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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第三四四話 上手に吸収できるかな

 アルラウネだけではなく、思えば草人形からしてそうだった。

 奴らは冒険者に襲い掛かっては、その生命力だかなんだかを吸収し、自らの養分として食らっていたのだ。

 往々にして『吸収』っていう能力は強力なものだ。

 何せ敵は弱り、自らは回復ないし強化を受けるというのだから、ただ単に相手へダメージを与えるよりずっと大きな効果が期待できたりする。ゲーム方式如何によっては、戦況をひっくり返しかねないほどの強力なスキル足り得るのが『吸収』である。


 私は他者のスキルを真似て、再現するのが得意らしい。

 そして目の前にはそのお手本になり得る相手がいる。

 ただそのお手本は人にあらず。モンスター、しかも厄災級というのだから、正直見込みは薄いかも。

 それでも、レジェンド級の実力者二人の並び立つこの場で、私に出来ることってきっと殆ど無いのだよね。

 であるならばせめて、私じゃなきゃ出来なさそうなことにチャレンジしようじゃないかっていう、ある意味開き直りが如き精神が私の背をグイグイ押しているわけだ。


「あらあら、ミコトちゃんってば面白い子ねぇ」

「……レラおばあちゃん。多分、面白がっていられるのは今のうちだけだぞ」

「そうなの?」

「見ていれば分かる」


 着々と障壁開放へ向けての準備が整う中、そのような二人のやり取りが耳に届いたが、反対の耳からそっとリリースである。期待は重たいので聞こえなかったことにしておこう。

 努めて集中し、私は障壁向こうのアルラウネを叡視のスキルにて観察しながら、同時に考える。

 他者から魔力なり何なりを吸収するとして、必要なプロセスとは如何なるものかと。


 先ず受け皿だろうか。

 相手の攻撃ないし、保有するエネルギーを素材とするための器。或いはまな板……いや、『口』か?

 次に変換だ。多分これが一番の難題。

 果たして他者の持つエネルギーの類を、自身の魔力等として成り立たせることが出来るのか。その仕組みとは……。

 いや、そう言えばそんな武器を一つ持ってたっけ。黒太刀がそれに当たる。

 この黒太刀には、『敵に与えたダメージに応じ、振るい手のHPとMPを回復する』という効果がある。

 流石に一〇〇与えたダメージ中一〇〇を回復するというとんでも効率、とまでは行かないけれど。

 それでもヒントくらいにはなるだろう。


 それと、フィルターの用意も必要だろう。

 例えば敵からゴリゴリエネルギーを吸い取ったとして、しかしその中に自分にとっての毒になり得るものが混ざっていた場合、お腹を壊してしまうかも知れない。最悪死ぬかも。

 それを避けるためには、吸って良いエネルギーと吸っちゃダメなエネルギーの選り分けが出来るフィルターの存在が不可欠になるはず。

 更には、吸っちゃ拙いエネルギーすら、吸っても大丈夫なエネルギーに変換してくれるリサイクルシステムなんかもあると尚良いけど、まぁ欲は言うまい。


 後は、吸い取ったエネルギーを自分の体の内、どこに流し込むのかっていうのも問題だろうか。

 変な所に流しちゃうと、魔力のカタチに乱れが出ちゃうかもだし。魔力の流れなんかも大事だもん。

 なるべくそれらに影響の出ないように取り入れられるのなら、それに越したことはない。


 そうした問題点を論ってみた上で、お手本の観察を行う。

 お手本があれば、自分で一から考える必要がなくて助かる。また、問題点や疑問点を予め挙げておくことで、叡視による理解や再現も捗るというものだ。


 それらを踏まえた上で見てみると、先ず奴がエネルギーを取り込む過程に於ける始まりが、『吸飲』であることが分かる。文字通り、吸って飲んでるって感じだ。いや、寧ろ注射器のイメージが近いかな。

