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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第二二一話 考察会

 突如生じた化け物との激戦は、ソフィアさんの協力もあってどうにか勝利を収めることが出来た。

 ただ、それは奴が仲間もなく、単独であったからに他ならない。

 もしもプレイアブルだとかキャラクター操作だなんてスキルを用いられていたなら、正直私に勝ち目はなかっただろう。

 確かに不死性という能力が際立って厄介だったのは間違いないのだけれど、そうでなくともプレイヤーというジョブ由来のそれらは敵に回すとこんなにも恐ろしいスキルだったのだなと、今更ながらに思い知った。

 その点、ソフィアさんなんかには嬉しい体験だったかも知れないが、如何せん疑問を多く残したままの決着となってしまったこともあり、彼女も浮かない表情をしていた。


 私たちは現在、誰に憚るでもなく話せる場所ということでイクシス邸にお邪魔し、応接間にて背の低いテーブルを囲い、ソファに腰を下ろしているところだった。

 早速とばかりにココロちゃんが私の隣を陣取ると、戦闘で負って雑に治した怪我を本格治癒してくれている。

 流石に切り飛ばされた指に関しては、私も変なくっつけ方をしていないか不安だったため、しっかり診てもらう。

 彼女の再生術は見事なもので、実際微妙に角度を間違えてくっつけていた指が、何と術の行使に従い自然と元の形へ整えられていったのである。

 もしもココロちゃんがいなかったら、今後一生私は自分の手にコンプレックスを抱えて生きていくことになっていたのかも知れない。

 そう考えると、改めて彼女の存在を有り難く思った。

 そうして程なく、治療は無事に完了。

 それを見届けるなり、早速イクシスさんが口を開いた。


「さて、それでは此度の件について詳しい話を聞かせてほしいのだけれど。ミコトちゃん、ソフィア殿、構わないだろうか?」


 今回、結局オルカたちは後半戦に参加することが叶わず、イクシスさんに至っては化け物の姿を目の当たりにすることさえ出来なかった。

 そんな彼女たちにしてみれば、さぞ消化不良であろう。せめて情報は共有してほしいという思いを心眼が読み取る。

 疲労困憊の私を気遣ってか、イクシスさんの声に答えたのはソフィアさんだった。

 彼女は現場で見て体験したことの全てを、なるべく詳しく皆へ語って聞かせた。

 途中、そこへ私からも補足を入れていき、仮面の化け物戦の全容はなるべく細かな説明でもって、皆と共有されたのである。


 すると、先ずはそれを聞いたイクシスさんが、溜め息とともに肩を落としてみせる。

 どうやら凹んでいるようだ。


「すまない、みんな。私勇者なのに、今回ほぼ何も出来なかった……」

「い、いやいや! イクシスさんが時間を稼いでくれたからこそ、光明が見えたんだし。感謝してるよ!」

「それでいうと我々も、ミコトを無為にマルチプレイで消耗させただけかも知れないな……」

「親子揃って凹まないでよ!」


 イクシスさんに続きクラウまで、今回戦力になれなかったことを気にしているらしい。

 確かに仮面の化け物を倒すために必要だったのは、私が奴を斬り、切り落とした部分を光に変えて我が身に吸収するというビックリするような攻略方法だったわけで。

 それを思えばマルチプレイ状態であのままやり合い続けても、きっと時間切れでスキルが強制解除され、重すぎる反動で全員が行動不能。

 逃げたところで奴もまたワープを持っていたことから、転移先にまで追いかけてきた可能性も否定できず、最悪の場合全滅だってあり得たわけだ。

 それが分かっていればこその、クラウの凹みようである。

 そしてそれはオルカやココロちゃんも同様であった。


「不甲斐ない……」

「申し訳ないです、ミコト様……」

「えぇぇ、みんなめっちゃ落ち込むじゃん……」


 部屋の中にどんよりとした空気が漂い、困惑する私。

 他方でソフィアさんはと言えば、さっさと話題を切り替えてしまおうというのか、平常運転と言った調子で口を開いた。


「今回はあまりに状況が特殊でしたから、気にしたところで仕方ありませんよ。それより、結局の所あの化け物は何だったのか未だに判然としない事こそが問題です」

「そ、そうそう。みんなには知恵を貸してほしいな!」


 そう話を振れば、確かにそれもそうかと皆気を持ち直し、情報の整理から始める運びとなった。


「最初はただの、砕けた仮面の欠片だったのですよね? それも、ミコト様とソフィアさんにしか認識できないという」

「その時点から不可解。二人の共通点と言ったら、やっぱりあの写真が怪しいけど」

「ということは、件の写真に映っていた赤髪の剣士と青髪の吟遊詩人にも、あの怪物は見えたということだろうか?」

「では、その二人ならば何か知っていると思うかい?」

「どうかなぁ。ソフィアさんに覚えがないっていうんだから、その二人も似たようなものじゃないかなって気はするけど」

「ともあれ、一度接触してみるべきかも知れませんね。ギルドで情報を集めておきます」


 仮面の化け物には、私とソフィアさん以外には見ることも、触れることすら出来なかった。

 そして私とソフィアさんはともに、不可解な一枚の写真に写り込んでいたという共通点がある。

 いや、と言うか。


「私とソフィアさんの共通点っていうことは、つまり例の写真に映っていたのはやっぱり私だったってことになるのかな?」

「あ。確かに、顔が確認できないから断言はできない」

「ですけど、状況的にそう見るべきかも知れません」

「覚えのない写真、か。ミコト、参考までに現物を見せてもらえるか?」


 クラウに言われ、私は早速アルバムのウィンドウを呼び出し、例の写真を探した。

 何度もチェックしたものであるため、どこに区分けされているかも把握済みであるし、何ならお気に入りはピックアップして新規アルバムにコピーを保存することも可能である。無駄にハイテクだ。

