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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第一七二五話 VS 体の隠しボス 五

 ウェブデこのやろぉぉぉぉおおお!!

 ……というわけで。ニセ子へ対する攻撃に、「反発する気持ち」を乗せて打ち込んでみようという試みを実行するべく、差し当たっては直近でヘイトを溜めまくっているウェブデ氏への不満を込めて、彼女へ殴りかかってみた。

 とは言えまぁ、当たらなければ意味がないというのは当然の話であり。今回も手練手管を駆使し、何とか作り出した隙に一発叩きつけたわけだけど。


(おっ、これは)


 今回繰り出したのは副腕による一撃だ。四つある副腕のうち、上の二本はビッグでパワフルな逞しい腕。一方で下の二本はやや細めで靭やかな腕。けれどニセ子に一撃叩き込んだのは他でもない、この靭やかな方の腕による殴打だった。

 我ながら見事なタイミングで繰り出したそれは、クリティカルヒットと言って間違いない体の芯を捉えた一撃。姿勢が前方へ傾いだところに、アッパーごんっ! である。見事なほど鳩尾に入ったよね。

 しかしながら、それで悶絶するのは肉体ありきでのお話。オーラ体にはきっと関係がないことだ。

 そんなことより要点となるのは、今回の「反発」って試みが如何なる結果をもたらしたか、という点なのだけど。


 腹を打たれたニセ子の身体は、今の私の動体視力を持ってしてもなかなかにえげつない速度と勢いにて、ズバンと打ち上げられ天井に激突。アニメなら「かはっ……!」とか言ってそうな、気持ち良いほどのぶっ飛びぶりを見せてくれた。

 そう、手応えアリだ。どうやら「反発」や「拒絶」など、精神的に受け入れ難い、距離を取りたいという意思、気持ちは自身以外のオーラ体に対して跳ね除ける効果をもたらしてくれるらしい。

 しかもニセ子の見事な吹っ飛び振りを見る限り、所詮再現に過ぎない彼女の偽闘気に比して、私の闘気は瞬発的な出力で勝っているものと考えられる。つまり上振れだね。


(具体的にニセ子を殴りたいだとか、害したいだとか、そういうディティールの細かいイメージじゃ力が入り難いってことかな。それよりも漠然とした、大雑把に強い思いのほうが効果的である、と。なるほどこれは重要な発見だ)


 分析を進めつつ、直ぐ様追撃を掛ける私。すごい勢いで天井に衝突こそすれ、ダメージが入らないのは分かっていること。彼女の持つ珠玉に関しても、残念ながら今の一撃じゃ破壊できなかったみたいなので、この機に畳み掛けつつ反発のコツもより確かなものに仕上げていきたいところ。

 間髪入れずに間合いを詰め、生前募らせたチーターへの熱い思いを四肢に込め振り回してみたのだけど。残念なことに、これはギリギリのところで避けられてしまった。立て直しが速い。

 とは言え、先程までの余裕は失せたように見受けられる。私がふっ飛ばし方を覚えたってんで、優位性を欠いたとの判断か。判断も早い。


(これでようやく、同じ土俵に乗れた……と考えるのは気が早いかな。ニセ子はきっと、まだ私の知らないオーラ体の特性や使い方を知ってる。そう警戒するべきだろうね)


 ふっ飛ばし方を知っていたのと同様、彼女ならオーラ体を害する手段の一つや二つ隠し持っていたとて、何ら不思議ではない。こちらは無知の不利を抱えた上で対峙しているのだと、しっかり警戒して臨まねば手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。

 しかしそれで極端に手を拱いているのでは、好機を活かせず勝機を逃すのも必定。塩梅の見極めが肝心だ。

 何にせよ、弾き方が分かったというのは大きい。これならばニセ子の玉を掻っ攫うのも潰すのも、ようやっと狙いに掛かることが出来そうだ。まだ遠くではあるものの、勝ちが見えてきたのは確か。なればこそ気を引き締めるべきポイントであるとも言えるのだけど。


(ぬぅ……形勢はこちらが不利かな。まんまと立ち直りを許してしまった上に、警戒心がどうしても行動の幅を狭めてしまう。一方であっちは伸び伸びやれてさぞ楽しかろうよ)


 先程のクリティカルから一気に勝利をもぎ取ることが出来ればベストだったのだけど、そこは流石と評するべきか。身のこなしにおいても、依然オーラ体への不慣れというか、試行錯誤の只中にある私に比して、おそらくは万能マスタリーかそれに近い能力の恩恵により、しかと使い熟してみせるニセ子との差。そうした面でも優勢を握られてしまっている。

 警戒するべきことが多く、どうしても大胆な手が打ち難いこちらと、既に基礎も応用も踏まえているであろう向こう。アドバンテージと呼ぶにはあまりに大きな隔たりと言えるだろう。

 一見しても二度見したところで、絶望的とすら呼べる有利不利。されども覆せねば、この勝負に負けてしまう。そうすれば紙装甲の私なんて一撃でぺしゃんこ、即デッドエンドのゲームオーバーってなもんだ。


(けど、追い詰められてこそ力を発揮するのがゲーマーでしょう。パズルゲームの高難易度ステージみたいなものだと思えば、このくらいなにするものぞ! 特に落ちもの界隈のネット対戦は魔境ぞ!)


