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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第五〇〇話 キーオブジェクト

 やれ龍種だNPCだと疑いの掛かる、百王の塔の真なる王様。

 そんな彼が傍観する中、私たちはせっせと広大な玉座の間を片っ端から調べ上げていった。

 話しかけてみてもうんともすんとも言わない王様だが、まさかただ玉座に腰掛けているだけがお仕事でもあるまい。

 ならばきっと、彼には何かあるのだ。

 これまで見つけた真・隠し部屋と同じであるならば、王様こそがお宝を守るガーディアンだとか、そういう感じだと思うのだけれど。

 しかし、ガーディアンは問答無用で襲い掛かってくるのが常だった。

 それがあの無反応っぷりである。ガーディアンではないのか、はたまた王様が特殊なのか。

 何れにせよ、もしかしたらこの広間に何かしらのヒントくらいは存在しているんじゃないかと思ったのだけれど。


『! 見つけた!』

 すると案の定、流石のオルカがそのように念話を飛ばしてきたのである。探索開始から、おおよそ三〇分ほど経ってのことだった。

 すぐに皆で彼女の元へと駆けつけてみれば、部屋の隅でも端でも柱の足元でもなく、なんでも無い床の一部に脈絡もなくぽつんとそれは刻まれていたのだ。


『キーオブジェクト……?』


 床に記されていたのは、たったそれだけ。

 それが何なのか、それをどうしろというのか、それがどこにあるのか。

 それらの説明など一切ないまま、無造作に、ぶっきらぼうに、たったその一言だけが素っ気無くそこに記されていたのだ。


『これ、どういう意味でしょう?』

 ココロちゃんが首を傾げる。皆も困惑した様子。

『オブジェクトと言うと、アイテムとは異なる物体のこと……という認識でいいのだろうか』

『つまり、鍵となる物体……?』


 言われ、脳裏を過ぎった物が一つあった。

 私が先日匙を投げた、銀色の杯である。

 アイテムの定義がどこにあるかは謎なれど、あれもオブジェクトと言われればオブジェクトなのかも知れない。

 つまるところ。


『もしかして、オーパーツのことを指してたりして』

 私の言葉に、皆がハッとした様子を見せる。

『た、確かに。謎しかないアイテム……いや、オブジェクトだもんね』

『も、もしそうなら、これは大発見かも知れませんー!』

 興奮した様子で目を輝かせるレッカとスイレンさん。

 しかしソフィアさんなんかは尚も冷静で。

『仮にそうだとして、それをどうしろというのでしょうね?』

 と、至極当然の疑問を述べたのだ。


『とりあえず、他にもヒントがないか探してみる』

 オルカのその言葉に、私たちは再び散開。

 王様に動きがないか、油断なく注意しつつ玉座の間を隅々まで調べ上げていった。

 時折イクシスさんから焦れったそうな念話が届くも、探索を怠るようなことはせず。

 その結果。


『なんにも見つからないんですけど』

 私もオルカも他のみんなも、『キーオブジェクト』というヒント以外には、これと言っておかしなモノは何も発見できなかったのである。

 骨折り損ではあったけれど、他にヒントは無いってことは分かった。

 ならばいよいよ、このキーオブジェクトってヒントについて掘り下げていく他無いわけだが。


『やっぱり、あの王様と何か関係があるんじゃないの?』

 と意見を述べたのはレッカ。

『ですね。この部屋に記されたヒントと、寡黙な王様……無関係とは考え難いです』

『彼にキーオブジェクトを見せてみれば、或いは献上すれば、何かしらの変化が起こるんじゃないか?』

『わけも分からないまま献上するのはちょっとなぁ』

『も、もっと単純な話ー、あの方に普通に訊ねてみるのはダメなんですかー?』

『そうですね、それもありでしょう。何か喋ってくれるかも知れませんよ』

『グゥ……スゥ……』

『とにかく物は試し』


 という具合に、一先ず王様に再度話しかけてみることが決まったのである。

 確かに、如何にもキーワードめいた言葉をぶつけてみるっていうのは、何かしらの反応を引き出す切っ掛けになり得るだろう。

 或いはヒントを見つけ出したことでフラグが立った可能性もあるし。

 何なら銀の杯を見せてみるのも手だ。

 兎にも角にも『キーオブジェクト』というワードが突破口になる可能性は大いにある。

