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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第六七五話 検索と考察

 恐らくは、初回の呼び出しによりロックが解除されたのだろう。

 二回目以降の検索機能呼び出しは、上部フレームを下にフリックするだけで簡単に成立することが分かった。

 よもやこんな隠し機能が仕込まれていただなんて。遊び心があると評するべきか、それとも何ゆえ隠してあったのかと勘ぐるべきか。


 ともあれ、早速皆はこの検索機能を使って何が出来るものかと、あれこれ探り始めたようである。

 こういう時人手があると、一気に色々調べられて便利だ。

 その分、後でしっかり調査結果を聞き取る必要があるけれど。


 そうして暫し、皆は真剣な顔で各自ウィンドウと向き合い続けたのだった。

 時折「こんな事ができた」「これにも対応していた」「これは無理なのか」なんて声が出ては、簡単に情報を共有してみたりと、連携も取れているようだ。

 しかしこれ、傍から見るとまぁ異様な光景である。だってみんながみんな、虚空を眺めながら目だけ動かしたり、時折手を動かしたりして、他人からは何をしているのかさっぱりなんだもの。しかもこの静けさである。

 会議だって言って集まってるのに、もしこの様子を使用人さんなんかが目撃したら、一体なんて思われるものか。

 きっと良からぬ印象を受けるに違いない。イクシスさんの指示で会議中は立入禁止、ってことになってるけど、ナイス判断だったと言わざるを得ない。まぁ、アップデートがどうとか、結構な機密情報も飛び交いかねない場だものね。当然の処置でもあるんだけど。


 とまぁ、そんなこんなで。検索機能の検証が始まってから、ざっと三〇分ほどの時間が経過し。

 一先ず大まかな検索機能の何たるかは判明したと言っていいだろう。

 イクシスさん主導のもと、早速皆の報告がまとめられ。

 マジックボードに記されたそれらの結果を、ベッドから眺める私である。


・検索機能に地名を入力することで、現地マップを瞬時に表示することが出来る

・記入欄に入れられるのは、文字だけに限らない

・検索機能は、マップウィンドウ以外のウィンドウ系スキルにも対応している

・検索機能は、簡素なれどヘルプ機能のような役割も担っている

・検索機能には、地味な隠し機能が色々備わっているようだ


……エトセトラ。


 先ず、マップ検索に関しては私も真っ先に試したことであり、その利便性は体感済みである。

 また、どうやら入力欄に打ち込めるのは文字だけではないらしい、というのも大きな発見だった。

 例えばアイコンだ。特定のアイコンをイメージすると、入力欄にそれがそのまま記入されるのである。

 この状態で検索を実行したなら、即座に該当するデータが同時に展開され。必要に応じて複数のウィンドウが大量に開くこともあって、流石にびっくりした。


 検索はマップ以外にも有効である、というのもある意味予想通りではありつつも、大事な発見である。

 ステータスウィンドウやアイテムストレージ、アルバムスキルなどでも使用することが出来、各ウィンドウにて目的の項目を探すのに、とても重宝することが分かった。

 また、簡単なヘルプ機能も備わっているようで。

 例えばステータスの『HP』を検索機能にて調べてみると、自身のHP情報について分かる他、そもそもHPとは何なのか、という簡単な説明書きを読むことが出来たり。

 何気にこれって、世界的な発見なんじゃないかって思うんだけど。

 だってこの世界の人たちは、漠然とステータスについて把握はしているものの、だからといって神様が「ステータスとはこういうものじゃぞ!」って具体的に教えてくれたわけではない。らしい。

 だから、スキル側からこうして定義付けるようなことを明言してくるっていうのは、実はすごいことなんじゃないかって。

 とは言え、まぁ簡単な説明なんだけどね。

 HPは生命力。0になると死ぬ。みたいな。


 それと、質問形式の検索にも対応してくれているようで。

 試しに『今何時?』と入力してみたところ、何とデジタル時計が表示されたじゃないか。

 その瞬間、私の懐中時計が一気に存在意義を小さくしてしまった。ちょっと悲しいんですけど。

 とは言え、こういう知られざる隠し機能って、思いの外色々仕込まれているのかも知れない。気温や湿度まで教えてくれたし。何なら心拍数とか血糖値とか、その辺も教えてくれるっぽいし。もしかして万能かぁ?