 ここまで来ると、いよいよ「スキルとは……」なんてつぶやきながら遠い目をしたくなるものだけれど、今更気にしたところで仕方がない。

 手際よく件の写真画像を見つけ出した私は、早速それを表示しようとした、のだけれど。

 その一枚を探す過程で、何だか見慣れない画像や映像が追加されていることに気が付き、思わずキョトン顔を晒してしまった。仮面してるけど。

 しかし仮面の上からでも私の機微を察知するのが、彼女たちである。


「ミコト、どうかした?」

「な、何か異変でもありましたかミコト様!」

「もしや例の写真が消失した、とかか?」

「ああいや、そうじゃなくて。むしろ逆っていうか……」

「逆と言うと、増えたということですか?」


 ソフィアさんの声に、私はこくこくと頷きで返す。

 すると皆にも驚きと戸惑いが伝播し、とりあえず見せてほしいと言われるがまま、目についたものから順に共有化していく。

 覚えのない写真や映像記録を新規アルバムにまとめて、それごと皆に共有化したため、膨大なアーカイブの中から覚えのないそれらを見つけては、共有化アルバムにアップするという作業を続ける私と、アップされたものを片っ端からチェックする皆という流れ作業が急遽出来上がった。

 そして、問題はそれらの写真や映像の中身なのだけれど。


「何、これ……ミコトが、ソフィアたちと冒険してる記録?」

「私には、このような覚えはありませんが……」

「見たところ、一日二日の記録ではないな。何ヶ月も共に活動をしているようではないか」

「しかも見てください! このミコト様、近接戦を好んで行ってるみたいです。赤髪の剣士さんと、すごく息の合った連携ですよ……ぐぬぬ、なんて羨ましい」


 流石に膨大なアーカイブを全て洗い直すことは断念したけれど、それにしても結構な数の記録が見つかった。

 そこには例の白い仮面を愛用している私が、ソフィアさんや赤髪の剣士、青髪の吟遊詩人と一緒に冒険者活動をしている記録が残っていたのだ。

 やはり、『別の私』というのは実在する、或いはしたらしい。

 それと今の私との関連性は不明なれど、ぞわりと背筋が寒くなるのを感じた。怪談を聞いたときのような心持ちである。

 記録の数は確かに多かったけれど、私自身の記録に比べたらずっと少なく、そこから得られる情報も結構日付の飛んだ記録ばかりだった。

 それからしばらく、一通りそれらを精査し終え、ふとイクシスさんが神妙な面持ちで言う。


「わけがわからないな」


 皆の総意であった。

 何故にこんなものが存在しているのか。

 仮面の化け物はコレとどう関係しているのか。

 別の私とは何者なのか。

 もしかして他にも存在しているのか。

 そしてそも、私とは何なのか。

 何もかもがさっぱり分からず、頭を掻きむしりたくなるような謎ばかりが転がっている状況である。


「多分この記録って、私が例の化け物を倒して、白い光を取り込んだから現れたんだと思う。つまり、あいつの記憶……って可能性があるかも」

「だとすると……あの化け物こそが、別のミコトだった?」

「そ、そんなの変です! 何をどうしたらミコト様があんなふうになるっていうんですか!」

「ミコトさんなら、何かしらのスキルでやりかねませんね……」

「まぁ、そうだな。だが、奴の保有するスキルの中に、化け物へ変貌を遂げさせるようなものは存在しなかったように思うが?」

「となると、別の要因か……? むぅ……ミコトちゃん、他に気づいたことはなかったか?」


 イクシスさんにそう問われ、私は既に伝えたそれを再度話題に挙げる。


「『ダレニ アエタノ』って言葉が、まるで通話の時みたいな感じで頭に響いたんだけど……これって何かのヒントにならないかな?」

「『誰に会えたの』……どういう意味でしょう?」

「或いは、『ダレ』という人物に会えたのか、と問う言葉かもしれないぞ?」

「問いとも限らない。『ダレ』に『会えたのよ』って意味かも」


 と言った具合に、これもまた結局これといったそれらしい意見が出ることもなく。

 またもや謎を一個増やすだけとなってしまった。

 皆が難しい顔で考え込む中、私はそう言えばと、仮面の化け物を取り込んだことで変なバッドステータスや呪いなんかがついてやしないだろうかと確認がてら、自身のステータスを検める。

 そこで、見つけてしまったのだ。

 驚きに固まる私を、例によって目ざとく見つけたオルカが小さく首を傾げ、どうかしたかと問うて来る。

 そんな彼女に私は一言「ちょ、ちょっと見てて」とだけ告げると、そのスキルを発動してみた。


 瞬間、私の視界は別の角度からオルカを始め、皆を捉えていた。

 そう、短距離転移……つまりは【テレポート】である。

 突如別の場所へ出現した私をいち早く見つけたのは、流石というべきかイクシスさんだった。

 それに続いて皆が、目を丸くして私を捉える。

 そんな彼女らへ、私はありのままの事実を述べた。


「な、なんか……あの仮面が持ってたスキル、私が引き継いだみたい……?」


 ここに来て、一番の驚きが場を包むのだった。

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