 であれば後はぶつかってみる他ないだろう。

 ただし、戦闘に突入することも考えられるため、そこは十分に注意して当たらなくちゃならないが。



 私を先頭に、皆で再びぞろぞろと玉座の前までやって来ると、緊張しながら全員で玉座を見上げる私たち。

 相変わらず凄まじい威圧感を放っている王様だけれど、今のところはやはり眉一つ動かさない。

 一応私たちの姿をその眼に捉えてはいるのだけれど、それだけ。何をするわけでもないのだ。

 彼が一体何者なのか、についてはこの際一旦置いておくとして。

 私は意を決し、率直に彼へ問いかけた。


「キーオブジェクト……とは、一体何なんですか?」


 その瞬間だ。

 ここまで何らアクションもリアクションも示さなかった王様の、その双眸がしかと私の方を向いたのである。

 凄まじい眼力に、物理的な圧力さえ覚えた気がした。

 狼狽えそうになるのをどうにかこらえ、へそに力を込めて王様を見上げていると。


「汝が求むるは、深淵か」

「…………?」


 なんか、謎の言葉を吐かれてしまった。

 急ぎ皆に助けを求める。

『な、何か言ってきたんですけど! なんて返したら良いの?!』

『イエスかノーで良いんじゃないですか?』

 と、早速返答したのはソフィアさん。

『要するに、お前は深淵を求めているのか、と問うてきてるんだろう?』

『深淵?』

『どういう意味でしょうね』

『これ、知ったらやばいやつですかー……?』

『それって知識なのかな? それとも武器とかアイテムとか?』

『ぐぬぅ、私もそっちに行きたいぞぉぉ』

『グゥ……スゥ……』

『深淵っていうか、混沌としてるじゃん……』


 っていうかゼノワ寝てるし!

 まぁともかく、ここでノーと答えたならきっと、話はそこまで。立ち去れ! とか言われて、放り出されたりするんだろうな。或いはまた無反応に戻るとか。

 だったら返すべき答えは一つしか無い。


『イエスって答えるけど、いいよね?』

 と確認すれば、些かざわめきこそあれ、異論は出ず。

 皆の同意を得た上で、私は静かに口を開いた。


「イエス! 私たちは、深淵を求めます!」


 すると。静かにそれを聞き届けた王様は、徐に玉座より立ち上がり。

 そして一層の迫力を漲らせて言うのである。


「なれば力を示せ」

「っ!!」


 異変は直後に起こった。

 王様より感じられたプレッシャーが、ここに来て極大に膨らみ、とうとう私たち皆を吹き飛ばすまでに至ったのである。

 幾ら威圧感が凄まじいからって、物理的な影響まで生じさせるとか、そりゃ無いんじゃない?!

 なんて飛ばされながら王様を睨みつけていると、彼の身体に驚くべき変化が生じたのだ。


 巨大化。変貌。

 みるみるうちに人間離れしていくそれは、あれよあれよとイクシスさんの示唆した通りの姿へと変わっていった。

 即ち、龍種。ドラゴンである。

 それも、これまでに対峙したどんなドラゴンよりも恐るべき力を感じさせる、桁外れの龍だ。


 流石に弾き飛ばされた程度でどうにかなるような面子ではなく、私たちは各々着地を決めるなり即座に戦闘態勢へ移行した。

 念話からはイクシスさんの警告が届く。

『気をつけろみんな! 人に変身できるほどのドラゴンなら、その力は下手をすると厄災級にも届きかねないぞ!!』

『や、厄災級?!』

『ピンキリだから一概には言えないがな……』

 だとしても、大変なことである。


 こうなっては出し惜しみなどしていられない。

 私たちは最初から全力モードへと移行し、戦闘準備を完了するのだった。

 わー……なんか、五〇〇話まで来ちゃったんですけど。

 書きたいことを拾い続けてたら、さっぱり終りが見えないんですけど!

 お付き合いいただいている読者の方々には、感謝の言葉もありません。ああいや、やっぱりあります。ありがとうございます! 感謝は言わなきゃ伝わらないってね!


 まだまだ終わりは見えてきませんが、まぁ引き続きのんびりお付き合いいただけたら嬉しいです。

 普通ならこういうタイミングでSSとか挟むのが読者サービスなんですかね?

 すまねぇ、うちにはそういうのは無いんだ。

 その代わり、淡々と黙々と一定ペースで更新しておりやす。それで勘弁しておくれです!

 今後も完結目指して歩いていくぜー。

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