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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第二三四話 エントリー

 光学迷彩の魔法を用いて姿を隠し、おもちゃ屋さんの前へとワープで飛んだ私たち。

 おもちゃ屋さん付近は子供以外近づかぬような、特殊な力場になっているのだと以前師匠たちが語っていた。マンガなんかでよくある、人除けの結界みたいなものだろう。

 なので、人目を避けてワープするのにおもちゃ屋さんの近くというのはうってつけであると言えた。

 場所は住宅街の入り組んだ路地の奥。普段であれば、たとえこの辺りの住人だろうと近づかないような奥まったところにある空き地である。

 私とソフィアさん以外には見えないおもちゃ屋さんを眺めてみれば、幾らか子供の姿があった。

 どうやら今日は開店しているらしい。そう言えば昨日の師匠たち、やけに忙しそうにしていたっけ。

 久々にアルカルドから離れての営業だから、気合が入っているのかも知れない。


「こんな奥まった場所に子どもたち……なるほど。あそこにおもちゃ屋さんとやらがあるのだな?」

「うーん、さっぱり見えませんね」

「私たちは大人ってこと。ちょっぴり複雑な気分」


 なんて些か黄昏れるオルカたちを促し、その場を離れることに。子供に見られていては、光学迷彩を解けないからね。

 少し歩けば人目はきれいに無くなり、すかさず魔法を解除する。

 すると、ようやくみんなの姿が確認できた。光学迷彩発動中は、たとえ仲間同士でも位置がわからないというのがネックではある。

 まぁ、声や物音は聞こえるわけだし、マップには普通に映るので、うっかり見失うようなことにはならないのだけれど。

 しかし実戦に用いるとすると、少し工夫が必要なのもまた事実である。総じて、なかなかに興味深いマジックアーツだ。

 それはそれとして、皆の姿を確かめたところで、改めて今後の予定を確認する。


「それじゃぁこの後は、私とクラウで闘技祭のエントリーへ。ソフィアさんたちはギルドの方へってことでいいんだよね?」

「問題ない」

「ミコト様、知らない人に声をかけられても、ついていってはいけませんからね!」

「クラウさん、ミコトさんをちゃんと見ててください。決してはぐれないように」

「ああ、心得ているとも。何なら手でも繋いでおくか? ロープのほうが良いか?」

「ひ、人のことを何だと……」


 心配されているのか、それともバカにされているのか。

 ともあれ住宅街を抜けるまでは一緒に歩き、そこから二手に分かれた私たち。

 オルカたちは最後まで心配そうにこちらを度々振り返っていたけれど、流石に心配し過ぎである。

 だがまぁ、彼女たちがそう不安がるのも分からないではない。

 というのも、とにかく多いのだ。人が。

 確か闘技祭のメインとなる大会は、予選の開始すら数日先だったはず。

 しかし街の至るところで、既に小さな催し物がチラホラと行われており、実質的なお祭り期間は既に始まっている模様である。

 試しにマップを見ようものなら、おびただしいほどの人を示す光点が通りをウゾウゾと流れており、一種異様なほどであった。

 万が一こんな中で心眼だなんだというスキルが露呈しようものなら、人混みに紛れて人さらいに遭うことも考えられるわけで。

 それどころか、もしも既に何処かでそれら特殊なスキルの情報が外部に漏れていたとしたら、こういう機会に乗じて……なんてことも考えられる。

 なので、オルカたちは過保護だなー、だなんて油断せず、私自身ちゃんと気を引き締めておく必要があるのかも知れない。

 まぁ、杞憂に終わるとは思うんだけどね。


 オルカたちと別れて歩くこと暫し。遠くに望むは巨大な円形の闘技場だ。あれこそが闘技祭のメインステージであるコロシアムだかコロッセオだかっていう戦いの舞台なのだろう。

 受付もあそこで行われているらしいという情報を、以前この大会に参加した経験があるというイクシスさんに聞き、時に人混みをかき分け、時に流れに乗りながらドンブラコドンブラコと向かっているわけだが。

