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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第七八三話 決着SH魔王!

 皆の力を盾で受け、自らの力として一撃に注ぎ叩き込む。

 そんなクラウの必殺スキルが一つ、名を【ブレイブ・ロア】。

 本来であったなら、到底皆の全力を受けて持ち堪えることなど不可能だったに違いない。


 だが、そこに【オレガフォートレス】を組み合わせることで、その至難は事もなく成り。

 巨人の変化したオレガシールドは、皆の放った大火力を綺麗に受け止めてみせたし、オレガソードは受けた力を振るうのに最適の一振りと言えた。

 そうさ、ブレイブ・ロアとオレガフォートレスは、驚くほどに高いシナジー効果を発揮する、仲良しスキルだったのだ。

 対魔王戦の切り札にと、皆でチクチク研究と練習を積み重ねた成果である。

 問題があるとするなら、発動準備に難がある、という点だろう。

 敵をしっかり抑えておかねば、火力チャージ中に妨害を受けかねないからね。


 その点今回は上手く行った。

 何せ魔王のことは、イクシスさんが完璧に引き付けてくれていたから。

 あまつさえ彼女一人で魔王を追い詰めるところまでは行けてたんだ。

 ならばあとは、最後のひと押し。

 そのためにこそ、私たちはここで切り札を切ったのである。


 そして、作戦は無事に成った。


 崩壊する玉座の間。

 塵も残さず消滅する魔王。

 出現する勝利ウィンドウ。


 余波で死にかける私たち……。


 爆心地に居た私・イン・クラウとイクシスさんはもとより、距離を取っていた他のメンバーたちも全員。

 誰も立てやしない。

 決着判定が成されたことにより、勝者へのダメージ判定がストップしたことで辛うじて生き延びはしたものの。

 リアルだったらまぁ、間違いなく全滅である。


 アニメとかでよくある、「その規模の爆発、絶対自分にもダメージ入ってるよね……?」って言いたくなるような、とんでもない必殺技を至近距離でぶっ放して、結果無傷でケロッとしてる主人公のようにはいかなかったらしい。

 こんなことならフレンドリィファイア設定切っておくべきだったかな……?

 ともあれ。


「か……った……かったぞぉ……」


 虫の息で、ピクピクしながら勝鬨をあげるイクシスさん。

 同じく死にかけながら、それに弱々しく応える面々。


 何とも締まらないことこの上ない。

 キャラクター操作を解除し、クラウから離脱してみたなら、見た目一番元気なのは私っていうね。無傷だし。

 とは言え、反動が大きすぎてそのままぶっ倒れるわけだけれど。


「と、とり、あえず、オレ姉たちのとこ、もどろ……」


 提案し、同意を得、私たちは誰もが地面に突っ伏したまま対戦モードを離れ、トレモへと戻るのだった。



 ★



トレーニングモード。


 毎回フィールドを選べる他のモードと異なり、デフォルトがこのグリッド線が特徴的な謎空間であるトレモは、何気にミコバトで一番見慣れた景色となっており。

 故にこそ、私たちに「戻ってきた」という感想を自然に懐かせる。

 瀕死だった身体も、直前までの苦痛が嘘だったかのように全快し、色んな意味で全員が大きく息をついた。


 勝利の感慨、というのは、うん。

 不思議と湧いてこない。大喜びするタイミングを、完全に失してしまった感じ。

 或いは、単純に実感がまだ掴めていないだけか。


 前方に目をやれば、目をパチクリさせてこちらを見ているオレ姉たち。

 手を叩いて出迎えてくれるわけでもなく、何だか呆然とこちらを見遣っており。

 心眼を通してみても、表情そのままに呆けているらしいことがよく分かった。


「え……っと……」


 何だ、この変な空気。

 チームミコバト勢も、何を言って良いのかよく分からないふうだし。

 プロジェクト最強装備勢も、戸惑ったふうにざわざわしている。

 ちらりとイクシスさんに目配せしてみると。


 自分の手を見つめて、何だかワナワナしていた。

 ずっと扱えなかった謎パワーを思い切り振るった感触と、SH魔王撃破っていう大きな目標を達成した事実が一緒にやってきて、処理限界を超えているらしい。

 彼女に話を振るのは止しておいたほうが良いだろう。

 とすると。


 チラッと、オレ姉に視線を投げてみる。

 目が合った。

 すると彼女は、何だかちょっぴり気まずそうに視線を泳がせると、硬い声で言ったのだ。


「ごめん、速すぎて殆どなんにも分かんなかった……」


 あぁ、やっぱりか……。

 これは、アレだ。素人が格ゲーの世界大会を観た時のやつ。

 当人や玄人からしたら、試合中とんでもない駆け引きが行われてるって分かるものだけど、知識のない人からしたら「おー、なんか……戦ってるねぇ」くらいの感想しか出てこないっていう。

