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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第四七話 夜中の成果

 見張りをしつつ鍛錬に励んだ私は、頑張った甲斐あってスキルを成長させることに成功した。

 オルカとココロちゃんに詳細を問われ、私は上機嫌に説明を始める。


「念願の、アイテムストレージが成長しました! またも容量が倍になって、これで一二八種類のアイテムを持ち歩けるようになったよ!」

「「おお~!」」


 パチパチと、二人して私の発表に拍手で応えてくれる。とても気分が良い。

 けれど二人の目は言っている。それだけ? まだあるんでしょ? と。勿論、まだある!


「あと、ストレージを使用可能な有効射程が、15メートルくらいに伸びた。地味に便利になったねー」

「ミコト、勿体つけないで」

「なにか新しい能力が付与されたんですよね?」

「あ、はい。実は……念願叶って、ストレージ内の時間停止が可能になりました‼」


 もっと引っ張ってから発表したかったのに、急かされてあっさりゲロってしまった。が、まぁいい。

 切望していたアイテムストレージ内の時間停止機能。野営で口にする保存食というのは、内容も量も限られるし、栄養面でも心もとない。

 けれどこの機能さえあれば、新鮮な食材を劣化させずに持ち運ぶことが出来るはずだ。

 ストレージの容量も増えたことだし、それほどスペースの心配をする必要もないだろう。

 と説明すると、二人も大いに喜んでくれた。


「やりましたねミコト様! ココロも、出先でちゃんとしたものが頂けるのならそれに越したことはありません!」

「ミコトが有能すぎて、冒険者としての勘が鈍りそう……でも、それくらいすごいことだとも言える。流石ミコト!」

「う、そうだね。あんまりスキルに頼りすぎてもダメか。そこはある程度自重しないと、いずれ自分たちの首を絞めかねないし、考えながら使っていこう」


 オルカの懸念に、私も少し伸びた鼻を引っ込めざるを得ない。

 いい気になって楽をしていては、もしもその利便性を失った時、大変な苦労を味わうことになるだろう。

 贅沢や便利な生活を覚えた人は、なかなか元の暮らしには戻れないものだ。ならば、贅沢を覚える前に手を打っておくというのは存外重要なことかも知れない。しっかりと肝に銘じておかねば。


「それで?」

「え?」

「ミコト様のことですから、まだあるんですよね?」

「な、なんでわかるの!?」


 話も一段落して、さらにサプライズ! ってやりたかったのに、どうやら見透かされてしまったようだ。

 そう、実はもう一つ報告するべきことがあった。


「実は、換装の方もレベルアップしました!」

「だと思った」

「スロットが二枠増えたんですよね。それで、新たに追加された能力はもう調べてあるんですか?」

「もぉ! もうちょっとワクワクを楽しみませんかね!? 全部仰るとおりだけどさ!」


 さっきっから、これまでの傾向で成長の内容なんかがバレバレだ。全部先読みされてしまってちょっと哀しい。

 確かに換装のスロットも、前回同様二枠の拡張だったし、新しく出来るようになったこともあるんだけど、もうちょっと目を輝かせながら発表を聞いてほしかったなぁ、なんて。

 二人が寝てる間、こっそり検証とか頑張ったんだよ? なのにさぁ。


「ミコト、いじけないで。それで、何が出来るようになったの?」

「むぅ……部分換装」

「部分換装……ですか?」


 私はざっくりと説明する。

 部分換装とは、読んで字のごとく。選択した装備だけを換装することが出来るという便利機能だ。

 正しくは、仮にスロットにアルアノイレだけを登録しておいたとする。そうしたら、現在身に着けている装備の中から何か一点を選ぶことで、アルアノイレと入れ替えに装備することが出来るという機能だ。

 従来どおりであったなら換装を試みた時点で、スッポンポンにアルアノイレだけを装備した、かなりアレな格好になっていただろう。


「ということは、もしかして……装備を集める必要がなくなった?」

「う……うん。まぁ、そうなるかな?」

「す、凄すぎじゃないですかミコト様‼ ということは、使いたいときにだけアルアノイレを装備して、重い一撃を繰り出す! っていう運用も出来るってことですよね?」

「だね。でも、一応制約もあるみたいで」


 一つのスロットに登録してある装備の内、一部だけを入れ替えることは出来ない。つまり、スロットAにアルアノイレと革鎧を登録していたとするなら、その内アルアノイレだけを選択することは出来ず、部分換装を行うには革鎧も一緒に装備交換する必要があるということ。

