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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第三四五話 観察と工作

 私が【魔弾】に乗せて撃ち放ったのは、別段攻撃性のある何かというわけではない。

 謂うなれば、ただ単に『非常に色の濃い魔力』である。

 例えばそれは食紅のようなもので、食したとき舌を染めてしまうような着色料の類がイメージに近いだろうか。

 これを魔弾に乗せて撃ち放つことで、奴がエネルギーを吸収し、如何に取り込むのかをより明確に分析出来るのではないかと考えたのだ。

 また、それが叶わないのなら、それはそれでいい。何故なら、奴は色の濃い魔力でも関係なく大雑把にエネルギーとして変換する機構を備えているのだ、という事が分かるからだ。


 放った弾は狙い過つはずもなく、適当に奴の実体無き巨体の一部へ吸い込まれ、そして瞬く間に吸収されていった。体を素通りしたりはしなかったらしい。

 このことから、もしかすると無属性魔法が有効な可能性も浮上してくるが、ダメージを与えられる見込みより、攻撃を吸収される恐れのほうが強いか。

 そして本題の色の濃い魔力に関してだが。

 どうやら奴に吸収される過程でその色は失われ、その他のエネルギーと一緒くたにされてしまったことが、魔力感知や叡視等のスキルにより観測できた。


 つまり奴は、他者の魔力をそのまま利用したりはせず、一旦自分用のエネルギーに変換して運用しているということだ。

 であれば次に気になるのは、変換の仕組みか。

 現段階でも多分、見様見真似程度なら再現可能だと思うのだけれど、それじゃぁ自分の技に落とし込んだことにはならない。もっとデータが欲しい所だ。


 というわけで、私は様々な属性の魔法を時折ちょっかいがてら撃ち込みつつ、イクシスさんやレラおばあちゃんによる超次元バトルの観戦を決め込むことにした。

 叡視をフル活用して、奴のエネルギー変換を解明し、我がものとするのだ。


『ええい、こういう手合は厄介だな! 攻撃がすり抜ける!』

『まぁまぁ、有効な手段を探すのも一興じゃないの。根気強く行きましょ』


 どんぱちと、二人からは凄まじい威力のスキルや魔法が厄災級アルラウネめがけて次々に繰り出されるが、しかしなかなか芳しい成果は得られないようで。

 物理攻撃は尽く素通りし、かと言って魔法の類は吸収されてしまう。

 イクシスさんたちは手を変え品を変え、何とか突破口を見出そうと、酷くやりづらそうにしながらも果敢な姿勢で立ち回っていた。

 対するアルラウネだが、当然ただ好きに撃たせているはずもなく。彼女らへ向けて苛烈な反撃を繰り返している。

 実体が無いため、物理的な攻撃こそ飛んではこないが、魔法による攻撃なら幾らでも飛んでくる。

 その内容も地魔法や水魔法、風魔法に火魔法となかなか多彩で強力なレパートリーを持っているようだ。


 ところで『魔法攻撃』だなんて言うけれど、考えてみたらその多くは『魔法によって生み出した物理的な攻撃』ってことになるんだよね。

 ならば『純粋な魔法攻撃』とは何かと言えば、魔力だけを駆使して相手に何らかのダメージを負わせるものの事を言うのだろうか。

 そういう魔法って、存外少ないように思う。

 そしてこのアルラウネには、そういうものほどスムーズに吸収してしまう傾向が見えている。きっとエネルギーに変換しやすいのだろう。

 例えば地魔法や水魔法のように、物質をぶつけて威力を出すタイプの魔法は、ともすれば吸収せず素通りすることも多い。

 しかし火や電気、光なんかは積極的に吸収しているように見えた。


 では逆に、奴が己の力として変換しにくいものとは何だろうか?