 吸引する過程で、変換やフィルタリングと言った工程が流れ作業的に行われているらしい。

 これは動物が物を喰らい、摂取する工程に近いだろうか。

 とどのつまり、正しく食事が如き流れで奴は他者からエネルギーを奪っていることが分かる。


 問題なのは果たして、私にそれを再現することが出来るのかということだけれど。

 一先ず手をつけるべきは、奴がそれらの作業をするために用いている魔力のカタチを真似るところにある。

 これに関しては随分手慣れたもので、目の前にお手本があるっていうのなら然程の苦労はない。

 魔力調律を駆使し、程なくしてその再現には成功した。

 これがもし普通の人間が操る術が対象だったなら、既にスキル習得が成り立っていても不思議ではないのだけれど。

 しかしやはり流石は人外の業。どうやら通常の人では習得できない『特殊な魔力』に由来したスキルであることは間違いないみたいだ。

 要は、手動で再現しなくちゃいけない、面倒くさいパターンのやつってことだ。

 だがそんなことはやる前から予想できていたこと。今更慌ても面食らいもしない。


「ストローをぶっ刺して……吸いながら管の中で変換と選り分けを……うん……なんか分かってきたかも……」


 要領としては段々掴めてきた。まだ実践段階を踏めていないため、机上の空論的ではあるけど。

 後は吸収したエネルギーをどんな風に自らに取り込むかという問題だ。

 奴の場合はそれ専用の貯蔵タンクみたいな器官があるらしく、そこにエネルギーを貯蓄して体に流しているって感じらしい。吸収をすることが前提と言わんばかりの身体構造である。

 流石の私も肉体の改造まではちょっと出来そうにないからね。どうにか仮想器官でも作れたら良いのだけれど。


「いや……無いなら作ればいいのか……」


 言うなり私はストレージから適当に魔力の通りが良い素材を見繕って取り出し、具合の良さげな形へとクラフトスキルで加工しながら、併せてコマンドを付与し始めた。

 そうして出来たのが、『外付け器官』である。変換したエネルギーを貯蓄しておくためのパーツだ。

 形状は邪魔にならないアクセサリー型を採用。今回はチョーカーにしてある。装備の一つと交換し、直ぐにそれを身に着ければ、体の構造的な問題は多分解決できたはずである。問題があれば都度修正だ。


「えっと……イクシスちゃん。ミコトちゃんってばあれ、何をやってるのかしら……?」

「わからん。私にはさっぱり分からん。訊かないでくれ」


 そうして諸々の調整を行えば、後は実践で試して手を加えていくだけだ。

 思いの外テキパキと整った準備に、我ながら手際の良いことだと満足を覚えながら、イクシスさんの方へ面を向けた。


「こっちの準備はできたよ。何時でも障壁解除どうぞ!」

「お、おぅ……こちらも大丈夫だ。レラおばあちゃんもいいか?」

「ええ、勿論よ」


 そうこうして、その時は訪れたのである。

 一つ軽めの深呼吸を行ったイクシスさんは、キリッとした表情で障壁へ向けて手をかざした。

 そして。


「カウント三つで障壁を解除する。三……二……」

「…………」

「…………」

「一……今っ!」


 刹那。瞬いたのは閃光だった。

 イクシスさんの構えた手の先より、ほんの一瞬迸ったのは紫を帯びた歪な光。

 即ち、雷であった。

 よく実写映画であるような、バリバリとした照射系のそれではなく、近いのはリアルのそれである。

 ぱっと眩い光を放ち、そしてぱっと消える。残滓はただ、イクシスさんの手元に幾分かの小さなスパークが、トカゲのようにチロチロと纏わり付くのみ。

 そこに伴うであろう、大気を叩き割ったかのような轟音はしかし、イクシスさん当人が予め遮音魔法で対策を打っていたのだろう。私たちの鼓膜を攻撃することもなく、ただ魔法による破壊が成ったという結果だけがそこには残ったのである。


 そして、肝心のその成果はと言えば。


「ちぃっ……!」


 どうやら意味を成せはしなかったらしい。

 ばかりか、その一部を奴に食われる始末。

 そんなイクシスさんの視線の先。障壁内部より、爆発の余波とともに派手な登場を見せたのは、これまで以上に大きな変貌を遂げた厄災級の姿だった。


 それはもはや原型すら留めていない、歪なる光の怪物。

 全身を緑がかった光で構成した、体高五メートルにも及ぶ実体の無いエネルギーの塊だ。

 上半身は人の形を取り、そのシルエットからは女性らしさも見て取れた。

 対して下半身は下方へ向いて咲いた花のようであり、さながらスカートのようでもあった。

 そんな奴はふわりと宙を漂っており、優美さすら見て取れる有り様でありながら、こちらを睥睨し睨みつけるその殺気はどこまでも濃密で。

 ここまでに受けた恨みつらみを煮詰めたような、悍ましいほどの敵意でもって相対したのである。


 イクシスさんより迸った稲妻は奴の体を貫通した。

 しかしそれは貫いたと言うより、素通りのそれである。ばかりか、自らの中を通り抜けた膨大なエネルギーを、食いちぎりつまみ食いまでしてみせる始末。しかも、瞬き一つにも及ばない一瞬の内にである。