 あと、ソフィアさんの発見した『スキルレベルアップに必要な経験値』の項目。何気にこれが一番有用だったかも知れない。

 だって、どんな反復練習が効果的で、後どれだけ繰り返したらレベルが上がるのかっていう検証が可能になったんだもの。

 これを知った途端、今すぐにでも外に出てスキル鍛錬をせねばと目を血走らせたソフィアさん。と、私。

 皆に取り押さえられ、渋々会議の続きである。尤も、私はメカミコトがおもちゃ屋さんの地下で既に動いてくれてるけどね!

 それを察してか、ソフィアさんの視線が痛い。


 とまぁ、色々便利であることは分かった検索機能なれど、やっぱりネットに接続するような機能なんてものは存在しなかった。

 当たり前のこととは言え、残念な気持ちは禁じえない。

 だってそうだ。ネットに接続できたなら、もしかすると何かゲームが出来たかも知れないじゃないか。ブラウザゲーとかさ!

 しかしそこで、私はあることを思いついてしまう。

 私にとっては禁断の検索ワード……即ち検索欄に『ミニゲーム』と入力して検索をかけるという、パンドラの箱を開けるような行為、或いはシュレーディンガーの猫を暴くようなものか。

 もしそれで、本当にウィンドウに何かしらのミニゲームが搭載されていたと知れたなら、私は鍛錬すらほっぽりだしてそこにのめり込む自信がある。

 たとえそれが、どんなクソゲーであろうともだ!

 ゲーマーの性である……。

 そうなると分かっているからこそ、決して検索してはならないのだ。

 俗に言うところの、『絶対に検索してはいけないワード』ってやつだ。まさかそんなものまで存在しようとはね……ウィンドウスキル、侮り難し!




 そんなこんなで、まだまだ完璧とまでは行かないまでも、一通り検索機能について調べをつけることが出来たわけで。

 まとめを経て、話し合いは次の段階へと進んでいった。

 イクシスさんが顎に手を当て、難しい顔で言うのだ。


「確かに検索機能は素晴らしいものだ。ウィンドウ系スキルをぐっと便利にしてくれる、優れた隠し機能だったと言えるだろう。だが……果たして、態々刀の骸がヒントとして示すほどのものだったのだろうか?」


 確かにそれは私も疑問に感じていたことだった。

 刀の骸は、間違いなくそれなりの時間を生き、多くの力を蓄えた周回の私だったはず。

 ならばそんな彼女が、態々ヒントとして検索機能の情報を残してくれたのには、何かしらの理由があるはずなんだ。ただの便利機能紹介だなんてはずがない。


「とは言え、刀の骸になった周回のミコトが、今のミコトと同じ目的で動いていたとも限らない」

「異なる周回のミコト様には、異なる目的があるかも知れないってことなのです?」

「まぁ、さもありなんというところだろうな。生きる目的など、過ごし方や巡り合わせによっては、たとえ同一人物であろうと異ってくるものなのだろう」

「しかしそれでも、態々情報を残すのですから、重大な何かは隠されていると見るべきです」


 鏡花水月の議論を聞き、他の皆も身近な人とあれこれ意見を交えている。

 早速『検索機能に隠された何か』について探り始める者もあれば、そもそも周回云々についておさらいする者もあり。

 イクシスさんはそんな様子に水を差すでもなく、暫くは様子見をするつもりのようだ。

 そして私もまた、ウィンドウを眺めながら考える。


(もしも仮に、今すぐ私が命を落とすとして。次の周回の自分へなにか情報を残すとしたら、どんな言葉を選ぶだろう?)


 やっぱりアップデートに関することだろうか? それとも、妖精の存在について?

 思えば今の私が刀の骸に勝利できた理由の大部分は、妖精師匠たちに教わった精霊術や、精霊そのもののおかげである。

 それが無ければ、結果はきっと私の惨敗だったことだろう。

 師匠たちに出会い、スキルとは異なる、ある意味理外の力を習得できた今の私は、謂うなればイレギュラーに近い存在なのかも知れない。

 そうでなければ、活動開始から一年半で刀の骸に勝利できるはずなんて無いんだから。

 ならばやはり、おもちゃ屋さんのことをヒントとして残すのが一番か。


 それならスキル外の力に頼ることのなかった、理に沿って生きた骸は何を残したのだろう?