 一体全体何故にここまで人が集まっているのやら。

 やっぱりアレだろうか。デジタル文化のないこの世界に於いて、こうした催し物を自らの目で見るということが最大級の娯楽足り得るのだろうか。

 そういう意味では、ネット全盛だった生前の世界でも、やれオリンピックだワールドカップだというのには世界中から人が集まったものだ。

 テレビ中継の存在しない世界なればこそ、その盛り上がりも一入であるということなのかも知れない。

 でも、これだけの人が集まるためには当然、他の市町村からやって来たという人も大勢いるのだろう。

 もしかするとこの都を訪れるための大規模なツアーでも組まれていたりするんだろうか? こう、護衛を沢山雇っての大行進みたいな。

 そう言えばここへ飛んでくる道すがら、それらしいものを見た気もする。

 だとしたら、準備段階からしてさぞ大変なお祭りということになる。

 でもまぁ見た感じ、それで赤字になるようなことは無さそうだけれど。何せこの盛況具合だからね。

 そんなにみんな、人が戦うところが見たいのだろうか。恐ろしい話である。

 やっぱり人間って、闘争を求める種族なのかも知れないな。


 なんて考え事をしていたら、まんまとクラウとはぐれてしまった。

 幸いマップですぐに互いの位置は把握できたし、合流も容易かったのだけれど、いよいよ冗談抜きで手を繋いで闘技場受付を目指すことになった。

 流石にちょっと恥ずかしいです。



 ★



「はい、出場の受付を完了しました。予選は本日より一週間後となります。もし参加されなかった場合不戦敗として脱落になりますので、ご注意ください。それでは次の方ー」


 というわけで、予選までまだ一週間もあるためか、思ったほど混雑していなかった大会受付にてエントリーを済ませた私とクラウ。

 尚、私たちはそれぞれ異なる部門に出場することとなった。

 クラウはマジックアーツを用いない、武術部門への出場である。

 そして私はと言えば、魔法専門の魔術部門……ではなく。

 スキルアーツもマジックアーツも何でもござれという、総合部門への出場となった。

 当然これには名うての冒険者や、相当に腕に覚えのある強者が出てくるはずである。


 であるからして、はじめコレに出たいと言ったのは当然クラウだった。

 そして私は魔術部門に出るつもりであったのだ。

 ところが、朝の会議においてゴリゴリに縛りを設けられた結果、流石に一流の魔法使いたちと縛りを設けた状態でぶつかるのは勝ち目が薄い以前に、普通に危険であるという話になった。

 であれば、まだ近接戦も駆使することの出来る総合部門のほうが勝ち目があるだろうということで、私が出場するのは魔術部門ではなく総合部門に決まったわけだ。

 するとクラウは、万が一私とぶつかるようなことがあっては嫌だから、という理由で総合部門を諦め、代わりに武術部門へのエントリーを決めたのだった。

 でもまぁ、ソロ時代はそれなりに使用していたという魔法も、私たちと組むようになってからは随分その頻度も落ち、その分剣と盾を用いた近接戦闘術に磨きがかかったと当人は語る。

 だからこそ、寧ろ武術部門のほうが力試しには相応しいかも知れないと前向きなことを言ったクラウ。

 幸いだったのは、その言葉が強がりではなく、本心からのものだと心眼で読めたことだ。

 なればこそ、私も心置きなく総合部門に臨めるというもの。


 それぞれの窓口で受付を終えた私とクラウは、マップを頼りに合流を果たすと、一先ず闘技場前広場をぐるりと見回し、赤髪の女性はいないかとざっくり探してみた。

 闘技場の方では連日、何かしらのイベントが行われているらしく、それを目的に来た見物客というのも多くあり、こうしてざっと見ただけでも冒険者とは思えない身なりの人も多く認められた。

