
仕入れにも一苦労はしたが、コレでストライキが一部とはいえ解消するなら、高い買い物だが仕方あるまい。
□■□
後日談。
アンデッド軍団がストライキを止めたものの、我がエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮のストライキは未だ続いている。
しかし、一つだけ思いがけない波及効果をゾンビ部隊の死化粧は齎した。
「ハーイ! バタリアンズ・コ-ヒーお持ちしましたぁ!」
「21番テーブル! 『名状しがたきハーブティー』お待たせしましたぁ!」
「5番カウンターへ、ル・ル・イ・エ・パフェお持ちしましたぁ!!」
「こちら、ハ・ス・ハ・パスタお待たせしましたぁ!!」
「34番テーブル、『バールの様なモノで肉片散らしサラダ』お持ちしましたぁ!!」
ウム。
死化粧によって「可愛い」「美しい」「まるで透き通る様な肌だ!!」と賞賛の嵐を冒険者やら墓荒らしから浴びせられたゾンビ女性たちが、『ダ・レ・トール・カフェ』と名付けて、迷宮の入り口付近で喫茶店を始めたのだ。
魔法が進歩したこのご時世、多くの事が魔法道具などにより、人の手を使わなくても出来てしまう。
そんな時代に、わざわざ美しい女性たちが、手を使ってテーブルまで注文した品を運んでくれる。
コレが大ヒットの要因でもあるらしい。
最初は、迷宮内で開店しようとしたらしのだが、生憎とストライキが続いており、迷宮内部へと侵入させることが出来ない。
それならばと、ガダモン爺さんの荷馬車で人の街まで同行し、化粧を買い出しに、夕方や夜に行かせたら、ナンパが多発して、自分たちの容姿に自信を持ち出したゾンビらが、迷宮入り口付近の土地までをダンジョンと同じように、吾輩の魔素が溢れて、漂うようにしてくれと追加の陳情が行われた。
であれば化粧代金の回収のためにも、と吾輩が応じたのがキッカケだ。
ネーミングセンスはともかく、若くて美しい女性やら、美少女、美幼女らまでもが店員として働くことにより、ダンジョン前という辺鄙な場所にも関わらず、店は大盛況となってしまった。
瓢箪から駒とは、正にこのことであろう。
魔物日記~其の2~ ゾンビ少女マリィ
生れて初めてお化粧した。笑われた。もぅ!
いくらなんでも、化け物みたいとかラクガキレベルって酷くない!?
そりゃ、家が貧しくて、お母さんも化粧っけなんて無くって、触ったことすら無い私に、化粧なんて・・・・。
でも、最後にネイさんが可愛らしく仕上げてくれた。
鏡に映ってる自分が、なんだか別人みたいな気がした。
そうしたら、ネイさんが「コレが化粧するってことだよ。」って言ってくれた。
周りの皆も、もう、バケモノとかラクガキ言わなくなって、可愛いよって褒めてくれてた。
嬉しいな。
またお化粧して、可愛いって言ってもらえる自分になりたいな。