 また、重複装備になる場合は部分換装が発動しないこと。

 重複装備とは、例えばアルアノイレは足具だが、既に足具を装備している状態でその上にアルアノイレを着けようとしても、それは無効になるという話。


「なるほど」

「ちなみに、これまでのような一括換装は出来なくなってしまったのですか?」

「ううん、それも出来るよ。任意でどっちの換装を行うか選べるみたい」

「それは、とてつもなく便利な能力……!」


 まだ実戦で試したことはないけれど、好きなタイミングでアルアノイレを装着出来るというのは、凄まじいメリットだと思う。

 これなら感覚のズレも最小限に抑えられるし、他にも強力な装備が揃ってきたなら更に凄いことになる気がする。


「とまぁ、報告は以上かな。部分換装については、早く実戦で試してみたいね」

「私達が寝ている間に、また一段と成長なさったんですね……流石ですミコト様! さすみこ!」

「と言うか、寝ながらスキル訓練できちゃうのがおかしい」

「あ、それはココロもこの目で確認しました! ミコト様は確かに熟睡されていたのに、ストレージから物が出たり入ったり、ミコト様のお姿がコロコロ変わったり」

「ああ、それまたやってたのか……驚かせちゃったならごめんね」


 どうにも変な癖がついてしまったらしく、私は寝ている間もスキルの訓練を継続しているようだ。

 しかも換装ならともかく、ストレージ訓練の方はターゲットに見境がなくなってしまうため、場合によっては周囲の人間に迷惑をかけてしまいがちである。


「とは言え、ミコトのスキルがこんなに早く育つのは、それのおかげも確かにあると思う」

「そうですね。スキルレベルなんてそれこそ、生涯をかけて磨いていくものなのですよ。それがたった数日や数週間で育つなんて、ただ事ではないんですから」

「そっかぁ。まぁだからこそ頑張って訓練してるんだしね、成果が出ているなら重畳だよ。これからも頑張るぞー」

「私もウカウカしていられない。効率的な訓練方法を見つけないと」

「コ、ココロもです!」


 なんて話し合いながら、朝食を済ませて後片付けを行った。

 部分換装を会得したことで、装備品を集める必要性はぐっと下がってしまったのだけれど、それでも一応ダンジョン攻略は続行することにした。

 何も装備を集めることだけが目的で、ここへ来たわけでもないしね。

 鏡のダンジョンに挑む前のダンジョン体験、という趣旨もあったので、出来ればきっちりボスまで攻略してダンジョンクリアを経験しておきたいのだ。


 そんなわけで私達は宿泊した部屋を後にし、二日目のダンジョン探索を開始した。

 第二階層の広さが第一階層のそれと同じくらいだとするなら、既に半分は埋めたことになる。残りもさっさと埋めてしまうべく、私達は早足気味に探索を進めていった。

 すると、早速部分換装を実戦で試せる機会が訪れた。


 遭遇したモンスターは、ジャイアントバット二体にスケルトン一体。

 私はオルカたちに一人でやらせて欲しいと願い出て、舞姫を抜き歩み出た。


「よし、やるぞー」

「危なくなったらフォローするから」

「頑張ってくださいミコト様ー!」


 一対三だなんて、普通に考えたらとんでもない話だ。現実はフィクションのように甘くない。取り囲まれればあっと言う間にボコられるだろう。

 だって人の背中には、目なんてついていないんだもの。一体を相手にすれば、あっけなく背中が無防備になるものさ。ろくな連携すら必要なく、数で押せば痛打や致命傷を与えるのは簡単なんだ。


 でも、今の私はそう容易くない。

 確かに背中に目はないし、常に敵の動きが手に取るようにわかる! なんてこともないのだけれど。

 それならば、背後に回らせなければいいだけだ。間合いをやりくりし、相手の手数をコントロールしてやる。そういう、細かな工夫の繰り返しで一方的な展開を避けることは出来る。

 そこに、アルアノイレの力を加えればどうなるかという話。


 飛びかかってくるジャイアントバットをいなし、牽制とフットワークで間合いをやりくりする。突っ込んできたスケルトンの頭蓋骨を舞姫で跳ね上げると、しかしあからさまな隙を晒してしまった。

 すかさずそこへ、ジャイアントバットが二体がかりで襲いかかってくる。

 そうさ。誘いにまんまと乗っかってね。


 舞姫の一本とアルアノイレが瞬時に入れ替わると、さながら時間の流れがゆっくりに感じられた。いや、そう錯覚するほど素早く動ける。

 飛びかかってきたジャイアントバット二体を、文字通り一蹴。二体まとめてハイキックに巻き込むと、恐ろしい勢いで側面の壁に激突し、派手な音を上げる。瞬く間に塵へ変わっていく二体の大きなコウモリ。

 そして更に、追撃の爪は頭蓋骨の外れたスケルトンへ襲いかかり、その体躯をバラバラに粉砕してしまった。


 十分すぎる成果だ。即座にアルアノイレをスリングショットへ換装し、丁度コアだけが残ったスケルトンのそれを、ストレージから取り出したくず鉄を打ち出し、射抜く。

 穴の空いたコアは弾けるように砕け散り、そしてすぐにドロップアイテムへと変じた。

 総じて、数秒間の出来事である。


「流石ミコト、もう使いこなしてる」

「ふ、普段から沢山切り替えたり、出し入れしたりしてますからね……」

「まぁ、こんなものかな。なかなかいい感じなんじゃない?」


 スリングショットを舞姫に変換し、鞘に収めながらオルカたちへ振り返ると、彼女らはパチパチと苦笑を浮かべて拍手を送ってきた。


「こんなゼロ歳児は嫌だ」

「まったくです」

「な、中身は一七歳だから!」


 なんて軽口を叩き合いながらドロップアイテムを拾うと、探索を再開した。

 マップはあっと言う間に埋まっていき、立ちはだかるモンスターもやけに張り切ったオルカとココロちゃんの手で瞬殺されていく。ああ、私の出番が……。


 途中宝箱や隠し部屋、それに罠などの発見もあり、オルカの見せ場には事欠かなかった。

 そんなこんなであれよあれよと第二階層は制覇出来た。


 現在は下り階段のある小部屋で休憩中。

 どうやらまだダンジョンは続くらしい。果たして、この下には何が待っているのやら。

 何ということだ、二日連続で更新が遅れてしまうとは……疲れてるのかなぁ。

 気を引き締めます。

 皆様も、新型肺炎が流行っていますのでお気をつけくださいまし。

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