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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第二〇一話 新スキル試用

 大鏡より無事に帰還を果たしたオルカたち四人。

 オルカのスキルに関してはいち早く調べ終えているため、現在はココロちゃんとクラウの新たなスキルを話の種とし、昼食をいただきながら盛り上がっているところだ。


「ココロちゃんの得た新しいスキルは、【鬼呼転身】っていうらしいよ。鬼を呼んで、転身する……もしかして変身系のスキルかな?」

「なるほど……ちょっと納得です」


 そう頷いたココロちゃんは、しかし試練の内容について多くを語ることはなかった。

 多分、鬼にまつわる何かを体験してきたのだと思う。

 心眼を通してみた時、何やら無茶をやらかしてそれをひた隠しにしようとしている気配を感じたのだ。心配をかけないように、との配慮なのだろうけれど、とりあえず一言だけ彼女には釘を差しておかねば。


「ココロちゃん、なにか抱え込んだりはしてないんだよね?」

「あぅ、その……はい。ちょっぴりもう一人の自分とやんちゃな特訓をしてきただけです。禍根を残すようなことにはなっていませんので、問題はないです!」

「その割に服は綺麗にしているようだが?」

「う……服がボロボロになると、無茶をした事がバレて叱られると思ったので……裸で頑張ってきました」

「「「「…………」」」」


 なんというか、隠蔽工作がシンプル過ぎるというか、結局喋っちゃってると言うか……うん。まぁ、ココロちゃんらしいと言えばらしいのだけれど。

 それはつまり、相当にエグいことをやらかしたと言っているようなものじゃないか。

 私たちは一様にため息をつき、一言ずつお小言を言ったのだった。

 が、それに対してココロちゃんは。


「クラウ様にだけは言われたくありません」

「うぐっ!」


 見事なカウンターブローである。

 水の向いたクラウは途端に目を泳がせ、言い訳を始めた。


「だだ、だって仕方ないだろう!? 私自身と剣を交えられる機会などこれを逃せばあり得ないことなんだ! そんなの、心ゆくまで切り結ぶ他ないじゃないか!」

「まさか聖剣でやり合ったの!?」

「当然だ! ギリギリの戦いにこそ、良質な経験が詰まっているものだからな。今回の件はきっと99を突破するのに良い肥やしとなったことだろう!」

「怪我は?」

「転恵の盾があるからな、問題なく治せた。が、装備はそうも行かなくてな……」


 というわけで、こちらも相当に無茶な試練を越えてきたらしい。

 そしてその結果だが。


「それでミコト、私のスキルはどうなんだ?」

「うん……頑張った甲斐があったね。クラウが覚えたのは――【灼輝の剣】だよ」

「「!!」」


 瞬間、ガタリと立ち上がったのはクラウと、ついでにソフィアさんだった。

 ココロちゃんのスキルを耳にしたときも目をギラギラさせていた彼女だったけど、今回ばかりはいよいよ辛抱たまらなかったらしい。

 何故なら灼輝の剣とは、クラウの母、勇者イクシスさんが得意とする必殺級のスキルと同じものだからだ。

 当然、当の本人であるクラウのリアクションはソフィアさんにも勝るそれで、勢いで立ち上がったまではいいものの、そこで目を見開いたまま硬直してしまっている。

 かと思えば、スチャッとその場で聖剣を抜き放ち、発動しようとするではないか。

 皆大慌てでそれを制止し、どうにかクラウを正気に引き戻した。

 流石に食卓でそんなものを試用されては、たまったものではない。

 我に返ったクラウは、未だ動揺だか感動だか判別のつきにくい内心のまま、一先ず皆にヘコヘコと謝った。


「す、すまない。つい動転してしまって……というか今もまだ、驚き覚めやらぬままなのだが」

「無理もありません。灼輝の剣といえば、勇者イクシスを代表する必殺スキルです。ユニークの類いと目されていたそれが発現するとは、遺伝の為せる業でしょうか。羨ましい限りです」