 そんなイクシスさんの攻撃からワンテンポ遅れ、続くように放たれたるはレラおばあちゃんによる魔法だった。

 奴を取り囲むように生じた三つの光球は、漂うでもなく静かに宙空へ佇み、かと思えばそこから厖大な熱量を孕む巨大な火炎を放射し奴へ浴びせ掛けたのだ。

 何であれ植物モンスターには火。そんな原点回帰的な一撃はしかし、これまた奴にダメージを及ぼすでもなく。

 むしろ今回もエネルギーを吸収されるだけという結果に終わってしまう。

 流石なのは、その兆候を見るなり即座に火炎放射を取り下げたレラおばあちゃんの判断力だろうか。

 これにより、必要以上に奴へ力を与えることこそ避けられたものの、想像以上に厄介な事態が訪れたことは疑いようもなく。

 イクシスさんもレラおばあちゃんも、苦い顔で奴を睨みつけたのである。

 対する変質したアルラウネには、忌々しいことに愉悦の感情が芽生えたらしく。

 何ならその口元に笑みのようなものさえ浮かべ、二人を見下ろしたのであった。


 そんな中、私はと言えば。


「なるほどなるほど……」


 奴の早業を前に、感心を通り過ぎて感嘆の意すら覚えていた。

 あの一瞬でエネルギーの吸い上げから変換までを行ってみせる、その超常的な手腕は見事という他ない。

 エネルギーの変換効率も凄まじいの一言に尽きる。


「なら、『異物』はどうかな?」


 私はとある術を無属性魔法の【魔弾】に仕込み、興味津々で奴へと放ったのだった。

 不謹慎と知りつつ、ちょっとだけ楽しくなってきた私はイケナイ子か。はたまたマッドなサイエンティストの気でもあるのか。

 何にせよ、最終ラウンドのスタートである。

 痛い痛い痛い、心臓が痛い! 誤字報告件数、驚異の31件!!

 もはや自分に呆れて笑ってしまいました……ホントに、読みづらい書き損じを繰り返してしまい、申し訳ない。

 穴があったら入りたい……いや、穴を掘って入りたい!


 だいぶボコボコにされておりますが、無論感謝しております!

 で、ですが、その、あの、別にそこまで気合い入れて見つけてくださらずとも大丈夫っていうか……ああいや、大丈夫じゃないですね。

 皆様から寄せられた誤字報告は、いつかもしかしたら現れるかも知れない新規読者さんの命を救うかも知れません。

 だってほら、「昨日読んだあの小説の、あそこの誤字が気になって寝不足なんだよね……」って言ってうっかり事故か何かに遭っちゃう人がいないとも限らないじゃないですか!

 それを救って下さる皆様は、本当にありがたい存在だということです。

 拝んでおこう。ありがたや~(PCモニターに手を合わせながら)


 あ、皆様におかれましては、「誤字なんていつものことだし、気にするほどのことじゃないべ」ってな感じで、どうか寝不足になど悩まされませんよう十分お気をつけくださいまし!

 それでも気になるのであれば、どうぞご報告ください。多分翌日には修正を適応させていただいておりますゆえ。

(場合によっては遅れるかも知れませんけど、その際はどうかご容赦ください)


 っと、変なテンションになって、つい長くなってしまいましたね。

 そんなわけで、今日も誤字報告ありがとうございました。

 確認し、納得したものはすべからく適応させていただいておりますゆえ、ご安心ください。

 また何か発見がありましたら、ど、どうかご一報のほどを、よろしくおねがいします(ビクビク)。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヒトならざる技を使いすぎて人じゃなくなるんですね [一言] 「なら、『異物』はどうかな?」  読者はとある誤字を無属性魔法の【誤字報告】に仕込み、興味津々で奴へと放ったのだった。…
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