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其の終 トリックは存在しない

「アンドウ君の頭の中には存在していそうだけどね」

探偵は、自嘲めかしてそう言った。


「よし。これで終わり、と」


 メール内容のチェックは終了。そして送信ボタンをクリックして、仕事も終了。


 しかし今回の仕事は珍しいものだった。まさかスイーツのレビューなんて依頼をされるとは。まあ、調査という意味では合ってたし、それと同時に依頼されたその店の客層調査はいつもの仕事とほぼ同じだったし。

 それに何より他人の金で食べる高級スイーツの美味しさよ。スイーツは罪の味とはよく言ったものだ。体重がちょっと気になる。


「……それで。アンドウ君は何をしているんだい?」


 来客用のソファに腰掛けてテーブルに突っ伏している自称助手に声をかける。


「ふてくされてるんですよ。なんで僕を連れて行ってくれなかったんですか!」


 そう言われてもなぁ。


「そうだね、想像してみたまえ。年頃の女子たちで賑わうスイーツ店。カフェやファミレスでよくある、四人がけのテーブルがいくつも並んでいる内装。私とアンドウ君で行ったとして、まず店員さんに注文を頼む。そのあと店員さんが厨房へと帰って行ったとして。君はまず何と言う?」


 行く前に私がした想定を、そのままアンドウ君に伝えてみる。回答はノータイムで帰ってきた。


「事件の香りがしますね」


「連れて行けるわけないだろう!」


 これだからミステリー脳は。キャピキャピしていたあの空間に合わなすぎる。仮に追い出されたら依頼人に違約金を払わされるのは私なんだぞ!?


「えー……だって、導入としてありがちじゃないですか。絶対死因は毒殺ですよ」


「誰も死んだりしていないんだよ……」


 ついでに言えば。殺人事件の犯行方法としてかなり少ない部類である毒殺だが、出先より家で使われる方が多いというデータがある。当然だ。わざわざ人目につく場所での犯行を選ぶ犯人はいない。


「全く、これだからミステリー脳は」


「ちょっとくらい夢見たっていいじゃないですかぁ」


「夢を見るのは勝手だけど、それで誰か……というか私に迷惑をかけるのはやめなさい。いいね?」


 事件が起こるのを望むってのもまぁ良くはないんだけれど、心の中に秘めておく限りは人の自由だ。発露だって他人に迷惑をかけない形なら大いに結構。例えばミステリー作家を目指すとか?

 ……いや、ダメだ。もしもそうなったらアンドウ君のことだ、絶対私を名探偵のモデルにする。悶え死にそうだから絶対にやらないでくれ。言ったらむしろやりかねないから念じるだけに留めておくけれど。


「そんなこと言って、サクラギさんだって謎解きしてる時はノリノリじゃないですか」


 なん……だと? 私がノリノリ? いやいや、まさかそんなはずは………………あったかもしれない。

 いやいや落ち着け。そもそもの話、


「謎と言えるほど上等なものに会ったことは無かったろう? 概ね誰かのうっかりだ。落ち着いて前提さえ見ればそれで終わる話だったはずだ」


 そうとも。私がしたのは考えることじゃなくて探すこと。数学と国語くらいジャンルが違う。

 或いは、名探偵と探偵くらい違うと言い換えてもいいかもしれない。


「何度でも言うけれど、私は名探偵じゃなくて探偵だよ。私の仕事は謎を解くことじゃなくて調べものさ。それに……解くべき謎なんて、誰かが作ったトリックなんて、手品と詐欺を除いたらこの世に存在しないものだよ」


 私が関わるものに限った話では無い。

 警察の管轄な殺人事件だって。それ以外のものだって。

 いつだって、問題を解決するのに必要なのは解き明かすことじゃ無くて。

 そう、(さぐ)(うかが)うことだ。


「わかったかい、アンドウ君?」


「……はぁい」


 これはわかってないやつだな。もう慣れたものだ。


 




 ふと、呼び鈴(チャイム)の音が鳴る。来客だろうか。

 宅配便が事務所に届くことはない。ということは、おそらく依頼人だ。メール無しで直接来るのは珍しいな。或いは──また依頼とは関係のない厄介ごとだったりして。

 まぁ、そんな詮無きことを考えていても仕方がない。どちらにせよ来客は出迎えるべきであることに変わりはないのだから。

 立ち上がって……客を迎え入れる前に、親愛なる助手君の方を一瞥する。


 さて。


「さ、探偵の仕事の時間のようだよ。手伝ってくれるかい、助手君?」


 彼ににっこりと微笑みかける。

 返ってきた言葉はシンプルだ。




「あ、僕はサクラギさんの邪魔をしないよう引っ込んでますね」




 根に持ってやがったか、こいつ。

 まあ、アンドウ君が助手の仕事を果たしてくれないのはいつものことなんだけれど。


 ……どこかにこの助手を合法的に消し去れるようなトリックは無いものだろうか。


 もっとも、そんなものフィクションで(この世に無くて)いいのだけれど。


来客が依頼でもなんでもない新聞勧誘でサクラギさんが恥をかくまであと五秒




ここからは読まなくていい後書きです。

Q.初日とそれ以降の更新速度の差は何なの?

A.見切り発車、よくない。

徐々に名探偵に寄っちゃってたのも反省点ですね。

それではまたいつか。具体的にはきっと明日。明日までには連載してるやつ間に合わせます。息抜きで息切れしてたら世話がなさ過ぎる。

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