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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第二八二話 説明と交渉

 所変わってイクシス邸小会議室。

 驚き覚めやらぬと言った具合のリリとアグネムちゃん。しかしながらやはりと言うか当然と言うか、ワープですよ! 勇者ですよ! なんて言われて信じちゃうほど馬鹿正直でもない彼女たち。

 そんな二人に、どうにか嘘ではないことを分かってもらうべくあれこれと手を尽くし、ようやっと信じる気になった二人へ私に関するあれこれの、ざっと大まかな部分……ワープや心眼やストレージなんていう変なスキルを持ってるんですよ、って情報と、それが広く知られては確実に厄介で面倒な話がやって来るから、極力秘密にして活動しているということを説明したところ、どうにかこうにか納得を得ることが出来た。

 た、大変だった。


 そうして現在。時刻はイクシス邸へやって来てからなんやかんやで二時間近くが過ぎ、午後四時頃。

 小会議室にて、リリがプリプリと怒っていた。


「つまりあんたは、そんなとんでもない能力を隠したまんま私と戦ってたってこと!? バカじゃないの!? っていうか、何でそれで虚絶ちを倒せるのよ!?」

「か、勝ち上がってこいって言ったのはリリじゃん」

「~~~~っ!!」


 明かされた事実に頭と感情が追いついていないのか、もはやわけも分からず癇癪を起こすリリ。

 他方でアグネムちゃんの方は、絶句したまま未だに反応がない。

 ともあれ、私が隠しているスキルと、それを隠している理由について理解してもらえたことは間違いないようだ。

 そんな彼女を横目にしながら、リリを宥めつつ話を更に進めていく。


「とまぁそういうわけで、リリには協力をお願いしたいんだけど」

「……協力って、要はつまりその【キャラクター操作】っていうスキルを掛けたいってことよね? 変な副作用とか無いでしょうね?」

「え。無いと思うけど、言われてみたらちゃんと調べたことなかったね」

「ちょっと!!」


 キャラクター操作は、とてつもなく強力なスキルだ。何せそれは私が仲間の一人に融合して、私の装備込みのステータス値をまるっと融合相手の能力に上乗せし、その体を借りて暴れるっていう謎スキルである。

 一見チートのようにすら見えるこのスキルには、しかし強力なその反面、使用に際して制限時間もあるし、使用後はものすごく消耗するっていう反動もある。

 でも、それ以外の目に見えない副作用の有無については、考えてみたら詳しく調べたことがなかった。と言うより、どう調べていいかすらよく分からないと言うべきか。

 それ故そんな副作用なんて無いよ、だなんて言えないというのが正直なところだ。

 ちらりとソフィアさんの様子を窺えば、すごい目でこっちをガン見していた。どうやら彼女も気になっていたらしい。


 と、ここで。

 スッと綺麗な挙手を見せたのは、誰あろうアグネムちゃんだった。


「リリエラちゃんが嫌なら、私が立候補します! 寧ろ是非体験させてください!!」

「んなっ!?」

「お。アグネムちゃんか……うん。悪くないかも」

「な、なんでよぉ!?」


 リリたちには、流石に世界線がどうとかいう話まではしていない。聞かれたら説明はするつもりだが、聞かれてもいないのに未確定の情報を共有するのもどうかと思ったためだ。

 そのため彼女たちに求めるのは、単純にスキルを受けてもらうと言うだけのこと。

 副作用について指摘されたのは、確かに私の想定が至らなかった点だ。

 本来ならその点を検証の上、改めて協力をお願いするというのが筋だろう。

 しかしそんなリスクを物ともせず、協力を請け負ってくれると手を上げてくれたのがアグネムちゃんである。


 確かに平行世界の私がいるとするなら、リリとPTを組んで冒険していたかも知れない、とは思った。

 しかし考えてみたら、リリと一緒ということはそれ即ち、アグネムちゃんや他の面々と一緒だった可能性もあるわけで。

 だとするなら、リリではなくアグネムちゃんにお願いするのでも問題は無いという事になるのではないだろうか?

 そう思うと、わざわざリリに頼む理由が無くなってしまった。


「よし、じゃぁアグネムちゃんにお願いしようかな」

「だから何でなのよ! 私でしょ? 私に協力を依頼したくてここに連れてきたんでしょ!?」

「え。でもだって、副作用が恐いって」

「べ、別に恐いわけじゃないし!」

「嫌々協力してもらうのも申し訳ないし」

「べべ別に嫌がってないでしょ!!」

「リリエラちゃん、面倒くさいです」

「うっさい!」


 どうやら、ツンデレムーブが上手く行かずイライラしている模様。

 先程からプリプリしているリリも、しかし一応協力してくれるつもりはあるようだ。

 深く狭い心眼を用いたなら、リリの本音を知ることも可能なのだけれど、流石にそれはプライバシーの侵害も甚だしいため、どうしても必要な場面でしか使わないよう心がけている。

 そのため今分かるのは、リリの大まかな感情や意識といった、ある程度ふわっとした内心でしか無い。

 なのでリリが結局どうしたいのかとか、どんな着地点を望んでいるのか、なんていうのは想像することしか出来ないのだけれど、彼女が私と親交を深めたがっているというのは分かっている。