 と考え、私はエネルギーの種類と吸収の関係性に注目し観察を続けた。


 するとそこへ、オルカたちもこのアルラウネと似たような変貌を遂げたらしい花巨人と、今現在相対しているらしいことが通話を介し伝わってくる。

 あちらも苦戦を強いられているようだけれど、その中に良い情報があった。

 花巨人の変じたウィスプもどきには、どうやら植物魔法と聖魔法が有効だとのこと。

 これを受け、早速イクシスさんが反応を示す。


『植物魔法は、この死んでしまった大地では十全に力を発揮できないだろうな。だが聖魔法なら私の得意とする所だ。早速試してみよう』

『あらあら、ならお手伝いするわね』


 言うなり、正しく阿吽の如き呼吸にて二人の技が光った。

 アルラウネの振りまく引っ切り無しの魔法攻撃を掻い潜りながら、イクシスさんが話に出た聖魔法発動の機を窺い、いざ放とうとしたその時。

 彼女の前面に生じたるは、円を象った光の輪である。

 そうして放たれたのは、聖光を紡ぎ束ねた聖なる光の柱。

 俗っぽく言うなら、聖属性ビームである。

 イクシスさんの手より放たれたそれは、巨木の幹が如く逞しいものであったが、しかし。

 彼女の目前に生じたその輪を潜った途端、その規模は五倍近くにも増幅されアルラウネを焼きに掛かったのである。


「ひえっ、あの輪っかがおばあちゃんの補助?!」

『そうよぉ。【ブーストリング】っていうの』


 バフも然ることながら、味方の魔法をああやって強化する方法もあるのかと、内心ワクワクする私。

 それはそうと、驚いたことはもう一個ある。

 このレラおばあちゃん、まだ出会って間もないせいか、流石にステータスのPT欄に名前が追加されておらず、したがって通話等が使えない状態にあるのだ。

 しかし、このどんぱちうるさい中、自然と声を届けてくるし、こちらの声も拾ってくれる。

 音魔法のなせる業なのだけれど、驚くべき練度であった。何せ違和感がないのだ。

 通話のそれとも違うし、かと言って声を張っているわけでもない。すごく自然におばあちゃんの声が耳に入ってくるし、こちらの声も向こうに届いているらしい。

 味方に適切なバフを施す上で、レラおばあちゃんが情報を集めるのに用いる手段なのかも知れないが、これ一つ取ってもとんでもない実力者であることは明白であった。侮っていたつもりは全く無いのだけれど、どうやら見積もりが甘かったらしい。

 アルラウネの攻撃も、のらりくらりと無傷でふわふわ飛びながら避けてるし。とんでもない人である。


「ブーストリング、私も真似してみていい?」

『あらあら、それは勿論構わないけれど、難しいんじゃないかしら』


 そう言ったレラおばあちゃんの声は少し困ったような色を滲ませていて、私はふと彼女の方へ視線をやった。

 すると丁度、またブーストリングを発動するタイミングであり、それを見て私は納得を覚える。


「ああ、なるほど。固有魔法……いや、種族特有のものかな? 確かに覚えるのは大変そうだね」

『あらあらすごいわね、パッと見て分かるものなの? おばあちゃんビックリよ!』

『ミコトちゃんの得意分野だからな。まぁ、流石に戦闘中だ。この状況で新技の練習を始めるのは遠慮してくれよ?』

「わ、わかってるよ! 後でね!」


 なんて軽口を交わしながら、改めてアルラウネの様子に目をやる。

 聖光を受けたアルラウネは、確かにダメージを負って見えた。

 やはり相性の問題なのか、吸収はままならず、かと言って体を素通りさせることも出来ない様子だ。

 どうやら聖魔法は『純粋な魔法』に近いものであり、且つ奴がエネルギーに変換しづらい類のものでもあるらしい。

 そうなると、植物魔法がどうして効くのかという点が気になりはするが。

 恐らく奴がもともと入っていた肉体というのが、植物であることが関係しているとか、そういうことなんじゃないだろうか。

 何にせよイクシスさんの言うように、植物魔法を行使するには不利な環境である。ここは聖魔法でダメージを与え続けるべきだ。っていうかそれ以外の有効打が見つからない現状、それしか手が無いわけだが。


