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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第三四三話 火の玉の脅威

 花巨人にまたも起きた異変。

 それは、発火した体からその炎だけが抜け出し、浮遊するという不可思議な現象だった。

 炎は最初、これと言った変哲もないオレンジ色をしていたのだけれど、しかしその色は徐に変化し、火の根は怪しい緑色をたたえていた。

 大きさはゆらりと三メートル超も燃え上がるものであり、見るからにただの火の玉だなどとはこの場の誰一人として思わなかった。

 代わりに、誰もがその様を見てとあるモンスターの姿を思い浮かべていた。


「ウィスプに似てる……」


 オルカがボソリとそう呟けば、通話向こうからも同意の声が複数返ってきた。

 ただし、ウィスプにしてはずいぶん大きくもあるし、何よりその発生の仕方というのが如何にも異様ではあったけれど。


 ウィスプとは平たく言うなら、火の玉型のモンスターである。

 火の大きさは五〇センチにも満たない場合が多く、魔法を得意としている。

 火の色でおおよそ種類が分けられており、また得意な魔法の属性も色で見分けがつくという、ある意味正直者のモンスターだ。


 それに照らし合わせて考えると、奴の炎は根本が緑色で、先へ行くにつれて徐々にオレンジがかっていくようなグラデーションをしている。

 緑ということは風、或いは植物系統の魔法を用いる可能性が考えられるが、そも奴がウィスプであるという確証もなく。

 ともあれ、花巨人から出てきたあれが無害であると考える者は居なかった。


『気持ちの悪い炎パワ』

『とりあえず水でもぶっかけてみる?』

『リリエラちゃんはそればっかりだね』

『うっさいわね!』

『だが反応を見る意味でも、試して損はないと思うぞ』

『今度は加減をしてくださいね』

『わ、わかってるわよっ』


 ザバーン。

 また遠くの方で戦場を津波が走り、ウィスプっぽい何かを数体巻き込んでいった。っていうか何なら先程より大規模である。

 オルカはそれを、自身もウィスプもどきへ黒苦無を投擲しながら横目に眺めた。

 通話内では皆から総ツッコミが入る。


『リリエラ、あなた加減の仕方を忘れてしまったの?』

『良い暴れっぷりぱわ!』

『ココロは知ってますよ。テンドンっていうオヤクソクですね!』

『とりあえずMP回復薬飲みなよリリエラちゃん』

『こんな調子じゃ同士討ちが怖いなー。巻き込まれないように気をつけようっと』

『ぐぬぅぅ、好き勝手言って! ミコトが悪いのよ! あのバカ仮面のせいで感覚が狂ってるだけなんだから!!』

『分かる。分かるぞ』

『まぁ、しばらくしたら落ち着きますよ』


 なんてガヤガヤしたやり取りを聞き流しながら、案の定苦無の素通りしてしまったウィスプもどきを眺めるオルカ。

 一先ずその結果を報告する。


「私も攻撃を仕掛けてみた。でも物理攻撃はやっぱり素通りするみたい」

『こっちは……やっぱりダメね。消えてないわ』

『水を浴びても消えない炎、ですか』

『物理も水もダメなら、どう倒せば良いんだ?! 魔法か!?』

『クラウ様、その水も魔法で出したものですよ』

『何か有効な属性があると思うんだけどね』

『なら手当り次第だね。使える属性の多いリリエラちゃんの出番だよ!』

『回復薬でお腹がチャプチャプだわ……』


 今の所ウィスプもどきに動きはないけれど、これが何らかの脅威を示した時倒し方が分からないというのでは拙いどころの話じゃない。

 文句を言いながらも、早速行動に移ったらしいリリエリリエラ。

 彼方で天変地異が起こる様を横目に、オルカはオルカで自分に出来ることを考えた。


 物理攻撃も効かず、水をかけても意味がない。

 有効な属性魔法があるとしても、もしそれが自身に使えない属性だったなら結局別の対策が必要になるわけだ。

 何か奴に対抗できる手段はないだろうか。最悪倒せずとも封じられるような何かがあればと、仮面の下で眉をしかめるオルカ。

 すると視線の先で、とうとう動きを見せ始めたウィスプもどきたち。

 奴らはフラフラと徐に戦場を徘徊し始めた。かと思えば、どうやらその行動は何かを求めてのものだったらしく。

 オルカの視線の先を漂うそれは、早々に目的の何かを見つけたようで、急に速度を上げ一直線にそこへと吸い込まれていったのである。


 奴らが求めたもの。それは。


『おい、まさか……』

『嘘でしょ……こいつら、人間の死体に入っていってるわよ!?』

『いえ、どうやら生きた人間でも関係なく取り憑くようです!』

『た、立ちました……倒れてた人が、立ち上がりました!』

『操られている、ということでしょうね……』

『死者を冒涜するとは、許せんやつパワ!』

「警戒して。直接触れるのは危険」

『魔法はどうだったの? 有効な属性は?』

『し、植物魔法は有効だったわ。それに聖魔法ね!』


 リリエラの報告に、メンバーの内数名が眉を顰めた。

 何せそれらの属性魔法は、火や水、風や地と言ったものに比べて使い手が限られるのだ。

 聖属性は聖職者が持っていることが多く、植物に関しては地魔法に高い適性を持つ者に発現しやすいというのが通説だ。

 幸い彼女らの中には、聖か植物の何れかを持つ者が多くあり、これを駆使してウィスプもどきへの対応に当たることとなった。


「私はどちらの属性も持っていない。だから、操られている人の対処を優先する」

『気持ちのいい役割ではないけどね、仕方ないか』

『の、乗り移られないように気をつけないと!』

『他の冒険者さんたちへの情報伝達も重要ですね。積極的に呼びかけていきましょう』


 そういった具合に、早速各々が自らの役割を全うしに掛かった。

 オルカのように、有効属性を持たない面々は努めてウィスプもどきに乗っ取られ暴れまわる憑依者たちを拘束しに動き、有効属性を持つ者らはウィスプもどき本体の対応に当たった。

