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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第六一五話 サプライズプレゼント

 新たにモチャコのぶち上げた、『子供たちを護れるおもちゃ』というコンセプト。

 これに賛同し、早速ワイワイガヤガヤと職人魂を滾らせる沢山の師匠たち。


 さりとて、ここでそんな会場に呼びかける者たちがあった。

 トイとユーグである。

 パンパンとおもちゃの銃を天井に向けて発泡し、皆の注目を集める彼女たち。


「はいはい、新プロジェクトの話もいいけど、今はお疲れ様パーティーの席よ」

「そうだよー、趣旨からズレるのは作り手の恥だよー」


 二人の元に、皆もそう言えばそうだったと落ち着きを取り戻し。

 火付け役であるモチャコもまた、熱く語りすぎたことを顧みて、少しばかり恥ずかしそうにしている。

 とは言え、ぶち上げられたコンセプト自体は、私としても興味深く感じるものであり。

 まだまだ師匠たちに比べると未熟な腕ではあれど、製品の開発には私も積極的に参加したいと、密かに創作意欲を湧かせたのである。


 なんてこっそり口元を綻ばせていると。

 ユーグの視線がちらりとこちらを向き。パチンと小さくウインクをかましてくるじゃないか。

 合図である。

 私はそれに、コクリと頷いて応えた。

 すると彼女はトイと小さく示し合わせ、次のアクションへ移ったのだった。


「さて、ミコトとの旅を経て、ちょっぴり頼もしくなったモチャコに、実はとっておきのプレゼントを用意しているのだけど!」

「ここらで贈呈しちゃってもいいよねー?」


 ユーグの確認に、師匠たちがワッと沸いて応える。

 その反応に、うんうんと満足げなユーグ。

 一方のモチャコは、突然の展開に「へ? え?」と珍しく戸惑った様子。

 どうやらナチュラルに驚いているらしい。

 それでこそ、頑張って仕込んだ甲斐もあるというものだ。


「それじゃ呼んじゃいましょうか。メカミコト! お願い!」


 呼ばれ、私はいよいよ動き出す。

 大事な箱をしっかりと両手で抱え、モチャコの居るテーブルへと歩み寄っていった。

 モチャコの丸い目が、そんな私をまじまじと見上げる。


 そう。コミコトに続く、もう一つの身体を得た私を。

 名を『メカミコト』。

 文字通り、メカなミコトである。

 とは言え、パッと見た感じは普通の人と変わらない。所謂アンドロイドタイプってやつだ。

 まぁ、オリジナルのミコトを再現した顔面が、普通の人と言っていいかどうかは物議をかもすところだろうけれど。

 しかし例によって仮面までつけているからね。それを踏まえたならやっぱり、外見は普通の人である。

 ただ、様々な変形機構を備え、数多のアタッチメントも有している。一度それらを用いたなら、普通とは一気にかけ離れてしまうのだけれどね。

 いろんなロマンを詰め込んだ、私と師匠たちによる自信作だ。

 ロボ作りの技術が発展した、一つの結果と言っても過言ではないだろう。


 ってまぁ、それはいいんだ。

 この体については、ソロ活動に入る前から既に実働していたものだし、モチャコもとっくに見慣れている。

 コミコトを動かすのには、【並列思考】と【サーヴァント化】というスキルを使用しているのだけど、これらのスキルも気づけばレベルが上っており。

 同時に動かせる身体というのに、幾らか余裕が出来たわけだ。

 そこで、私(本体)とコミコトが同時におもちゃ屋さんを空けるような場合でも、おもちゃ屋さんで魔道具作りの修行に打ち込めるようにと開発したのが、このメカミコトというわけである。

