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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第二〇三話 当人のいないところで

 鏡の試練をクリアしてから、あれよあれよと一ヶ月ほどが経過した。

 その間の出来事を大まかに論うとすれば、先ずイクシスさんの推薦で私も冒険者ランクが上がった。オルカと同じBランクだ。

 流石にこれには周囲の注目を集めてしまったけれど、クラウが挑むような強敵と戦うのに、Cランクのままというんじゃ進入制限等に引っかかってPT活動の幅を狭めてしまう。

 そのため、多少無理矢理ではあったけれど昇級させてもらうことにしたわけだ。

 ちなみに、冒険者になってまだ一年にも満たないのにBランクにまで上がるというのは異例なことのようで。

 なんというか肩身が狭いったら無い。何かとヒソヒソ噂をされるようになってしまったので、最近では気配を隠して行動することが多くなってしまったほどだ。

 でも、そうだね。改めて客観的に見ると、この街では確かな実力者として名の知れたオルカに始まり、Aランク冒険者である野良シスターことココロちゃんと、同じくAランクの女騎士クラウを擁する新進気鋭のPT、鏡花水月のリーダー……あー……うん。話題性は十分である。

 しかも、世界的に有名な大英雄、勇者イクシスと懇意にしているというんだから、目立たないはずがない。

 目立ちたくないなんて言いながら、何やってるんだ私……。まぁでも、友達を肩書で選ぶような奴にはなりたくないからね。

 仲良くなった相手が、たまたますごい人達たちだったのだから仕方がない。


 それから他には、ようやっと魔道具作りの方も進展があった。

 ロボのクオリティが十分なレベルを超えたということで、どうにか半人前認定をもらえたのだ。

 度々オルカたちには試遊という形で協力してもらって、意見を聞いたりもした。

 やっぱり他者にヒントを求めるって大事なんだなと、よくよく思い知ったものだ。

 次は一人前を目指して、新たな課題に取り組んでいるのだけれど、それについてはまた追々。


 あと、オレ姉に頼んでいる専用武器に関しては、まだ時間がかかりそうだ。

 というのも、集めてきた素材に対して自分の腕が釣り合っていないと嘆いたオレ姉は、急遽店を休業して修行に出てしまったのだ。

 その意気込みや見事とイクシスさんは称賛していたけれど、果たして完成はいつになることやら。

 まぁ、気長に待っているとしよう。


 とまぁ、大まかにはそんなところだろうか。

 それ以外は、日々依頼を受けたりダンジョンに潜ったりと、なかなかコンスタントに活動している。

 おかげさまで懐もすっかり暖かくなり、なかなか充実した日々を送っている。

 が、依然として継続している私のルーツに関する手掛かり探しは難航しており、お手上げ状態だ。

 イクシスさんによる調査も芳しくないとのこと。

 この件については定期的に調査会議を設けており、様々な観点から調べを進めてはその結果を報告し合ったり、今後の方針なんかを話し合ったりしているけれど、どうにも決め手に欠けている。

 直近では『ミコト当人ではなく、ミコトを転生させたと思しき神様について調べてみよう』というアプローチで調査が進んでいる。

 しかしながらこの世界には多くの神様が祀られており、その中から私を転生させたと思しき一柱を特定し、その上で更に調べを進めなくてはならないというのだから、なかなか骨が折れそうである。


 そんな具合に、良くも悪くもぼちぼちと活動は続いていた。



 ★



「今日もお疲れ様ー」

「「「おつかれ(さまです)ー」」」


 宿の食堂でテーブルを囲い、木製のコップを軽くぶつけ合う。乾杯である。

 ちなみに例によってこの世界、明確に法律で定められているわけではないけれど、飲酒は一五、六歳からというのが一般的であり、オルカやクラウなんかは普通に飲める年齢だったりする。

 それとココロちゃん。そう言えば実年齢は、なんとこの中の誰より上だったという衝撃の事実がサラリと判明しており、彼女も実のところ飲酒に関しては問題ない。

 なお、詳しい年齢についてははぐらかされてしまった。

 その容姿に関しては、幼くして鬼の力が芽生えた影響で、肉体成長が停滞してしまっているのだろうというのが当人の談である。


 と、そういうわけで、お酒が飲めないのは依然〇歳ネタが有効な私くらいのものだ。

 が、実際のところお酒を嗜もうという者は、うちのPTに一人も居ない。

 というのも、もともとは皆ソロ冒険者として活動していたことから、酔うということに強い警戒心を持っているためだ。

 ただでさえみんな、すれ違った人が思わず振り返ってしまうほどの美人さんである。

 そんな女性冒険者が仲間も連れず、一人酩酊状態でフラフラしていたとあっては、まぁ碌な事にならないだろう。

 それを分かっていればこそ、皆お酒というものには一種の禁忌じみた価値観を有しているわけだ。

 なので、コップの中身はいつもどおりの果実水。

 ジュースに慣れ親しんだ私なんかは、転生当初この薄味になかなか馴染めず、日本を懐かしんだものだ。

 今となってはこれが当たり前であると、随分順応できたと自負している。


「いやぁ、今回のモンスターもなかなか手強かったな!」


 私がコップの中身に思いを馳せていると、クラウが早速今日の戦闘について振り返り、感想を述べ始めた。


「鳥のくせにあの頑丈さはズルいよな。まさか刃が通らないなど、思いもしなかった」

「でも、空中戦楽しそうにしてた」

「いきなり飛びたいなんて言い始めた時は、びっくりしちゃいましたよ」

「だがミコトなら叶えてくれると思ったんだ。実際出来ちゃったしな」

「まぁ、それくらいならもう慣れたものだよ」


 今日戦ったモンスターは、巨大な怪鳥だった。堅くて速くてデカいという、何ともおっかない奴だったけれど、だからこそクラウにとっては良い経験になったようで何よりである。