 とは言え、突破口を見つけたイクシスさんとレラおばあちゃんの攻勢は、凄まじい安定性を見せた。

 アルラウネより放たれるあらゆる攻撃を簡単にいなしてみせ、逆に彼女らからの攻撃は尽く痛痒を与えるものである。

 ただでさえ殺気を漲らせたアルラウネは、さらなる苛立ちを抱えて一層暴れ回った。

 ちなみにもはや私などは眼中に無いらしく、おかげで奴の背後で比較的安全にひょこひょこさせてもらっている。

 とは言え、キャラクター操作の影響で体は重く、正直魔法を駆使して無理やり動いているような状態なので、狙われづらいとは言っても気の抜けるようなものではなかった。

 だけどそうして危険を冒した甲斐もあり、大分『吸収』のやり方が分かってきた。


「そろそろ試してみるか……」


 実行に当たり、問題が一つ。

 アルラウネを見ていて分かる通り、奴が吸収を行うのは攻撃を受けてからのことである。

 しかし私はメチャクチャ打たれ弱いため、攻撃を貰うわけには行かないのだ。

 なら、どうやって吸収を行えばいいか。


 そこでヒントになるのが、草人形である。

 奴が冒険者を腕でぶっ刺し、ミイラのようにしてしまった惨たらしい光景は、今も目に焼き付いている。

 あれも要するに吸収だったのだろう。草人形はあの時確かに、冒険者から『何か』を吸い上げた。

 果たしてそれがHPだったのかMPだったのか、はたまた血などの水分だったのか。それは定かでこそ無いのだけれど。

 ともあれ攻撃を受けるのではなく、攻撃を仕掛けることで吸い上げを行ったのである。

 であればそれに倣い、私もぶっ刺せば良いだけの話ではないだろうか。

 まぁ流石に草人形のように腕を鋭く変形させることは出来ないけれど。いや、貫手くらいなら出来るかな?

 でもそれ以上に、【完全装着】のスキルにより私の装備しているアイテムは何れもが、文字通り私の体の一部として扱われるわけだ。

 ならば、武器でぶっ刺しても吸収は可能であるはず。

 しかしそのためにはやはり接近しないと拙いだろうか。キャラクター操作の反動で非常に動きの鈍くなっているこの体では、正直奴からの迎撃や反撃を回避しそびれる恐れもあり、出来れば何か別の方法に頼りたいところではあった。


 そこで短く思案した結果、私はとある手を思いつく。

 ストレージより取り出したるは、頼れる相棒である四本一組の剣、舞姫だ。

 舞姫には【飛翔】という特殊能力があるため、これを飛ばして奴にぶっさせば吸収が成り立つかも。

 ……いや、流石に私本体の手から離れた状態では、吸い上げは厳しいだろうか。

 せめて舞姫と私とを繋ぐワイヤー等があれば可能性はあるかも知れない。

 ってことで急ごしらえにはなるけれど、私はストレージより金属素材をポイポイ取り出すなり、さっさと工作を始めた。

 クラフトスキルは便利で、素材を思い描いた形にすぐ作り変えてくれる。まぁ、おもちゃ屋さんでの地道な修行があってこそなのだけれどね。

 そうしてこしらえたるは、細くて丈夫な四本のワイヤーだ。

 それらを舞姫それぞれの柄尻に取り付けたなら、準備完了である。


「さて、採血の時間だよ!」


 アルラウネは受けた攻撃から何を吸っているのか。

 草人形は冒険者の体から何を吸い出したのか。

 仮に『エネルギー』っていう漠然とした概念で捉えていたけれど、実は肝心要のその部分が、未だもって私にはいまいち掴みきれていなかったりする。

 魔力を吸っているのか、それともその素であるMPを吸っているのか。はたまたHPか。或いは別の何かなのか、若しくはそれら全てか。

 何にせよ、スキルシミュレーターの見せるイメージには、成功する様を捉えることが出来ているのだ。

 アルラウネが吸収をするのに使ったと思しきスキル。その際に生じた魔力のカタチを模倣し、既に舞姫にはそれを纏わせてある。

 舞姫はきっと奴から何かしらのエネルギーを吸い上げ、このワイヤーを通し私に届けてくれるはずだ。

 後はそれを上手く、私のMPないしHPに変換出来るかどうかというところ。

 さて、果たして試みは上手くいくのか。


 いざ、四本の舞姫を宙に解き放ち、アルラウネへ向けて飛翔させる。

 幸いイクシスさんたちが依然として正面でバチバチやりあってくれているおかげで、奴の注意が私に向くようなことはない。

 今のうちにレッツ実験である!

 ふぅ、よかった。誤字報告件数、前回より落ち着いて今日は7件だ……いや全然よくない! ごめんなさい!! そしてありがとうございます、めちゃくちゃ助かってます!

 あと、前回は話数の書き損じをやらかしておりました! ナンテコッタ!

 修正済みです。押忍!


 流石にこう、誤字報告について騒ぎすぎてしまっていますね。我が事ながら、ちょっと落ち着いたほうが良い。

 悪ノリに変わってしまう前に、誤字報告への感謝はもうちょっと落ち着いたものにしていこうと思います。あしからず!

 作者は出しゃばらず、淡々と作品だけ楽しんでいただけたならそれが一番だ、というのが私の心掛けているスタイルでありますからして、以降は寡黙な感じで行こうかと思います。あ、お礼は言わせていただきますけどね!


 ということで、カノエカノトはクールに去るぜ。

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