 それにここにも当然人がわんさかといるため、髪が赤い人なんてちょこちょこと見かけるのである。

 中には帯剣していて、もしやと思われる人もいたのだけれど、例の写真や映像に映っている女性と見比べてみれば別人であると分かった。


「ふむ……特徴に該当する者はそれなりにいるようだが、当人は見つからないか」

「まぁ、まだ予選すら始まってないしね。無理もないよ」


 そもそもが、件のレッカさんとやらが写真の人物であるという確証もないのだから、今のうちから落胆していても仕方のないことである。

 当たるも八卦、当たらぬも八卦……とはちょっと違うけど、うまく見つかったなら儲けものくらいに捉えておくほうが良いだろう。


「さて、エントリーも無事に済んだことだし、これからどうしようか」

「む、そうだな……赤髪探しも良いのだが、大会に向けて鍛錬なぞ積んでおきたいところではあるな」

「それもそうだね。私なんてこれでもかっていうくらい制限を設けられちゃってるからね、慣れておかないとろくに動けないまま敗退しちゃいそうだよ」


 そのように意見は一致したのだけれど、しかしここで問題が一つ。

 それは、どこでその鍛錬を行えば良いのかというものだった。


「とりあえず、ギルドで討伐系の依頼かダンジョンを紹介してもらうのが良いかな?」

「そうだな。いくら闘技の都とは言え、街中で得物を振るうわけにも行かないだろう」


 というわけで、ならばと早速オルカたちの方へ通話を飛ばしてみることに。

 わざわざ私たちがギルドへ向かうより、彼女たちに依頼なりダンジョンなりを探してもらったほうが早く済むとの考えからである。

 と、私からのコールに早速反応があった。


『ミコト、大丈夫? 迷子になってない?』

『どうしました!? 事件ですか!? 誘拐ですか!?』

『今すぐ合流しましょう! ミコトさん(のスキル)を脅かす者は、全員即刻首チョンパです!』

「だ、大丈夫だから落ち着いて」


 特にソフィアさんは、手も触れずにそれが出来るから恐ろしい。

 慌ててどうにか彼女たちを落ち着かせると、クラウとともに状況の説明を行い、ギルドでの用事を頼んだ。

 のだが。


『それが……思った以上にギルドが混んでて、こっちは例の人探しすら滞ってる状況』

『現地で宿泊費を稼ぐ算段の冒険者さんや、大会が始まるまで暇だから依頼でもこなそうという方たちが多いようです』

『考えることは皆同じ、というわけですね』

「う。確かに、それはそうか……まぁそうなるよね」

「むぅ、しかし参ったな。これでは満足に鍛錬が出来そうにないぞ。やはり捜索に専念するべきか?」


 腕に覚えのある人が、大会に出るべくこの都に集まっている。

 なればこそ、大会に向けての期間何をして待っているかと言えば、確かに観光を楽しむ者もあるだろう。

 けれどやはり、少しでも腕を磨いておこうと依頼やダンジョンに臨む者も多いはずだ。現に私もクラウもその考えに至ったのだから。

 しかしだからこそ、現在冒険者ギルドはパンクした状態にあるのだという。

 ソフィアさん曰く、受付カウンターは地獄絵図だとのこと。それはもう、げんなりとした声が通話越しに聞こえてきた。ついこの間まで受付嬢をしていた彼女だからこそ、ギルドで戦うスタッフたちに感情移入してしまったのだろう。


 こんな有様で依頼を受けてみたところで、きっと碌な鍛錬にはならないだろう。

 依頼なんて多分、ほぼ残ってないだろうし、ダンジョンにも人が殺到してそうだ。

 ならば人探しに専念するべきかとクラウは言うけれど、この盛況ぶりでは骨が折れる一方で成果が上がるとも思えない。

 何とも窮屈な有様である。であるならば、私たちだからこそ取れる選択肢を取るべきだろう。


「よし、一回帰ろうか」

「だな。というか、私にいい考えがある」

『いい考え?』

「まぁそれは、一度屋敷に帰ってからのお楽しみというやつだ。一先ず何処かで合流しようじゃないか」


 ニヤリとほくそ笑む彼女の言に従い、私たちは合流場所を適当に決めるなり早速行動に移るのだった。

 果たして、クラウの言ういい考えとはなんなのだろう? もしかしてアレか? 私にいい考えがある! っていうフラグめいた何かだったりしないだろうか?

 期待半分、不安半分で私はクラウに手を引かれ、再度人の波をかき分け進んだのだった。

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