第一話 魔物たちの反逆
『光あるところに、影(もしくは、闇)あり。』
人間の世界に「勇者」なる存在が居るのであれば、魔族にもまた「魔王」となる存在が生まれる。
二つは互いに、導かれ、やがて雌雄を決する存在だ。
相反する存在故にこそ、決して交わることが無い。
それが、勇者であり、魔王だ。
勇者が魔王を倒し、平和な世の中を作ろうと望むのならば
魔王もまた、勇者を滅ぼし、世界を手中に治め、己の覇道を完成させようと望む。
光と影。
そんな、勇者と魔王が存在する世界での出来事。
◇
我が名は、ゲオルグ・イング・ボルグ・グ・オ・ギャハルト・オ・ウン・ゴール2世。
名前が長い?
人間に名乗るときは、真名ではなく、略して名乗っておる。
至高にして、偉大で、不滅なる存在。
即ち、『魔王』である。
現在吾輩の配下には、100万を超える軍勢がある。
これらは大小の差異はあっても、人間どもの国であれば10カ国と同時に戦争が出来る戦力であろう。
つまり、長年に亘る魔族の悲願。
『魔王による世界征服を実現して、差別の無い公平な明るい世界!』
これをついに、吾輩自身の手によって実現することが可能な軍事力を有していることになる。
これらの戦力は、代々受け継いできた魔王たちが遺してくれたり、新たに吾輩が配下に下した者たちで成立してはいるがな。
そして、忘れてはならないのが、吾輩直属の四天王である。
戦闘に特化した闇竜人族のドアークと巨大なオーガ種のガーグ、死霊系などのアンデッドを率いる吸血鬼真祖のカーミラ、邪神系の魔法や技術研究などが特異なダークエルフ族の闇大神官アルビダ、この四名が吾輩直属の四天王である。
他にも多種多様な魔物や魔獣などがおり、一騎当千と恐れられている。
ゆえに、愚民どもは、恐れて、慄いて、小便漏らして、布団でも被って寝てしまうが良い。
これから、この玉座の間から吾輩の偉大にして、素晴らしい偉業の数々をば、披露して見せようぞ。
クハハハハ
そう吾輩がダンジョン内第九階層にある玉座の間で高笑いしている時であった。
ハイ・ダークエルフで闇神官のデリラが転がり込むように部屋へ飛び込んで来た。
「魔王さま! 大変でございます!!」
「なんだ? 騒々しいな。
魔王の配下たる者、軽々しく騒ぐでない。」
「ですが、魔王様・・・・。
我らがエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮の大ピンチでございます!!」
「一体全体何事だというのだ?」
「それが、そのう・・・・。」
「早く言わんか!」
「地下大墳墓迷宮のモンスターたちがその・・・・」
「モンスターたちが?」
吾輩の副官も務めているデリラは、言いにくそうに、口ごもりながら、爆弾発言をかましてくれた。
「モンスターたちが、次々とストライキを!」
「えぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」
そんな馬鹿な。
我がエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮に生息するモンスターたちは、その多くが代々の魔王たちから仕えてくれていたり、吾輩の魔力や覇業に惹かれて集まった者たちである。
それが、吾輩の命令に従わずに、ストライキなんぞ。
在り得ん。
絶対に何かの間違いだ。
いや、間違いであって欲しい。
「それで、そのう・・・・。
ストライキの原因は何だ?」
「ハイ!
そのぅ・・・・ 大変申し上げにくいことなのですが・・・・。」
「ええい。聞かなければ、対処のしようも無いではないか!!」
「ハイっ!
そのぅ・・・・ 聞いても絶対に、呆れないとお約束を頂けますか?」
デリラめ、ずいぶんと勿体つけるじゃないか。
「良い。有体に申せ。」
「ハイっ! その、恐れながら、理由はそれぞれに異なっておりますが、一言でまとめるならば、『処遇の改善を求める。』とのことで一致しております。」
「処遇の改善だと!?」
「ハイ。」
「ええい、階層支配者であるはずの四天王たちはなにをしているのだっ!!」
「四天王の皆様は、『コイツらの言い分にも一理ある。
魔王様と直接対話して解決を図る方が良いと思う。』と言っておられました。」
「階層支配者である四天王たちがそこまで言うのであれば、已むを得んか・・・・。
分かった、事情とやらを聞いてみることにするか。」
事情を聞いただけでは、全容がつかみ切れなかったので、早速吾輩は、デリラと共に、一番最初にストライキを決断したという魔物の場所へ行った。
先に短編で書いた「エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮叙事詩第一章第十二節 『投げ込むならドリアンだけは止めよ。』」の本編です。
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ようやく、少しだけ書き溜めることができたので、公開してみることにしました。
((ノ(_ _ ノ)ドウゾヨロシクオネガイシマス
今日は、初投稿記念で全部で夜までにもう五話分(本日六話分)を投稿予定です。