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第一六一〇話 本当の赤?

「赤の闘気の、発展型……!」


 親分オーガの心命珠が宿す特殊能力について皆に紹介し、その凄まじさに感心したのも束の間。

 それ程までにとんでもない力を操った親分オーガを、私は一体どうやって屠ったのかと。皆の関心はそうした疑問へと転じ。

 そんな彼女らへ、戦いの一部始終を心命珠に宿った親分オーガの意思とともに、思い返しながら語っていったのである。

 結果、次に皆が興味を寄せたところというのが、即ち「赤の闘気の発展型」というわけで。


「骸との戦いで目の当たりにしたことはあるが……なるほど、ついにアレをものにしたというのだな。流石ミコトちゃんだ!」

「ズルいぱわズルいぱわ! それを直接見たのって、先輩とミコトちゃんだけぱわ!」

「ガウラ!」

「そうです、ゼノワ様も槍の骸戦でご覧になっていますよ」


 言われてみたら確かにそうだ。

 赤い闘気を発展させた形というのは、話の上でこそ皆に伝え、情報を共有しているわけだけれど。しかし実際それを目の当たりにしたメンバーといえば、チームミコバト内でもほんの一握りということになる。

 イクシスさんは拳の骸戦で見ているし、ゼノワは槍の骸戦で見た、というかガッツリやり合ったわけだけど。

 しかし思い返してみると、実際目の当たりにしたメンバーが少ないからこそ、これまで発展型への到達というのは成功しなかったのかも知れない。

 なにせ、チームミコバトの成長速度は切磋琢磨にこそ支えられているからね。誰かが一歩リードすれば、何クソ負けていられるかと周囲が頑張るわけだ。負けず嫌い集団だもの。

 それで言うと、フゥちゃんとアリエルちゃんが新たに良い関係を築けているよね。二期生って感じ。


 なればこそ、今回私が一歩先んじたというのは皆にとっても意義深いことなのかも知れない。

 誰かが突破口を開いたなら、皆がそれをグイグイと押し広げるわけだ。だから程なくして、彼女たちも発展型を会得してしまうのだろう。

 先駆者の義務、といえば大袈裟で偉そうになってしまうのだけど。しかし先んじた者として、私も皆への情報提供を惜しむつもりはない。


「身体の外で形状を維持した闘気、か……興味深いな」

「ちょっとやって見せなさいよ。百回聞くより一回見ろってやつよ」

「リリエラちゃんはすぐそうやって無茶なこと言う」

「うっさいわね、見たほうが早いのは事実でしょうが!」


 リリとアグネムちゃんが、いつものやり取りをおっ始めたけれど。しかしリリめ、百聞は一見に如かずってことわざを崩しながらも活用してくるとは、ちょっと嬉しくなっちゃうじゃんか。人の話を聞かないようで、実はちゃんと聞いてるっていう。

 とは言え、ここで実演してみせろと言われても、それは流石に難しいを通り越して無理に近いオーダーである。

 ただでさえ闘気の高め方っていうのがちょっと特殊な私。なればこそ、赤い闘気を発生させるだけでも一苦労するっていうのに、その上発展型を実演するっていうのは流石にね……。

 ポリポリと頬をかいて困ってみせる私へ、助け舟がやって来る。


「ミコトちゃん、それなら何かコツのようなものは無いか? 発動した際に意識したことだとか、次に使う時はこうすればスムーズに再現できそうだ、と感じていることだとか」


 イクシスさんからの問いかけである。

 確かに赤の闘気だけなら、この場の全員が既にモノにしているわけだから、コツを聞き出そうって考えはとても合理的に思える。

 これを受け、ふーむと顎を撫でる私。


「取り敢えず、闘気の出力はかなり高かったと思う。不慣れだから余計な力が入っていただけかも知れないけど、いつもより戦意が高まっていたのは間違いないかな」

「熱いぜ熱いぜ! それだけ熱いバトルだったってことなのぜぇ!」

「そうだね、そうかも」


 これには心命珠の中で親分オーガもにっこり。

 事実として普段以上に気合を入れて戦闘に臨んでいたってのは間違いのないことだもの。それに死を覚悟するほどの脅威だったわけだし。


「相手がとにかく強かったからさ、ひょっとすると死に物狂いだったっていうのも関係しているかも……?」

「ココロ知ってます! 火事場の馬鹿力、或いは火事場のクソ力ってやつなのです!」

「ふむ、火事場スキルというものなら実際存在しますね。HPが危険域まで低下すると発動する、強力な自己強化系スキルです。ちなみにミコトさんも習得済みですよ」

「もしかしてそれも関係してる?」

「だとしたら、習得はちょっと大変そうですね~」


 ふと、ギュッと手を握ってくる者があった。オルカだ。そう言えば彼女、過保護組筆頭だったっけね。死に物狂いで戦った、なんて聞かされては心穏やかじゃ居られなかったのだろう。