 それを踏まえて考えるに、副作用だとか言い出したのは要するにツンデレの『ツン』だったのだろう。

 その上でデレようとしたところを、アグネムちゃんに掻っ攫われたと。そういうことなんじゃないだろうか。

 だとするなら。


「それじゃ、リリも協力してくれるの?」

「! ま、まぁ? あんたがどうしてもっていうのなら? 条件付きで受けてあげなくもないっていうか?」

「私なら無条件ですよミコト様!」

「あ、あんたは黙ってなさい!」

「それで、条件って?」

「それは勿論、決闘で私に勝つことよ! もしあんたが私に勝てたなら、そのなんだかよく分からないスキルだろうとなんだろうと、好きなだけ掛けると良いわ!」


 ムフー! と、鼻息も荒くそう宣言した彼女。どうやらこれが言いたかったらしい。

 しかしそうなると気がかりもある。


「じゃぁ、私が負けたら?」

「む。そうね……一度だけ、私をそのワープスキルで指定した場所まで運ぶっていうのはどう? あ、往復でよ!」

「え、あ、うん。それでいいなら私は全然構わないけど。どの道決闘はしないとダメなんだよね?」

「当然よ! それを条件に、話を聞くっていう約束だったでしょ!」


 意外だ。負けた場合もっととんでもない要求とか突きつけられるかと思っていたのだけれど、そういうつもりは無いようで。

 たった一度だけ、彼女を指定の場所へ送り迎えする。それだけでいいのなら、別に普通に言ってくれたら叶えてあげられるんだけどな。

 まぁ何にせよ、そういうことであれば決闘もやぶさかではない。

 相変わらず人とやり合うというのは苦手だけど、闘技大会を経験したことで対人戦への忌避感もそれなりに緩和されてきたと思う。それが良いことなのかは分からないけれど。

 ともあれ、約束は約束だ。

 勝てばリリの協力が得られるし、負けてもアグネムちゃんが協力してくれる。

 隠していた能力も、次こそは大体使って問題がないというのなら、試合の時ほど一方的に恐い目を見ることにもならないだろう。最悪逃げるし。


「よし、わかった。それじゃいつやるの? これから?」

「ば、ばか! これからやったんじゃ、私たちの帰りが遅いってクリスたちに心配されたり怪しまれたりするでしょうが!」

「あ。それは確かに」

「ミコト様が『出来ればリリエラちゃんだけに話したい』、と言っていたのにも納得がいきました。想像を遥かに超える能力……やっぱり私の目に狂いはありませんでした!」

「あはは、ありがと」

「絶対口外はしません! 約束します!!」

「私もまぁ、言わないわよ。その代わり決闘はちゃんと全力を出してもらうから! 明日! 明日やるわよ!」


 斯くして、リリとの決闘を条件に協力を取り付けることには成功した。

 ただ、闘技大会総合部門にて優勝を果たしたリリに、私の本気がどれだけ通用するかは未知数なのだけれど。

 それも明日になれば分かることだろう。


 話し合いの後、それこそ彼女の仲間である聖女さんとクオさんに怪しまれては面倒だからと、早々にリリたちをバトリオまで送り返した。

 部屋には聖女さんたちが戻っているかも知れないからと、わざわざ人目を避けてのワープである。

 そうして「明日の準備、しっかりしておきなさいよ! 今度こそコテンパンにしてやるんだから!」と息巻いて、脇腹にアグネムちゃんの頭突きを受けるリリと別れ、イクシス邸へ帰還。

 今日は気を使って、あまり言葉を挟まず見守ってくれた皆に礼を言いながら、明日の決闘に向けた作戦会議へと移行したのだった。



 ★



 そうしてあれよあれよと翌日。

 時刻は午前一〇時。場所はいつぞやイクシスさんと戦った、荒野である。

 朝食を済ませた後、リリとアグネムちゃんを迎えにバトリオへ飛んだ私は、二人を連れて一旦イクシス邸へ戻り、仲間たちも引き連れ決闘の場となる荒野の只中へと転移。今に至る。


 半ば呆れとも困惑ともつかぬ表情を浮かべたリリは、本当に現実離れしたスキルだと感想を漏らしたけれど、私からしたらスキル全般どころかステータスからしてゲームめいた謎システムなのだ。今更ワープの一つや二つがそこまで珍しいことだとは思わない。

 そんなリリとは違い、アグネムちゃんはと言えば。


「ミコト様、MPの方は大丈夫なのでしょうか!? 私たちを連れての転移なんて、さぞ膨大な消耗があるのでは?!」

「あ、そうよ! 消耗しきった状態のあんたとやりあっても意味がないんだから! 負けた後からMP不足で全力が出せませんでした、なんて言い訳は聞かないわよ!」

「ああはいはい、今回復するよ」


 最近は装備も以前に比べてかなり良いものを身に着けているし、何より奥魔の指輪の効果でMPには結構な余裕がある。自動回復効果もあるしね。

 しかし取り急ぎMP補給を行いたい時は、やはり裏技を用いるに限る。

 早速私は換装にて、MP補正が全く無い、仮面すらしていない最低限の装備に着替えると、ストレージから取り出したMP回復薬を一口服用。

 ギュンと力が戻ったことを自覚し、また換装にて元の装備に着替えた。

 すると、それを目の当たりにしたリリとアグネムちゃんは。


「「え……あ……」」

「? なに、二人して固まってどうかした?」

「ミコト、今仮面取ったから」

「ミコト様のご尊顔は、常人には刺激が強すぎるのです」

「すごい顔をしているからな」

「いえ。ミコトさんは脱いでもすごいんですよ!」

「この件も久々だなぁ」


 二人が我に返るまで、暫しの時を要したのだった。

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