 コレがあればこそ、師匠たちもソロ活動を認めてくれたわけだしね。


 では、肝心要のモチャコへ贈るサプライズプレゼントとは何か。


 それは、このメカミコトと師匠たちが、こっそり共同開発したモチャコ用のニューアイテムであり。

 彼女の隣にそっと置いた、この箱の中身こそがそれであった。

 大きさにして、モチャコが何人も収まりそうな、縦長の真っ白な箱だ。


 ようやっと状況の変化に理解が追いついてきたモチャコに、コミコトが歩み寄って、リモコンを手渡す。

 こちらはモチャコの手のひらに収まる程度の、小さな謎のリモコンである。

「クルルゥ」

 私の知ってることは大体何でも知ってるゼノワも、サプライズの仕掛け人側の立ち位置であり。

 モチャコの可愛らしい反応を見て、思わずと言った具合に楽しそうな声を漏らした。


 戸惑いと好奇心に引っ叩かれ、一人ソワソワしているモチャコ。

 そんな彼女へ、満を持してユーグが声を掛けた。


「さぁモチャコー、そのリモコンで箱を起動しちゃってー!」

「う、うん……!」


 指示に従い、モチャコはリモコンに搭載された起動ボタンを、思い切って押し込む。

 すると。

 リモコンより発せられた信号に反応し、白い箱が派手な演出を始めたのである。


 カシャン! と、複雑なスライド機構を発動させ、メカメカしい隙間が幾重にも箱の至る所に生じる。

 すると、生じた隙間が突如発光を始め。何ともSFチックな見た目へと変じたではないか。

 その様たるや、まるでユニコーンガ◯ダム。NT◯Dである。惚れ惚れする格好良さだ。

 それと同時に、彼女が操作したそのリモコン自体も、箱と同じような変化を起こしたのである。

 これにはモチャコばかりか、既知であるはずのゼノワまで目を輝かせて喜んだ。

 が、勿論これで終わりではない。


 箱はそこから更に、カシャンカシャンと幾重にもスライドを繰り返し。

 そして最後には、壁や天井の全ては台座へと綺麗に収納され。

 残ったのは、金色の光を放つ台座と、その上に鎮座するマシンが一機。


「ふぉぉ……ふぉぉぉぉ……」


 言葉にならない声を漏らし、モチャコが感動に打ち震えている。

 だが、その足は一歩、また一歩と台座へと歩み寄っていき。

 そして彼女は、私たちが密かに共同開発した、それの傍らに立ったのである。


 着想に至った切っ掛けは二つ。

 一つは自転車。前々から、今の私なら自転車くらい簡単に作れるんじゃないか、という思いつきはあったのだ。

 それに加えて、もう一つ。

 モチャコが時々、ゼノワに跨って竜騎士ごっこをしているのを目の当たりにしたことである。


 そうさ。

 これら二つを合わせて考えれば、概ね察しが付くんじゃないだろうか。


 モチャコは恐る恐る、それに跨り。

 そして小さく首を傾げた。

 だが言わんとしていることは分かる。私は質問が来るより先に、彼女へ解を寄越した。


「モチャコ、鍵穴にキーを指して回すんだよ」

「!」


 先程まで、リモコンを握っていたはずのモチャコの手。

 しかしそこに今握られているのは、変貌を遂げた一本の鍵である。

 ゴクリと、生唾を飲み込んだモチャコは眼下に鍵穴を見つけ。

 徐にそこへ、ジャコッとキーを差し込んだ。


 するとどうだ。まるで息を吹き返したかのように、マシン全体に幾何学模様が駆け巡り。

 鼻息を荒くしたモチャコは、堪らず口角を上げながら、思い切りキーをぐいっと回したのである。


「っ……!!」


 瞬間、これまたSFチックな起動音が鳴り、マシンが稼働形態へと変形する。

 そうしたら後は、ハンドルを握って念じるだけで、マシンはモチャコの意のままに駆動するのだ。

 トイとユーグが簡単なレクチャーをモチャコへ施したなら、彼女は意気揚々とマシンとともに宙に浮き上がったのである。


 そう、私たちが作り上げたモチャコへの贈り物。その正体は、ロマンの結晶『魔道式エアバイク』である。


「うっぴゃぁぁぁああああ!」


 余程気に入ったのだろう。奇声を上げながら、早速広いリビング内をビュンビュン飛び回るモチャコ。

 ……うん。今は良いけど、後で安全運転を教えなくちゃ事故が起こりかねない。

 とは言え、すっかりハイになってエアバイクを乗り回すモチャコを、この場に居る全員が生暖かい目で眺めたのである。

 っていうか、なんだか私も羨ましいんですけど。

 今度自分用のマシンも作らないとね。


 ともあれ。

 斯くしてサプライズプレゼントも大成功。

 モチャコは本当に嬉しそうに、「ありがとうみんな! もう最っっっ高だよ!!」とバッチリなリアクションをくれたし。

 その後のパーティーも大いに盛り上がった。


 そうこうして、気づけば宴もたけなわ。お疲れ様パーティーは盛況の内に終わりを迎えたのである。

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