 すかさずソフィアさんの解説が入り、一同はクラウの心情を大まかに察することが出来た。

 世界中の誰より勇者イクシスを尊敬し、敬愛しているのは他でもない、愛娘であるクラウその人を措いて他にないだろう。

 もしかすると熱狂的なイクシスさんのファンが異を唱えてくるかも知れないけれど、誰より彼女のことを近くで見てきたクラウは、イクシスさんの良い面も悪い面も、勇者の顔も母親としての顔もよく知っている。その上で、彼女に憧れているのだ。

 そんな憧れの母を語る上で切っても切り離せないような、代表的な必殺技。それこそが、灼輝の剣というスキルなのである。

 それを自らが手にした。『特別』という存在に強い憧れを抱くクラウにとって、これほど嬉しいことはないはずだ。

 かつて目指した『二代目勇者』という肩書きも、このスキルを得たことで現実味が湧いたほどだ。

 クラウはそれらの事実に大いに狼狽え、その後は心ここにあらずといった状態で食事を続けた。


 そんな彼女を横目にしながら、いよいよ最後。ソフィアさんの新しいスキルについてだが。


「私の新スキルは、私自身が自ら解き明かしたいので内緒にしておいてください!」


 とのこと。

 そのため今回もソフィアさんのステータスは見ないまま終わった。

 口ぶりから察するに、勝手にチェックしても別に構わないけど、スキルの内容をバラすのはやめてくれと。そういうニュアンスだ。

 だけどPTメンバーでもないソフィアさんのステータスを覗き見るのなんて、あまり気の進むことではない。

 気にならないと言えば確かに嘘になるけれど、またの機会があればその時でいいと思った。

 それにどうせソフィアさんのことだから、引っ張る割に大したことがないとか、そういうオチなんじゃないだろうか。何せ私たちも着実にへんてこな軍団と化してきているからね。

 ニンジャに鬼に女騎士と、なかなかバラエティに富んでいる。それらを前にしては、生半可な個性じゃ霞んで見えてしまうというものさ。


 というわけで、ソフィアさんのスキルは不明のまま話も一段落つき、食事の方もちょうど皆の食器が空になった頃合いだ。

 手分けをして後片付けを始めた私たちは、程なくしてそれも終わり。

 さてどうしようかという、この後のことについての軽い話し合いへ転じたのである。

 そこでふと、オルカが問うてくる。


「ところでミコト。結局ミコトの正体に関する情報はなにか見つかったの?」


 皆の視線がこちらを向く中、私は気持ち肩を落として首を横に振った。

 すると落胆が伝播するように、皆も同じく肩を落とす。


「それは……残念でしたね。この場所を勧めた立場として、申し訳ないです」

「ああいえ、ソフィアさんは悪くないですよ。寧ろ冒険者としては大きな収穫を得ているわけですし」

「ですよね! どれもこれも素晴らしいスキルばかりです。特にミコトさんに至っては何ですか、四つも同時に得るだなんて反則です!」

「あ、やっぱりもうちょっとしおらしくしていてください」


 フォローした途端、直前の態度が嘘だったかのようにスキルの話をし始めるソフィアさん。

 私たちは慣れた調子でそれを聞き流しながら、午後の予定について話を進めた。

 つまりは、攻略を続行するか、それともすぐに街へ戻るかという話だ。

 当初の予定ではここで引き返すつもりだったけれど、折角新たなスキルを得たこともあり、皆試してみたいという気持ちが強いようで。

 ならばと、少しだけ実戦で新スキルを試してから帰ることとなったのである。



 ★



 鏡のダンジョン第一〇階層。

 出現するモンスターはなかなかの強敵揃いであり、Bランク以上の冒険者でも苦戦を強いられるような危険な場所だ。

 そんな階層の一角で、私たちは現在戦闘の只中にあった。

 対するは件の強敵に数えられるモンスターが一体。

 一言で表すなら、そいつは……ゴリラだった。姿形は紛うことなき巨大なゴリラそのものだ。

 ただし、毛に覆われていない素肌の部分が、綺麗に光を反射する鏡のようなシルバーメタリックで構成されている。見るからに硬そうで強そうな相手だった。その名もメタリックゴリラと、まんまである。

