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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第四六話 第二階層

 ダンジョンの第二階層。

 石レンガ造りの階段をゆっくりと下ると、しかしそこには第一階層と見栄えの変わらない小部屋があり、奥に通路があるだけの、感動に乏しい景色が広がるのみだった。

 まぁ、この世界のダンジョンは頻繁に出現するという話だし、階層毎に大きく様相を変える、なんてことは期待するだけ無駄なのかも知れない。


「第一階層と変わった感じは、あんまりしないね。確かに構造は違うみたいだけど」

「そう言えば、上の階層の地図って、今でも確認できるの?」

「あ、うん。出来るみたいだね」


 マップウィンドウは階段の中頃からパッと内容が切り替わり、苦労して隅々まで埋めた第一階層の地図から、余白ばかりの第二階層を記した地図へ変化した。

 しかしどうやら、任意で第一階層の地図を確認することも出来るようだ。ワンタップである。念じるだけでも可。ほんと、一体どういう仕組なのやら。


「それでは、とりあえずモンスターの力が見たいから、適当にエンカウント狙うけど大丈夫?」

「問題ない」

「ココロも、バッチリですー」

「じゃ、行こうか」


 マップには相変わらず、モンスターの存在を示す赤いマーカーが徘徊しており、私は最寄りで単独行動している個体に狙いをつけて接近を試みた。

 初見の場所なのに、半径二百メートル圏内なら壁向こうの構造までマップへ記されていくため、足取りに迷いはなく。オルカもココロちゃんも何ら疑うことも案ずることもなく私の先導に従ってくれる。これは、うっかり地図の読み間違えとか出来ないぞ。

 ああ、いっそのこと音声案内とかナビゲーターとか、そういうのがあれば万が一の失敗も避けられそうなんだけどな。今後のスキル発展に期待か。


「ん。私にも感知できた。これは、スケルトンだね」

「スケルトンだったか。私がやっていい?」

「ココロとしては、あまりミコト様に実力が詳らかでないものと戦って欲しくはありませんが……」

「同じく。ミコトが怪我とかしたら、私……」

「ええい、過保護組め! ちゃんと様子見してから挑むから、そんなに心配しないでってば!」


 二人をどうにか説き伏せ、私がスケルトンの実力を測ることにした。

 可能性は低いけれど、もしかすると階層を移動したことでモンスターがアホみたいに強化されている、という事も絶対にあり得ないわけじゃない。石橋を叩き、慎重に当たってみるとしよう。


 曲がり角に身を潜め、私は適当に拾った小石をスケルトンのすぐ近くの壁めがけて投げた。

 狙い違わず小石は壁にカツッと当たって跳ね返り、見事スケルトンの頭蓋骨を小突いてみせたのである。

 さて、どう反応するか。所作やリアクション、警戒の仕方に索敵範囲。そういった色んな情報をなるべく精査し、慎重にスケルトンの力量に当たりをつけていく。

 案の定石が飛んできたと思しき方を警戒しているが、そこは壁。そのためにわざわざ石を跳ねさせたのだから狙い通りだ。

 スケルトンはしばらくそうして警戒を続けていたが、やがて何事もなかったかのように踵を返した。ここから見ている分には、なんとも間抜けな姿に見えてしまう。

 どうやら賢さや鋭さ的には、そこまで極端な変化は無さそうだ。だが、ステータス値がどれくらい引き上がっているかはまだ未知数。

 そこで私は再度小石を手に取って、今度は強めにスケルトンの足めがけて投げてみた。


 アルアノイレ由来の膂力にて発射された小石は、万能マスタリーの命中精度と威力補正も相まって、生半可な硬度ではひとたまりもなく粉砕する弾丸となる。

 果たしてスケルトンのバイタリティは、私の投擲した小石を跳ね除けるに足るのか。

 しかして結果はなんともあっけなく。あっさりと左の大腿骨を小石が食い破り、スケルトンはまんまとバランスを崩して転倒してしまった。


「うーん、やっぱりそれほど強化されたって感じはしないね」

「ミコトの火力が高すぎて、違いが判断しづらい」

「アルアノイレは、この階層でも過剰装備だということは判明しましたね」


 私達は短く感想を言い合った後、スケルトンが起き上がる前に角から飛び出して、一気に片をつけてしまった。

 それにしても、人骨を砕くというのにはちょっと抵抗があると言うか、気分の良いものではない。今更という気もするけどさ。


 聞いた話によるとスケルトンというのは、別に骨型の生き物でもなければ、骨に魂が宿ったというものでもないらしく。

 怨霊だか悪霊だか知らないが、そういう霊的なものが人骨らしきものを念力か何かで動かしているとか何とか。要は怪奇現象だ。なので、骨を砕いてみたところでコアが無事なら、普通に何度でも元通りになって起き上がるのだと言う。