 戦場で冒険者を見かけたなら、手短に有効な属性と憑依の危険性を伝え、彼らにも協力を仰ぎつつ立ち回ったのである。


 一方でウィスプもどき側はと言えば、ただ憑依を行い暴れ回るというだけでなく、爆裂魔法や植物魔法を駆使して早くも被害を拡大させに掛かっていた。

 特に爆裂魔法は強力で、たとえ小規模なものだとしても避けづらく威力の大きいそれは、各所で冒険者たちを苦しめていく。

 また、憑依された者の身体能力は、肉体のリミッターを無視し過度に高められ。さながら悪性の強制バフが如しである。

 対して冒険者たちもまた、未だ祝福の魔女による広域バフの恩恵を受けており、奇しくもバフ同士のぶつかり合いのような構図と相成った。


 今や戦場に植物はなく、死した大地の上では人と人とが相対し、緑の火の玉が虎視眈々とした体で漂う。

 正しく混迷を極めたような、現実離れした光景であった。



 ★



 爆発の影響を封じ込めるために張った隔離障壁。

 それがよもや、卵の殻のような役割を果たしてしまったのは何の偶然か、はたまた奴の機転によるものか。

 何れにせよ障壁内部で、何か得体の知れない変化を遂げたらしい厄災級アルラウネ。

 それは今、本来無敵とも思える隔離障壁を、内側から破壊して出てこようとしている。

 そも隔離障壁は一般的な障壁とは仕組みからして異なるものだ。魔力を固めただけの壁ではなく、次元のズレ、のようなものを利用して連続した空間に隔たりを設けることで生成されるものであるからして、通常の物理攻撃ないし魔法攻撃が作用できるようなものではない筈なのだ。

 が、イクシスさんたちの必殺技然り、奴の自爆然り、常軌を逸した威力を誇るスキル等はそんな隔離障壁を破ってしまうらしい。

 このことから、今隔離障壁内部に居る変質したアルラウネが、どれだけの脅威度を誇るか見当もつこうというものである。


「まだ未成熟かも知れん。こちらから打って出よう!」

「大丈夫なのかしら。爆発を封じ込めてあるのよね?」

「いや、既にその手応えはほぼ失われている。今あるのは内側から障壁を殴りつけられているような感覚が主だな。……ミコトちゃん、【叡視】で何か分からないか?」

「うーん、ぐちゃぐちゃしてて何が何やら……あ、いやでも、何かがエネルギーを取り込んで形を作ろうとしてる感じはあるね」

「イクシスちゃんたちの必殺技は、アルラウネの餌になっちゃったということかしら?」

「ぐぬぬ、なんてやつだ……ともかく、まだ不完全であるということは間違いないようだな。ならば攻撃準備だ! 障壁をこちらから解いて、一気に方を付けてやる!」

「大丈夫なの? また吸収されたりしない?」

「ぐぬぅ……それでも、試してみる他ないだろう。手をこまねいていても奴が育ちきってしまうだけだ」

「そうね。ダメ元でもやってみるしか無いみたいね」


 話はまとまり、そうと決まれば速やかに準備がなされた。

 イクシスさんはまたハイパーモードっぽい、不思議な姿になった上で強力な技の発動体制を整えたし、レラおばあちゃんはそんなイクシスさん個人へ一層強力なバフを重ねた。

 するとどうだ、ただでさえ絶対超人のようなイクシスさんが、いよいよ人間の範疇を軽く超えるようなインフレウーマンと化してしまったではないか。

 彼の魔王討伐戦に於いても、きっとこれこそがイクシスさんの本領だったのだろう。

 そう思えば、なるほど。厄災級とはいえ不完全だったアルラウネを仕留めきれず、結果ここまで戦いが長引いてしまったのも頷ける。

 それだけバフの力は絶大だという、何よりの裏付けであるとも言えた。

 私も、この戦いが終わったらバフの習得と修練に努めてみるのも良いかも知れない。


 と、そうして二人がさっさと準備を整える中、私はと言えば場違いなほどレベルが一人だけ低いわけで。

 それでもなにか出来ることはないだろうかと考えを巡らせ、そして一つの閃きを得たのである。


「私にも出来ないかな、必殺技を食べて自分の力にするっていうやつ……」


 思いつくなり、早速叡視を駆使して隔離障壁内の奴を観察しにかかる私。

 イクシスさんがすごい目でこっちを見ているが、無視である。

 斯くして、即席ながら十全な準備のもと、その時は訪れたのだった。


 イクシスさん自らの手により、罅割れた隔離障壁が今、解除されたのだ。

 か、顔から火が出てしまう……今日も誤字報告ありがとうございます。

 過去の自分をひっぱたいてやりたいほど、見落としミスが多すぎますね……ダブルチェック大事。

 そしてこんな凡ミスだらけの作品を、未だ見限らず読んでくださってる皆様にも感謝を!

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