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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第一六〇七話 浮き沈みのゼノワ

 新たに得たへんてこスキル【見た目装備枠追加】に関する解説や、私自身気になっていることを試したりもして。

 結果としてスキルに関する理解は深まったし、メンバーたちは早速自前の装備を登録の後、思い思いに見た目装備を変更して遊び始めていた。

 私は私で、背中のユニットや腰のブースターなどをどうやって見た目装備で偽装しようかと考え、結果として外套や上着、或いは鎧などでカモフラージュする作戦がベターであるという結論へたどり着き。

 されどもその上で、如何ともし難いのが「副腕に持たせる武具」だ。副腕までなら、何とか見えざる手として運用することが出来るのだけど、それらに握らせる剣や盾などの武具は、どうにも空中に浮いて見えてしまうっていう問題にぶち当たり、解決できないでいる。

 まぁ、スキルレベルが上がれば「装備の透明化」とか追加されるかも知れないし、それに期待して今は諦めるのが良いだろう。


「ギャウンガギャウンガ!」

「おー、ゼノワはコロコロ姿が変わるねぇ」


 ある意味この【見た目装備枠追加】ってスキルの恩恵を最も享受しているのは、ひょっとすると彼女かも知れない。

 私の契約精霊で、人と幼竜の姿を自由に変えられる埒外の存在、ゼノワ。

 装備アイテム一つで服装がガラッと変化する彼女。そんなゼノワと見た目装備の相性は、非常に良く。

 私のストレージにあるアイテムなら好きに登録していいよ、と許可したところ、彼女がお着替え可能なアイテムラインナップは膨大なものとなり。それらを一個一個チェックするたび、ガラリと姿が変わるのだ。まるでひとりファッションショーである。

 この仕様には当人もご満悦な様子。ころころと格好を変えては、キャッキャとはしゃぎまわっていた。


 なお、人型ゼノワの容姿は私に良く似ており。つまりは彼女の顔面もかなりの破壊力を有しているわけで。

 ファッションショーなど開催しようものなら、冗談抜きに死人が出かねないっていう。

 なので彼女も顔面にはモザイクを標準搭載。まじかる★みことと似たような仕様である。仮面かなにかで顔を隠せる格好か、或いはシンプルに幼竜形態であれば問題は無いのだけどね。


 そんなこんなで、一頻り皆が見た目装備の扱い方を把握し、試しも終えた頃。

 ハッと我に返り、くわっ! とした形相でソフィアさんが問いかけてくる。

「ミコトさん、へんてこスキルは二つ得たと言いましたね? 一つが【見た目装備枠追加】であるなら、もう一つは何なのです?!」

 この言葉に、皆も興味を惹かれたか視線がこちらへ集まってきた。

 よろしい、ならば明かすとしようか。十分に皆聞き耳を立てるのを待ち、それでいてソフィアさんが痺れを切らすよりも早く。問いかけに応じ、私は口を開いたのだった。


「特典として貰ったもう一つのスキル。その名は【リザーブスロット】。ざっくり言うのなら、条件付き自己強化スキル……ってところかな?」

「詳しく!!」


 食い気味に投げかけられた言に、危うく怯みそうになるけれど。苦笑を浮かべるにとどめ、私はスキル効果の説明を行った。


「簡単に言うとね、【リザーブスロット】は『空き枠』を使って、装備の性能を引き上げるスキルだよ」

「空き枠……!」

「それはつまり、装備で埋まっていない空っぽの装備枠、ということか?」

「そう、まさにそれ」


 へんてこスキル【リザーブスロット】。それは空き枠を有効活用する、これまでに無いタイプの強化スキルだ。

 もう少し具体的なことを言うのであれば、装備中の武具、或いはアクセサリーのうち一つを選択し、その能力を空いた分の枠で大きく底上げすることが可能、という効果となっている。

 強化幅に関しては、一枠につき『性能+100%』という思い切りの良さであり。現状では二枠分の空き枠が『強化枠』として活用できるらしい。それ以上の空き枠については、これまで同様ただの余りとして処理される模様。スキルレベルが上がれば変化があるかも知れない。

 また、二つ分の強化枠は別々の装備に割り振ることも可能であり、勿論一つに集中させることも可能。この効果を仮に武器へ集めるなどすれば、爆発的な火力上昇を狙うことも容易いというわけだ。

