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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第一七一八話 染まっちまったな。

 モノマネギミックの、恐らくは最終課題をクリアしたところ、満を持して「鏡の中に入る」というお約束的なイベントに遭遇。

 警戒心と好奇心をお供に、恐る恐る鏡面へ足を踏み入れてみたなら、何の抵抗もなく私の身体は境界を越えたのである。


「ここは……なんか学校みたいな所に出たね。私の記憶にはない場所だけど、如何にもそれっぽい見た目ではある」


 鏡を抜けた先。そこで目にした光景は、如何にも何処かの校舎然とした雰囲気のある廊下であり。リノリウムめいた床に、コンクリートベースの壁。天井には蛍光灯が等間隔に並んでおり、否が応でも前世を思い起こさせた。

 ただ、私が通っていた学校ってわけでは無さそうだ。そう言えばいま着ているこのセーラー服も、私の通っていた高校の制服ってわけではない。架空のものなのか、はたまた他校のものなのか。

 何にせよ、迷宮内でならそう珍しがることもない、恐らくは私の記憶に寄せたデザインってことなんだろう。

 仮に鏡ってものを「自分を見つめ直すためのもの」と定義するのなら、私の記憶に寄せてどうこうするっていうのは、何も不思議なことではないもの。当然のアプローチとして納得さえ出来る。


「んで、何処に向かえば良いんだろう? てっきり隠しボスが待ってると思ってたんだけどな。取り敢えずてきとうに探索すれば良い感じ?」


 見るからに隠しエリアらしき場所へ入り込むことは出来た。でもってこれまでの傾向に鑑みると、ぼちぼち隠しボスと戦いますか? みたいな問い掛けがやって来ても良さそうなもの。メタ読みだけどね。

 であるなら、ここからは隠しボスを見つけ出すって目標のもと行動するべきだろうか。まぁ確信のある話でもないため、先入観を抱えるのも良くないか。どうあれここまで思わせぶりにしておいて、何も無いということはあるまいよ。

 一体何が仕込まれているのか、それを見つけるべく探索を行うとしよう。


 というわけで、改めて周囲を観察しつつ探索を始める私。

 一先ず私は何処からこの場所へ入り込んだのかと、背後を振り返り入口を確認してみたところ。壁に備え付けられた大きな鏡がそこにはあった。そう言えば学校ってでっかい鏡が置かれてることあるよね。七不思議の題材にされることもあったりして。

 私は正に、そんな大鏡を潜り抜けてここへやって来たようだ。


「これ、戻ることって可能なのかな? ……あ、大丈夫そう」


 この鏡にも入り込めることを確認し、ほっと安堵する私。繋がっている先は、元いた場所で間違い無さそうだ。つまり引き返して普通にダンジョンボスへ挑む、という選択肢もまだ潰えてはいないということ。一方通行イベントは肝が冷えるからね、戻れる仕様で良かった。実際引き返すかどうかはさて置くとしてね。

 んで、石橋を叩いたならいよいよ本格的な探索の開始だ。

 差し当たっては目についた扉や窓を開こうと試みるわけだけど。


「開かない。これってアレだ、ホラーゲームとかでよくあるやつ。不思議な力で開かないようになってるっていう。なら破壊もダメなんだろうね」


 試しに納刀したままのカタナで窓ガラスをぶん殴ってみるけれど、全然割れやしない。外に出られないのは勿論のこと、教室と廊下を隔てているようなガラスだって破壊不能オブジェクトみたいに頑丈だ。関係のない場所には行かせないという強固な意思を感じる。

 また、隠し要素なんかの存在も一応探しながら歩いているわけだけど、そういうのも今のところは全然見つからない。

 如何にも校舎らしい長い廊下を、キョロキョロしながら進む私。時折壁や天井を這い回る辺り、我ながらなかなかの不審者ムーブではなかろうか。染まっちまったな、異世界に。


「これ、防火扉? 普通に閉まってて通れないんですけど。こういう手で通せんぼするのか……やっぱり実質的な一本道かな?」


 火事の時にしか出番のない、火の回りを妨げてくれる有り難い鉄扉。それがどういうわけか、時折私の行く手を塞いでおり。まるでこっちは行き止まりですよと告げているかのよう。勿論破壊も無理そう。

 それと、学校って割に生徒の姿も気配もない。休日かな? 誰もいない校舎ってちょっと不気味だよね。夜だったらいよいよホラーだ。窓の外が明るくてよかった。

 して、そんな校舎探索もそれほど長くは続かず。むしろ注意深く進んだ分、必要以上に時間を掛けたくらいだ。

 長い廊下の突き当り。幾つか曲がった先の、最奥。ぽつんと存在する引き戸の前に、浮かんでいたのはメッセージウィンドウで。

 そこに記されていたのは、やはりと言うべきか。既に馴染みすら覚えつつある類いの文言だった。


──────

隠しボスが居ます

挑戦するなら中へどうぞ

勝利できれば豪華特典プレゼント

──────


「わぁ……出たよ。さてどうしようか」


 隠しボス。この迷宮にて既に二度の対峙を果たし、何れもが激戦。ともすれば死闘とすら言える際どい戦いを強いられた、掛け値なしに恐るべき脅威。そんなレベルの手合が、この先に居るのだと。