 しかも私たちの戦闘って、成長限界のステータスをフルに使った超高速のものだもの。

 特に転生魔王だなんて、私たちの目から見ても意味の分からない動きをするわけだし、終盤なんてのはそりゃ理解できなくて当然。


「えっと、取り敢えず……戦闘ログをスローで見てみようか?」


 提案には直ぐ様同意の声が集まり。

 斯くして私たちは、たった今行われた対戦の映像を、スロー再生にて見直したのである。

 まったくもって奇妙な鑑賞会。

 何せ、プロジェクト最強装備の面々からは、あたかも初見であるかのような新鮮なリアクションが終始続き、それはそれは大盛り上がりしたのだから。


 ちなみに一番盛り上がったのは、私と転生魔王がバチバチにタイマンを張ったシーン。

 最強装備が一番活躍した場面だからね。あと、師匠たちの目にもちゃんと視えていたから。

 逆にその他のシーンでは、チームミコバトの殆どのメンバーを捉えられない師匠たち。

 ただただ魔王がおっかないという印象だけが強く、結果としてそれを倒したチームミコバトすげー! という感想に落ち着いたらしい。


 と、いうわけで。


「半端ないね! あんたたちパナイね!!」

「キャーミコトチャーン!! ハイレグにしておいて大正解だったわー!!」

「流石アタシたちの弟子! うちの子すごい!!」

「あの子はやる子だって信じてたわ!」

「ねー。ほんとに、立派になってー」

「私も、ミコバトで鍛えたらあんなふうに……!」

「チ、チーナたん! アレは見習っちゃダメなやつじゃから!! 憧れちゃダメなやつじゃからぁ!!」


 なんて具合に、ようやっと相応の感想が飛び出したのだった。

 すると不思議なもので、映像を見返したからか、それともコメントが飛んできたからか、じんわりと大願が成就したのだという事実が私たちの中にも浸透し始め。

 ポロッと、落涙したのはリリ。

 いや、彼女だけではない。見回せば、大半のメンバーがプルプル震えながら、目に涙を浮かべているじゃないか。

 っていうか、うん。私も人のことをどうこう言える立場じゃないけども。


 SH魔王には、およそ……半年くらいだろうか。

 それだけの期間、苦しめられたのだ。長かった……めっちゃ長かった。

 来る日も来る日もボコされ、リアルだったら死んでるような痛みを味わい続けた。

 スキルを磨き、技を磨き、攻略法を研究し続け。それでも勝ちを掴めぬまま今日まで……。

 そんな強敵を、ようやっと打ち破ったのである。これで極まらない感はない。


 パチパチと、オレ姉たちが手を叩き。贈ってくれたのは労いか、はたまた祝福か。

 何れにせよ、それは私たちの涙腺を一層くすぐり、暫し私たちは歓喜に咽び泣いたのだった。


 スンスンと、誰かが鼻をすする音は未だ時折鳴るものの。

 ようやっと皆が落ち着きを取り戻した頃、話題はイクシスさんにより移ろいを見せ。

 結局は本当に、最強装備の完成祝いと祝勝会とが一緒になってしまったと、テンション高く笑う彼女。

 今夜は盛大な宴会を開かねばと、今から大張り切りである。


 斯くして、大仕事……と言って良いのかは不明なれど。

 皆で一つの偉業を成し遂げた私たち。


 ある者は興奮冷めやらず、早速次なる対戦へと向かい。

 ある者はもっと最強装備の性能が見たいと、テストの続きをせがみ。

 ある者は今夜の段取りを決めんと、あっちこっちから話を聞いて回り。

 ある者は歌い、ある者は放心し、ある者は再度映像を見直し。


 そうして各々が思うままに、余韻に浸ったのである。


 けれどきっと、私たちは正しい意味で自分たちの超えた壁の大きさってものを、正しく認識出来てはいないのだろう。

 それを知るのは、これからの話。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 漸く、漸く転生魔王という『本来なら出会っては行けない、生物のみならず世界そのものの敵』とも言うべき化け物とケリを着けられましたね。居るかどうかまだ不明瞭な隠しコンテン…
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