 ゲームなのに座学が必須だとか、それでいて膨大な実践および実戦経験も物を言ったりだとか、突き詰めた猛者たちがゴロゴロしているのがネットの海だ。そこへ殴り込んだ経験を思えば、何のこの程度。乗りこなしてやろうじゃないのさ!

 メラリ底上げされた闘気の力を感じつつ、しかし冷静にニセ子への対応、観察、学習に努める私。

 そうさ、マスタリー先生とは何も身に宿すだけが利点じゃない。こうして実戦を交えることでも学び取れることは無数にあるのだ。

 ニセ子の動きから、オーラ体を知る。掘り下げる。そうしてモノにする。

 浮かんだ疑問は、アクションにて質問。返答を得て納得へ落とし込み、活用、応用。攻防の過程にて思いがけないアプローチを見つけたなら僥倖、貪欲に食らいつき、弄り、基礎を拡張する。

 そうして一歩一歩足場を固め広げていくよう、戦い方を学び進めたなら、いつしか私も一端のオーラ戦士って寸法だ。


(こうか! これがこうして、こうか! でもってこう来たら、こう! あっ、ふーん)


 幸いなのは疲れ知らずのこの身体。その気になれば何時までだって戦い続けることが出来る。これ幸いと手を尽くし、尽きた端から新たな手を得て試す。

 ただ一点、これは相手を害するための戦い方ではなく、あくまで玉を奪う、或いは破壊することを目的とした動きであり、技だということ。相手を殺す目的で立ち回ろうと思ったなら、きっと別のノウハウが顔を出すのだろう。そこはしかと念頭に置き、どれほど学ぼうとおのれが無知であるという前提を慢心や増長で踏んづけてはならない。容易く足をすくわれるから。

 それに、恐らくこちらが学びの姿勢を取っていることなんてニセ子にすれば丸分かり。なればこそ、えげつない爆弾を隠し持っている可能性は非常に高く。何時それを起爆させるか、正直気が気ではないのだけど。とは言え二の足を踏んでいられる余裕もない。全力で技を盗み、それをもってして活路と成す。私にとってはそういう闘いだ。



────そんなこんなで、三年の月日が流れた……。



 ああいや、体感でね。あくまで体感での話。

 如何せん私もニセ子も、その気になれば光速すら超越できる身体なわけだから、普通の肉体でなら三年分の運動だって短時間にぎゅっと凝縮できるわけだ。便利なものである。

 まぁそれでも、流石に三年はちょっと盛ったかも知れないけれど。なにせ光速云々だなんて、そんなスピードで玉を振り回してはそれだけで壊れかねない。自滅が怖いのだ。

 とは言え、ニセ子との間にそれだけ膨大なやり取りがあったというのも事実ではある。ひたすら無言で攻防を続けていただけではあるけども。


(いい加減この身体の扱いにも慣れた。むしろ元の身体にちゃんと戻れるか、だとか。戻れたとして扱いが下手になってないかだとか。その辺が少し心配になるレベルでオーラ体に馴染んだと思う……けど、だからこそぼちぼちとんでもない仕掛けをしてきそうで恐ろしい)


 基本は安全重視の様子見と観察、学習、そして適応。ニセ子の繰り出してくる様々なアプローチに対し、死に物狂いで対応し玉を守り切るのが第一であり、同時並行的に分析。「同じ手が二度と通じない!」と相手を恐怖させるつもりの気概にて対策を構築し、実践してみせる。

 模倣も重要だ。私の組んだ対策だけが正解だとは、決して決めつけず。過度に自信を抱えず。相手が同種の攻撃を受けた時どう対応するのか、というのは積極的にデータを得るべきポイントであると貪欲に探りを入れた。ニセ子の繰り出す攻撃は出来るだけ真似て、相手の対処を観察する。私の考えた対処方法と違いがあれば、それは新たな学びになるから。

 勿論、中には「意図的に誤った行動」なんてのを織り交ぜられ、何も考えず鵜呑みにし、模倣すれば付け入る隙を晒すことになるような、爆弾めいた仕込みもちょいちょいあった。いやらしい策略である。ゆえに、何を学び取るかという取捨選択にもまた力を入れる必要があり。

 結果として、異様なほどに濃い時間を過ごしたと思う。実時間にしてどの程度経ったかも分からないけれど、満足感は尋常じゃない。流石にちょっと胸焼けしそう。


 成長したという実感はある。だからこそ、そろそろ何か大きな事を仕掛けてきそうな予感もあり。

 そしてそれは、案の定訪れたのだ。


 副腕の一本が、ニセ子の繰り出した斬撃により断ち切られる。それ自体はまぁ、これまでに何度となく経験したことであり、動揺するほどのことではないし、再生も容易いことなのだけど。

 ところが。


(!? な、こいつ……っ)

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 締め部分の斬擊…もしかしてニセ子もミコトを真似して、オーラに「再生なんかぁ…してんじゃぁねぇぇぇぇ!(若○ボイス」的な気持ちを込めて来たとか? ミコトはいわゆるバトルものに出てく…
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