 最近では当たり前のようにAランク依頼を斡旋してもらっているが、成功率は今の所一〇割と失敗知らずである。

 まぁ、もともとAランクとして活動していた冒険者が二人もいるのだから、おかしな話でもない。加えて私達のチームワークがあれば、大抵の依頼は問題なくこなせるはずだ。

 とは言え最近の戦法は、新たに設定した戦術プランE。即ち、クラウを主体として立ち回る作戦だ。

 それというのも、彼女に良質な戦闘経験値を得てもらうためのフォーメーションであり、その内容も彼女が正面からやり合い、他のメンバーはこぞってサポートに回るというシンプルなものとなっている。

 バトルジャンキーの気があるクラウはこれに大はしゃぎし、毎度楽しそうに大暴れする。

 時折それに感化されたココロちゃんやオルカが攻撃に加わって、即興のコンビネーション技を披露する様はなかなかに見応えがある。

 実際今日の戦闘でも、オルカとクラウの見事な連携でもって怪鳥を仕留めるに至ったわけだ。


「やはりバシッとコンビネーション技が決まるというのは、気持ちがいいよな。未だに感触が手に残っているぞ」

「わかる」

「むー。今回ココロは出遅れちゃいました」

「課題としては、デバフかな。硬い相手を柔らかく出来たらいいよね」


 などなど、一頻り感想や課題、伸ばしていきたい長所などについて語り合った。

 冒険者として活動を始めてから、もう半年以上が経つ……経ったっけ? だいたい半年くらいか。

 季節は夏も過ぎ去り、秋の気配を感じる頃だ。

 いつの間にかこういう、冒険者然とした話題にも気後れしなくなったものである。

 ワイワイと盛り上がっていたテーブルに、ふと差し込んだ切れ間。

 話が一つ落ち着いたところで、不意に私は相談を持ちかけることにした。


「ところでさ。みんなは活動拠点についてどう考えてる?」


 私の言わんとしていることを素早く察し、オルカが問い返して来る。


「それは、別の街に移るかどうかっていう話?」

「移るっていうか、もっと色んな場所をめぐりたいなって思ってさ」

「ミコト様のルーツを調べるため、ですね?」

「そうだね。あと、純粋にもっといろんな景色が見たいっていう好奇心もある」

「良いな。私としてもまだ見ぬ強敵と戦えそうで心躍る話だ」


 真っ先に乗り気を示したのはクラウだった。

 彼女にしてみたら確かに、近場で狩りを続けるより、世界を巡って強敵を探したほうが良い経験にはなるだろう。超越者に至るにはその方が都合が良いはずである。

 次いでオルカとココロちゃんも、賛成の意を示した。


「ミコトが行くなら、当然私も付いて行く」

「ミコト様あるところココロあり、です!」

「ありがと。でも、かと言って戻ろうと思えば一瞬で戻れちゃうんだけどね。私の場合、魔道具作りの修行も継続していくわけだし」


 魔道具作りの修行に関しては、どうしたってモチャコたちのいるおもちゃ屋さんに赴いて、指導を受けながら学ぶのが一番である。

 そう言えばおもちゃ屋さんは、アルカルドの空き地を神出鬼没さながらに動き回っているようだけれど、ひょっとしたら他の街や村なんかにも移動したりするんだろうか?

 だとしたらいよいよ、アルカルドに居残る必要性も薄れるというものだけど。


「でもそうなると、いよいよソフィアが黙っていない」

「ソフィアさんのことですから、何が何でもPT入りを押し通してきますよ」

「実力は確からしいが、どうしたものだろうな」


 話は転じて、ソフィアさんの鏡花水月加入に関する話題へと移行した。

 アルカルドを出て活動するとなれば、十中八九……いや、間違いなく彼女が騒ぐだろう。

 最悪の場合、サラッと書類を捏造してでも鏡花水月のメンバーに名を連ねてきかねない。あの人ならやるという確信めいた予感がある。

 ならば、実際問題ソフィアさんをPTに加えたとして、上手くやっていけるだろうかということだが。


「これまでも何度か一緒に行動しているし、加入自体はそう悪い話じゃないかも」

「ミコト様をお嫁さん扱いするだなんて、不敬にもほどがありますが、悪い人ではないと思います」

「私も特に反対ではないな。とは言え一度、腹を割って話をしたいところではあるが」


 と、反対意見は特に出なかった。

 だけど考えてみたら、ソフィアさんって意外に謎が多いんだよね。

 ワイバーン複数体を瞬殺するほどの力を持っていることもそうだし、プライベートなことはスキル愛好家ってことくらいしか知らないし。

 そう言えば一度彼女の家に行ったことがあったっけ。

 でも、それでソフィアさんの何が分かったわけでもなし。


「そうだね。折を見て一度、しっかり話をしてみよう。加入を認めるかはそれから改めて考えるってことで」


 というわけで、近日中にソフィアさんの面接が催されることが急遽決まったのだった。

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