 しかしながら、鏡の試練へ至る道すがら何度か相対した相手でもあり、私たちには必要以上の緊張もない。

 油断なく睨み合いをしながら、仕掛けるタイミングを計っているところだ。


「それじゃ、手はず通りに」

「「「了解」」」


 ベースはプランA。いつもどおりオルカが隙を作り、クラウとココロちゃんが突撃。私は後方支援という流れだが、今回は各々が新たに入手した新スキルを活用することが課題となっている。

 先陣を切ったオルカは、早速とばかりに二回行動のスキルを駆使して黒苦無を矢へ変形させ、弓で撃ち出した。その際用いたのは弓のアーツスキル、ピアースアローだ。

 貫通力に高い補正の掛かるそれは、黒苦無の攻撃力も相まって生半な威力ではない。

 が、ゴリラは自らの頑丈さに余程の自信があってか、避ける動作すら見せず、目にも留まらぬ疾さで迫る矢を右腕の一払いで弾こうとした。が。

 思いがけず強力だったその矢はなんと、ゴリラの腕を貫通し、その胸にまで深々と突き刺さったではないか。

 元来であったなら確かに、ゴリラの腕は黒いその矢を容易く払い除けたことであろう。だが、計算外はやはり二回行動であった。

 矢を放つ際に発動したそれがもたらした効果は、矢に二射分の威力を載せるという形で現れた。

 結果、想像を絶する威力で持ってまかり通った黒い矢は、矢羽を模した部分を残し、深々とゴリラの腕を貫いたばかりか、その勢いでもって分厚い胸板にまで食い込んだのである。

 するとそこからが黒い矢の真骨頂。途端に変形を始めたそれは、胸板の内側でうぞうぞと形を変え、決して引き抜けぬよう根を張ったのだ。

 且つ、矢羽もまた変形し、胸板と腕を引き離せぬよう固定することに成功した。即ち、ゴリラの右腕は見事に動きを封じられたわけだ。


 クラウとココロちゃんは、その頃には既にゴリラへ踊りかかっていた。

 それはもう、オーバーキルという言葉も生易しく感じられるようなえげつない有様であった。


 ほんの一瞬、ココロちゃんの姿がいつか見た、鬼に呑まれた時の彼女に近いそれへと変じる。

 ただしそこに禍々しさはなく、寧ろ神聖さすら感じさせる変貌から繰り出された拳は、呆気無くゴリラの頭部を弾けさせた。

 大変にショッキングな様子だったが、ダメ押しとばかりにクラウの聖剣が普段の蒼とは異なる、黄金色の輝きを纏い異彩を放つ。

 そして一つ閃いたそれは、見事に頭部を失ったゴリラの体を両断せしめたのである。

 直後だ。

 断面より生じた、眩いばかりの輝きは、たちまちゴリラを跡形も残さず滅却していったのである。

 それは以前、イクシスさんが振るった剣と正に同一のものだった。


 斯くしてものの数秒の後、強そうなメタリック何某はドロップアイテムだけを残し、私たちの前から消え去ったのだ。

 しかしその直後だ。

 変身を解いたココロちゃんと、必殺技を振るったクラウは、どちらも苦しそうにゼェゼェと膝に手を置きバテバテの様子。

 オルカは平気そうだが、何とも消化不良といった表情を浮かべている。

 が、それより何より。


「私の出番は……?」


 支援の必要もない瞬殺だった。

 唯一元気にキャッキャとはしゃいでいるのは、一部始終を目を輝かせながら観戦していたソフィアさんばかりである。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ほんとにソフィアだけが不快感すごすぎる それ以外は対して不満もないし面白いんだけど 主人主人公の行動制限、無理やりついてくる スキル等を無理やり話させる暴いてくる そのくせ自分のス…
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