 彼女の頭上にへにょんとした犬耳を幻視し、思わずワシャワシャと頭を撫で回してしまう。


「……ミコト、他にはなにか無いの?」

「ん? んーとね」


 そのようにオルカとじゃれ合っていると、話の続きを求めてきたのはクオさん。心做しかちょっとだけムッとしている気がする。あらやだ、ヤキモチかしら。なんて。

 んで他に発展型へ至るためのコツか。色々あった気もするし、そうでもない気もする。

 取り敢えず思いつく限り論ってみようか。


「基本になるのは多分、身体の内側に上手く闘気をとどめて運用する技術。で、それを維持したまま身体から抜き出す感じかな」

「ほぉほぉ」

「あと、どんな形にしたいかっていうのはしっかりイメージしておくべきかも。私の場合は『サブボディ』と『最強装備』って形状でそれぞれ上手く行ったけど」


 恐らく大事なのは、わざわざ意識せずともイメージを維持できるくらい、馴染のある形状なのだと思う。

 っていうのも、闘気の形を保ち続けるのって、不慣れのうちはすごく大変だと思うんだ。下手をするとゲシュタルト崩壊的に、「あれ、これってこんな形だったっけ……?」って混乱して、結果的に形が崩壊しかねない。

 だから、そういう崩壊が起こらないくらいイメージがしっかりと頭や心に根付いてる、自分にとって馴染み深い形状こそが、闘気を形にしやすいフォルムなんじゃないかって思う。

 まぁ使い慣れた得物であれば、概ね問題ないだろうけれど、しかし具体的にこの武器! ってこだわり過ぎると、細部から崩れやすかったりするかも?

 というようなことを、皆へつらつら語ってみる。


「ええい、こんな時に限ってミコバトが使えないなんて……もどかしいわね!」

「ぱわっぱわっ!」

「焦れったくて焦げちゃいそうなのぜぇ」

「やれやれ……気持ちは分かるが落ち着け」


 案の定と言うべきか、一部のメンバーが早速試したくてウズウズしているようだけれど、しかしこんな場所で闘気が発動するほど戦意を高められても困ってしまう。他でもない当人たちとてそのくらいは理解しているからこそ、尚更にもどかしい思いを抱えているようだ。

 お預けを食らいソワソワとする彼女らを、なんだか微笑ましく感じていると。横合いよりクラウがコメントを差し込んでくる。


「それにしても、幾ら赤の闘気に防御貫通効果があるとは言え、よく隠しボスとやらを倒し切れたものだな。ステータスも相応に高かったのだろう?」

「あー、うん。実は私もその辺はちょっと腑に落ちないっていうか、不思議に思ってるっていうか。発展型の赤い闘気を駆使した攻撃って、想定を超えて強力だったんだよね」

「そうなのです?」

「うん。だからもしかすると単なる防御貫通効果以外に、何かしら追加効果があるんじゃないかって思ってる。或いは効果の変質か……」


 親分オーガ戦を終えてそこそこ時間が経過しているけれど、正直未だにピンときていないっていうか。何故闘気人形があれほど猛威を振るったのか、攻撃を行った私自身ですらよく分かっていないっていうのが本音だ。

 その意味においては、私も改めて検証作業を行いたくあり。ソワソワしている彼女たちのことをどうこうと、他人事のように言っても居られなかったりする。

 身体の外で高出力の闘気を形にすることで、何かしらの変質が起こるのか……或いは逆に、あれこそが『本来の赤の闘気』なんてこともあり得るのかな? 私たちが普段から赤の闘気として使用しているのは、中途半端に赤色の特性が混じった不完全体だったって説。

 もしもそうならロマンじゃんね。これもまた、帰ったら詳しく研究してみたいところだ。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 赤の闘気の発展型を扱うコツ、聞いてたらちょっとジョジ○三部のスタンドを連想しますね…もしくはペルソ○シリーズのペル○ナとか? 両方とも自分の中で確固たる姿(認識)がないと形作れな…
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