 隠し要素に目がないゲーマーとしての私は、無事に発見できたことへの安堵や満足感、そして好奇心に口元も綻ぼうというところだけど。

 しかし冒険者としての私からすると、ちょっとばかり頭を抱えたくもなる。

 だってそうだ、またもや命懸けのヒヤヒヤする闘いを行わねばならないだなんて、普通にカロリー過多だもの。バトルジャンキーではないんだよ私は。少なくとも、今の私はそう。

 これがミコバト内だとか、或いは普通にゲームの中だって言うんなら話は違うさ。けど私がここで勝手に死ねば、悲しむ上に大きな迷惑も被る仲間たちが居るんだ。なにせ運搬役兼倉庫役だからね、居なくなっては大問題だろう。

 だから、勝手に死ぬわけには行かないのだ。だから堅実な道を選ぶというのなら、隠しボス戦なんてスルー一択なのだけど。


「三体目の、隠しボス……もしも倒せたら、オール撃破ボーナスとか貰えないかな? 心技体全ての隠しボスを倒せて偉い! みたいな。ありそう……ああでも待って。実績で変なモンスターがアンロックされる可能性とかある? でも逆に、ご褒美アイテムが実績で貰える可能性も……いや、でもなぁ。うーん」


 などと考え込みつつメッセージウィンドウを眺めていると、そこに次ページの存在を発見した。

 何が書かれているものかとページを次へ進めてみると……。


──────

隠しボスコンプリートボーナス、あります

──────


「! おっとぉ……なるほどね。これはとんでもない殺し文句だ」


 まるで私が二の足を踏むのを分かっていたかのように、取って付けたかのような宣伝文句。されども破壊力は抜群の一言に尽きる。

 思い返してみたなら、第一の隠しボス、親分オーガ戦の特典ではとんでもない内容のルールブックを得た。

 第二の隠しボス、トレモちゃんを倒したことで彼女を召喚するためのへんてこスキルをゲット。何れもが私にとって、とんでもなく価値のある特典だったと言えるだろう。

 であるならば、今回の隠しボスでもそれらと同等の品が期待できると見て間違いないはず。ましてコンプリートボーナスならば、それ以上の何かが得られるんじゃないだろうか……これは期待せずには居られない。


「でもさ、実は今回の隠しボスがラストじゃないよ、なんて可能性も否定できないよね。コンプリートボーナスがあるとは言ったけど、ここでコンプできるとは言ってない、みたいな。実際、既に当てはあるわけだし」


 忘れちゃならない忘れ物。そうさ、私たちは技の試練に忘れ物をしてきた。それを取りに戻れるって見込みの上で動いているのだ。であれば、そこにまだ見ぬ隠しボスが待っているっていうのは十分に有り得る話だもの。それを倒してようやっとコンプリート……ありそうじゃんね。

 しかしそれならそれで、今回の隠しボス戦をスルーしてはみすみす取り逃がすことになるわけだ。コンプリートってことは、全部撃破する必要があるってことだから。ここで放置したんじゃ台無しである。


「ぬぅ……ちなみに、実績解除の可能性っていうのはどうだろう? 言っても迷宮内の、しかも迷宮二周目の隠し要素を指定した実績だなんて、そんなピンポイントなことってある? 流石にそれは考えすぎ、かな。だとするとアンロックの心配は要らないか」


 絶対とは言えないけれど、仮にもしここに何らかの実績が設けられていたとして。苦労して隠しボスを撃破したっていうのに、よりヤバいモンスターが出現して即全滅とか、流石にそれは運営の頭が悪すぎる。何がしたいのかさっぱり分からないもの。

 これがコンティニューの利くゲームならまだしも、リアルでやるようなことじゃない。ので、大丈夫なはず。

 ってなると話は単純。


 特典の入手を目指して挑むか。

 はたまた、命大事にここは諦めるか。


「うー……ん。まぁ、挑戦するかぁ。スルーしたら一生引きずるだろうしね」


 悩んでこそみたけれど、やっぱり傾いた心を引っ張り戻すことは出来そうにない。もしもこの場所には二度と訪れることが出来ない、なんて話になれば、夢にまで見る自信がある。それは流石にキツい。

 ってことで、決断は成った。覚悟を決めたなら、いざ三度目の隠しボス戦だ。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 隠しボスのお知らせww隠してる筈なのに隠してないですなww 本当に試練製作者は此方の事を良く理解してらっしゃる……でも見方を変えたら、そこまで深い理解を得る為にこっちを入念に(?…
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