 正直ゾッとする話だが、私は別におばけが極端に怖いわけでもないので、キャーキャー言ったりはしない。

 というかそもそも、スケルトンはポップする際骨ごと現れると言うじゃないか。なら、その人骨が本当に人間の遺骸なのか、それとも別の何かなのかは定かではなかろう。


 とは言え結局のところ、あまり深く考えないほうがいい話だろう。

 もしも本当にスケルトンの正体が、死んだ人間の怨霊とかだったとしたら、私は無駄に気をもんでしまうと思う。気にしてみたところでどうしようもない事だろうに、戦うのを躊躇する原因にはなってしまうはずだ。

 本当に人の遺骸が元でスケルトンが生まれているとしても、しかし倒さないわけにも行かない。

 そう考えると、聖魔法で対処するのが最も精神衛生上はいいのかも知れないな。

 そうは思うものの、その反面私達だって体を張ってダンジョンに挑んでいるのだ。殴って倒せる相手に対し、わざわざMPを消耗し、リスクを背負うのはどうなんだろう、とも考えてしまう。

 なんて、結局既に気をもんでしまっているじゃないか。


 私はブンブンと頭を振って、頭の中からスケルトンの正体に関する考えを追い出した。

 スケルトンはモンスター。モンスターは倒す。ドロップを拾う。それだけだ。


「さて、もう何度か戦ってみて、危険が無いようであればアルアノイレにはストレージでお休みしておいてもらおうかな」

「換装でさっと切り替えられるといいのにね」

「装備の部分換装なんて出来ないし、純粋な武器でもないから装着の手間がかかるのがネックかな」

「それですと、スロット一つをアルアノイレ含む最強装備一式で固める、というのはどうでしょうか?」

「お、ココロちゃんそれいいね! 私も薄々考えてはいたんだけど、なかなか低級装備すら集められないから、いつかそんなことが出来ればいいな、程度には思ってたんだぁ」


 ピンチのときだけ使う、ゴリゴリのガチ装備一式をセットしたスロット。実にロマンがあって心踊るアイデアだ。

 今後、人前で着けるには憚られるような、身の丈に合わない強力な装備を手に入れる機会があれば、アルアノイレと同じスロットにどんどん放り込んでいくとしよう。きっとすごいことになるぞ!


 と、そんな事を話しながらダンジョンを進み、数度の戦闘でやはりアルアノイレなしでも対応できる敵の強さだと確信し、アルアノイレはストレージへ。代わりに仕舞っておいた舞姫の一本を取り出し、いつもの装備に戻った。

 その後の戦闘では、やっぱりステータスが戻ったことに因る感覚のズレに戸惑い、オルカのフォローを受けてしまう。

 やっぱりちゃんと実力をつけていかなくちゃダメだな、と強く認識した。



 ★



 探索は順調に進み、宝箱も第一階層より多く発見することが出来ている。空いていないものも多く、ちらほらと装備品も見つかっていた。特筆するほどのレア物はないが、徐々にスロットが埋まっていくのはやっぱり嬉しいものだ。


「この調子なら、スロットの一つや二つは埋められそうだね。実戦での換装披露もそう遠くないかも」

「ミコトの装備が充実すれば、私も安心して動けるから。頑張ってたくさん宝箱を開けないと」

「とは言え今日はここまでですね。できる冒険者は、しっかり休める冒険者ですよ」


 というわけで、第二階層のマップも半分くらい埋めた時点で今日の探索は打ち止めとした。

 休むのに丁度いい部屋を見つけ、ココロちゃんの結界でモンスター除けを行った後、少し休憩した後食事の支度をする。

 とは言っても、堅パンや干し肉と言った定番の保存食であり、テンションは上がらない。

 正直生前は、物語でそれらの存在を目にする度に幾らかの憧れを感じていたのだけれど、実際食卓にそれしか並ばない現状はとても歓迎ムードには程遠い。

 何なら、本当にこんなもので栄養が摂れるのか心配にさえなってくるレベルだ。


 食事の支度はストレージから保存食を適量取り出し、分配するだけなのであっさりしたものである。

 早速私は手を合わせ、それらのメニューを口に運んでいくわけだが。


 干し肉と言うと、ビーフジャーキーを思い浮かべていた時期が私にもあったなぁ。

 ビーフジャーキーって、ちゃんとそれとしてしっかり味付けされて、美味しく加工された品だったんだと今になって思い知る。

 それくらい、干し肉は味気ない。あと硬い。


「二人はこういう食事って、やっぱり慣れてるの?」

「うん。好んで食べたいとは思わないけど、野営だとどうしてもこういう感じになる」

「ココロもですね。寧ろ食べ物があるだけマシ、という経験も割とありますから」

「そっかぁ。私はまだまだ甘ちゃんだなぁ……もっと二人を見習わないと」


 日本出身ということで、舌が肥えてしまっている私にこのラインナップは、正直なかなかキツいものがある。

 が、冒険者たるものそんなことで音を上げていられないのだ。

 そもそも、食べられるものがあるというだけで幸せなことだとは思うんだ。

 私自身、一回死んだ経験があるからかは分からないけど、ふと考えることがある。こうやって食べてるお肉も、私の生前の体も、どっちも元は生きてて、そして死体になったんだよなって。だから私は今、死体を食べて生きてるんだ。