 今考えたことに当てはめるなら、『今の自分を構成する重要な要素』ってことになる。

 或いは、今の自分が調べている謎や、心残り的な何かに関してってこともあり得る。

 何故なら、今調べている大きな謎こそが、つまりは自身の活動に於ける最先端と言えるのだから。

 私で言うならば、『鍵のページ』がそうだろうか。

 いや、しかしなぁ。折角だったら『鍵のページの開き方』を残したいよなぁ。鍵のページ自体は、見つけるのに然程苦労したわけでもないのだから。ヒントとして残すような情報とは言えないだろう。


 ってことはつまり、恐らくだけど『検索機能』も中途半端な情報ではないのではないか。

 刀の骸は何か大事な発見をした。その鍵となったのが検索機能であって、しかもちょっとやそっとじゃ気付けないような何かだからこそ、態々ヒントとして残したんだ。

 出来ればもう一言二言欲しかったところだけど、もしかすると思ったより残せる言葉の量は限られていたのかも知れない。

 だとするなら……。


(検索機能で、何かを調べろってことかな……?)


 もしそうなら、一番肝心な部分が字余りで消されたってことじゃないの?

 さながらパスワードの失われた金庫を引き継いだような気分なんですけど。流石私、大事な部分で抜けてる。

 でも今の私で言うなら、『オモチャヤサン』としかヒントに残せない感じだろうか。

 そう考えると、まぁ仕方がないっちゃ仕方がない……のかなぁ。

 なんて想像を巡らせていると。


「ミコトはどう思う?」

「! ん、え、なにが?」

「刀の骸はきっと、戦ったあの場所で命を落とした。なら、あそこで何をしてたのかなっていう話」

「む。なるほど……」


 声を掛けてきたのは、今日も傍らの席を陣取っているオルカ。引き続き鏡花水月メンバーと意見を交わしていたらしい。私は全然話聞いてなかったけど。

 しかし確かに刀の骸の元になった私が、高々あの辺の野良モンスターに遅れを取るとも考え難い。まして、多分仲間もいただろうし、転移スキルだって持ってた。

 近くにはダンジョンも無さそうだったし……。


「逃げる間もなく殺された……或いは、逃げることが出来ない相手に負けた……? 例えば、より強力な骸とか」

「やっぱり、ミコトもそう思う?」

「だねぇ」


 ふと、脳裏に過ぎった言葉がある。

 それは、国民的RPGを題材に描かれた有名な漫画の名台詞。

 ────『大魔王からは逃げられない』

 かつてこの世界に実在し、イクシスさんたちが死闘の果てに撃滅せしめたという最強のモンスター。それが、魔王だった。

 ならばまさか、実在するとでも言うのだろうか? 『大魔王』が。

 ……いや、まさかね。実在するとして、一体何処で何をしてるっていうのか。

 魔王が倒されても動き出さない大魔王だなんて、そんなことが……。


 いや、もしかして『今はまだ存在していない』って可能性は……?

 やがて実装される、なんて事は考えられないだろうか?

 刀の骸を倒したのが本当に大魔王かどうかは、この際どっちでもいいとして。

 アップデートの中にはもしかすると、そういった存在をこの世界に追加してしまうような危険なものがあるのかも知れない。

 あまつさえ、刀の骸がそれと戦った可能性は完全に否定できるものじゃないのだから、十分あり得る話なのかも。


 まぁでも、それに関しては何にせよ、アプデに気をつけようってことで既に話はついてる。

 刀の骸の死因は、高い確率でより強力な骸との戦闘だろう。

 では、それと『検索機能』の関連性はと問われたなら、正直分かりかねるところなのだけれど。

 ともあれ。


「私は、刀の骸が本当は『検索機能で〇〇を調べろ』って言いたかったんじゃないかと睨んでる」


 その『〇〇』が分からない以上、虱潰しは仲間たちに協力してもらうのが一番だろう。

 ってことで情報を共有し、一緒にそれらしいワードを片っ端から検索するという作業に取り掛かったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] これはどうやら検索機能もスキルレベルアップが必要ですね。あわせてまだ見ぬキーワード探しも。 そろそろイクシス先生と呼ぶべきですかね。
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