 ……と、言うような説明を皆にしたところ。


「なにそれ羨ましいのぜぇ!」

「共有~! 共有は出来ないのですか~!?」

「え、待ってね……あ」

「どうなのよ!」

「出来るっぽい」

「「!!」」


 勢いよくわっと盛り上がる面々。こと更にソフィアさんの狂喜乱舞ぶりである。

 流石にこの空気の中、意地悪をしようだなんて捻くれた考えは湧いてこない。って言うかそんなことをしようものなら、ソフィアさんが勢い余って憤死しかねないもの。守護らねば。

 というわけで、素早くこの場の全員に共有設定をオン。

 これで皆、余っている枠を二つまで自己強化用に使えるはずだ。


 早速それに気づいたのか、各々が設定を開始。って言ってもわざわざウィンドウを確認して操作するほどのこともない、枠を空けて能力の底上げをしたい装備を選ぶだけだからね。

 ただ、こんな場所で試しに武器を振るとかは止めてほしいものである。普通に危ないどころの騒ぎじゃないから。

 やんややんやと大騒ぎする面々。

 されども、そんな中一人元気のないものがあった。


「ガウゥ……」

「あー……そっか。ゼノワは枠がなぁ」


 そう、しょんぼりしているのは他でもない、ゼノワである。

 リザーブスロットは空き枠を利用することで、装備の力を増幅させるスキル。されどもゼノワには、肝心要の空き枠ってものが存在していないのだ。

 以前、それこそこの迷宮の前身となる篩の迷宮(無印)にて、隠しルートを辿りウェブデさんを発見した特典として、装備枠を一枠分拡張するためのチケットを貰いはしたのだけど。

 されどもゼノワは、そもそもからして私たちとステータスからスキルから大きく仕様が異なっており。

 そんな彼女にこのチケットを使って、果たして正常に機能するものかと懸念を拭うことが出来なかった。最悪の場合、何かしら致命的なバグのようなものが発生しないとも限らない。大きなリスクと言えるだろう。

 なのでチケットは、正に「切り札」という位置づけで未使用のままゼノワが所持している状態だ。

 仕様が異なるとは言え、普段から装備一つで十分な戦力を発揮する彼女。そんなゼノワの装備枠が、もしも狙い通り二つに拡張されたとしたら、それは間違いなくとんでもない強化だもの、ピンチをひっくり返すだけの切り札にだって十分なり得るはず。


 ってわけで、今に至るまで幸いにも、そうしたリスクを抱えた切り札を切らずにやって来れたわけだけど。

 しかし今ばかりはそれが災いし、空き枠が存在しないという皆との相違点に遣る瀬無さを覚えているゼノワ。

 だからと言って、ならチケット使っちゃえよ! なんて軽はずみなことが言えようはずもない。だってそうだ、ゼノワにとってそれは、飲めば凄まじい力を得るか、或いは猛毒になるかというギャンブル要素の強い妙薬にだって等しいのだから。

 それに、仮に一枠拡張できたからと言って、それでも余らせることが出来るのはその一枠だけ。どの道リザーブスロットの効果を十全に引き出すことは出来ないわけだ。


「うーん、抜け道か何かあると良いんだけど」

「ガウー」


 ゼノワの仕様が特殊だというのなら、それこそ特殊なリザーブスロットの運用法が出来たって良さそうなものじゃないか。

 というか、もうちょっと踏み込んだ考察をするのであれば、ゼノワが曲がりなりにも装備枠を有している、という事実自体がよく分からないと言うか、どう受け止めていいか掴みかねていると言うか。

 ゼノワは精霊であり、私たちとは異なる理に基づき活動している節が見られる。精霊力とスキルの関係だなんてのが最たるところじゃないか。

 であれば、ゼノワはどういう理屈で装備枠を一つ確保しているのだろう?

 ひょっとすれば、彼女の意思や能力を駆使し、自力で増やすことも可能なのでは……?

 しかし、仮にそれが成功したとして、果たしてそれは正しい意味で『装備枠』と呼んで良いものなんだろうか?


「謎は尽きないね……」

「グラァ」


 少なくとも見た目装備の恩恵であれば、ゼノワも問題なく受け取ることが出来ている。この事実は何気に大きい。

 気になるのは、どうしてそれが成立しているのか、という部分だ。

 へんてこスキルの仕様が、もとよりゼノワにも対応した仕組みで動いている可能性、というのも考えられるけど。

 しかし仮に、そうじゃなかったとしたらどうだろう?

 ゼノワに適用させようとした際、何某かの変質を起こしている、或いは……ゼノワ側がスキルに対して、何かしている事ってあり得ないかな?

 改変か、調整か、或いは再現か。

 そうした線で探っていけば、ひょっとすると思いがけず彼女の可能性を引き出すことにだって繋がるかも……研究の必要がありそうだ。

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