 食べられるために殺されるとか、どういう気持なんだろうな。私だったら絶対イヤだな。人はそれを強要して、糧を得ている。そう思うと、決して粗末にしようだなんて考えは浮かんでこない。


 とは言え、舌に合わない食事は辛い。辛いものは辛い。そこはどうにも割り切って考えられるような問題ではないと思う。人の舌は罪深いよな。自己嫌悪しちゃうよ。

 それをどうにかしようと思うのもまた、人だってことだ。

 やっぱりストレージの時間停止機能には憧れを懐いてしまうな。


「さて、それで就寝はどうするの?」

「結界があるから概ね危険はないと思うけれど、万が一ってこともある。もし他の冒険者がここにやって来たなら、結界は意味を為さないし、念の為結界になにか想定外が起こることも考慮しておくことも大事」

「ですね。なので通常の野営同様、交代で見張りを立てましょう」


 ということで、食事を終えた私達は寝支度を整え始めた。

 寝具はバッチリストレージに入れてあるし、換えの下着なんかも用意がある。

 それに何より、頑張って習得した浄化魔法だ。思いがけずこれが大活躍した。


 体を綺麗にするのは勿論のこと、戦闘ではスケルトンに効果抜群だったし、それに何より、その、お手洗い事情には必要不可欠と言っていい。敢えて詳しくは語らないが。

 あとは、着替えた時の洗濯もこれでまかなえる。生地も傷まない。まぁ、洗濯は普通にしたほうが気持ちいいのは確かだけどね。


 そんなわけで、最初の見張りはココロちゃんが買って出てくれたので、お言葉に甘えて私とオルカは先に休ませてもらうことにした。ちなみに二番手はオルカで、私は最後だ。

 地味にキツいのって、多分二番手だと思うんだよね。半端な睡眠で起こされて、見張りの後また半端に眠るってさ。だから明日は私が二番手を務めようと思う。そういう役目は、一番弱い私が引き受けるべきだからね。

 なんて思いつつ、私の意識はいつしか微睡みの中へ溶けていくのだった。



 ★



 現在、オルカと見張りを交代し、部屋の入口とマップを交互に見つつ見張りをしている。

 二人には、時間を気にしすぎるなって言われちゃったけど、やっぱり話し相手がいないと気になるものだ。あと何時間見張っていればいいんだろう? って。

 オルカは眠る直前まで、やっぱり一緒に起きていようか? だなんて言っていたけど、半ば強引に寝かしつけてやった。抱っこしてよしよししてやればちょろいものさ。人のぬくもりに飢えているオルカの、仕方のない弱点なのだ。

 それは多分ココロちゃんにも言えることだろうね。今度試してみようかな?


 まぁそれはそれとして。

 現在私は見張り番を務めながらも、持て余した退屈を利用してスキル訓練を行っている。

 流石にダンジョン攻略中には、自重していたわけだけれど。しかし現在はその遅れを取り戻すべくフル稼働だ。

 ストレージの中身を無造作に取り出しては収納し、というのを繰り返しつつ、換装を可能な限り高速で回す。

 更には、何とか時計機能が実装されないかと思って、ステータスウィンドウも表示したり消したりをズバババババッと繰り返している。

 こんだけ色々やってるものだから、一人での見張りに暇を持て余すだなんてことは一切ない。

 寧ろ、二人が目を覚ますまでにはレベルを上げて、ビックリさせてやる! という気概で望んでいるほどだからね。


 っていうか、二人は一体何を基準に見張りを交代したのやら。私には結構ガッツリ睡眠が取れた感覚がある。多分バッチリ六時間は寝たんじゃないかな? オルカには起こされるまでもなく目が覚めたし。頭もスッキリしてる。

 お返しってわけでもないが、二人が自ら起き出してくるまでは寝かせておいてあげよう。

 勿論、何かトラブルがあれば話は別だけどね。


 そうしてそれから数時間後、ココロちゃんがコシコシと目をこすりながら、もったりと起き出してきた。

 フニャフニャでおはようごじゃいましゅと挨拶してくるココロちゃん。ダンジョン内とは思えないほどよく眠れたらしい。

 更にしばらくして、オルカも起きた。二人ともしっかり休めたようで何よりである。


 身支度を整えた後は朝食だ。内容はお察しの通りである。

 正直些かげんなりしてしまうが、しかしそんな気分を振り払うように、私は声を上げた。


「朝一番からあれだけど、二人が寝ている間にスキルレベルが上がりましたっ!」

「「ええっ!?」」


 頑張った甲斐があり、早速二人からどういうことかと問い詰められることに。

 私は彼女らのリアクションに満足して、ゆっくりと詳細を語り始めるのだった。

 あああ、投稿遅刻しました。申し訳ない!

 〇時の更新をチェックするのが日課なんだよ! ガッカリしたぞこら‼

 なんて方がいらっしゃったなら、ほんとごめんなさい。

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