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第一五八六話 VS親分オーガ 三

 魔法少女へと姿を変えたミコト。神気顕纏との併用により、飛躍的に彼女の能力値は上昇し、現状においては親分オーガに引けを取らないレベルにまで引き上げが叶っている。

 なればこそ、彼の恐るべき拳を見切り、ばかりかその力を利用し投げ飛ばすことにも成功したわけだが。更にはグラトニービームを直撃させることも出来たわけだけれど。

 とは言え何ら堪えた様子もなく、愉快げに起き上がっては再びミコトへ襲いかかる親分オーガ。

 斯くして再開された攻防は、先程よりも激しさを増しており。ボス部屋の隅っこでは、Aさんが頭を抱えて丸まっている。

 そのように荒々しい激突の続く状況に反し、ミコトの思考は冷静に動いており。


(そもそも、見えない壁を私は『破壊不能オブジェクト』だと考えたわけだけど、もしかするとその時点で間違っていたのかも知れない)


 と、勘違いの可能性に思いを馳せていた。


(てっきり最初は、ダンジョンギミックの一部か何かだと思っていたんだよね。それにスキルも通さないっていうんだから、尚更「そういう作りの壁」って認識だった。けど、天井裏に隠れていた親分オーガが、状況に合わせて用いた能力由来の代物だったっていうんだから、それなら破壊不能オブジェクトって認識は誤りだったって考えるべきだろう)


 彼女の勘違いを促したのは、恐らく虚ろなる塔の各エリアを囲う見えざる壁。それらも同じく光を反射することもない透明なものであり、ミコト曰く「景色を投影しているモニターのようなもの、かも知れない」との話だったが。

 なればこそ余計に、ここで用いられている壁もそれに近いものである可能性が高い、と考えたのだろう。

 また、交渉に応じて壁が解除され、あまつさえAさんを隔離してみせた現状を前にして、「どういうギミックだろう?」という意識が強く出てしまった。モンスターが作り出している壁である、という可能性を低く見積もってしまったわけだ。

 けれど、親分オーガの登場により、状況はひっくり返ったと言っても過言ではない。


(破壊不能オブジェクトではない、ということはつまり……「破壊は可能」って可能性が高いってこと!)


 本来の得物に代わり、魔法少女の変身に伴い現れるファンシーな見た目の得物、まじかる★すてっき。

 どうやら魔法少女当人の持つマスタリースキルに影響を受け、得意な武具へと姿を変えるらしいそれは、【万能マスタリー】を持つミコトにしてみると変幻自在の可変武器に他ならず。

 ゆえに彼女はそこに、己が理想を託したのである。


(変形:まじかる★ぱいるばんかー!!)


 パイルバンカー。それは、巨大な杭をネイルガンよろしくズドンと叩き込む、フィクション由来のロマン武器だ。

 極めて高い貫通性を有しており、なるほど壁や鎧に穴を開けるには最適なアイテムと言えた。

 にしても、絵面のミスマッチ感たるや親分オーガも目を丸くするほどで。

 華奢な魔法少女の手に突然現れる、巨大なパイルバンカー。しかもファンシーなデザインはきちんと踏襲しており、ファンシー過激派はもしかすると吐き気を催すかも知れないインパクトを有している。


(さらに! グラトニーリバース!!)


 畳み掛けるよう繰り出されたその技は、グラトニービームの持つもう一つの特性。

 喰らい腹に収めたものを勢いよく吐き出すという、なんともばっちいスキルなのだけど。しかし絵面で言えば、そんなこともなく。消化液がオプションで付いてくるようなこともない。

 ミコトの持つへんてこスキル、【ストレージキャノン】と同系統の能力だと言えば分かりやすいだろうか。

 これにより、彼女が親分オーガへ叩きつけたものはと言えば。


(毒をもって毒を制す。親分オーガの力に、もし同質のものをぶつけたら……ワンチャン破れるんじゃないの?)


 先ほどオーガがグラトニービームを浴びた際、彼の身体を脅威より護ってみせたのは、破壊不能オブジェクトと見紛うほど頑強な鎧ともなり得る、彼の不思議な力に他ならず。

 ビームと防御の接触に際し、ミコトは件の力の一部をグラトニーの中へ取り込むことに成功したのである。

 これにより、力の正体を見極めるための解析が可能となった。

 激しい攻防を演じる裏で、器用に作業を進めたミコト。


 その結果得られたのは一つの確信であり。やはり親分オーガは何も、破壊不能オブジェクトを自在に作り出せるだとか、そんなハチャメチャな能力を有しているわけではないらしい。

 解析とは言っても、どういった成分がどんな配合で用いられている、というような詳細なことが分かるわけではないようだけれど。それでも取り込んだ力の欠片が、物質と呼ぶには不自然な不安定さを持つことは分かり。

 そもそもの話で言うなら、本当に破壊不能オブジェクトであれば、ほんの一部とは言えグラトニービームが削り喰らうことなど出来るはずがないのだ。それが叶ってしまっている次点で、親分オーガは破壊不能オブジェクトを扱っているわけではない、と確信するには十分な情報と言えた。

 尤も、削ったにも関わらず親分オーガにビームが届かなかったことに鑑みるなら、単に頑丈なだけでなく、補修能力の高さもまた凄まじいことが察せられるわけだけれど。


 しかしそんな恐るべき護りも、同質のものをぶつけてやれば、相殺が叶うかも知れないと。そんな期待を込め、ミコトがリバースにより放ったのは、今しがた分析を終え不要となった、力の欠片に他ならず。

 回避を許さぬここぞというタイミングにて放たれたそれは、狙い過たず親分オーガを強襲。常時展開されている力の鎧と衝突を果たしたのである。

 されどもやはり、厚さが違う。量が違う。いくら同質のものだとて、完成されたオブジェクトに破片をぶつけた程度では、精々が傷を付ける程度の効果しか見込めない、というのは道理であった。


(でも、だからこそのパイルバンカー! 破壊可能なら、壊せない道理は無い!)


 欠片が叩いたのは親分オーガの胸部。僅かなりとも鎧に傷が入ったのであれば、それで十分。

 その身に比してアンバランスな巨大杭打ち機。それをピタリと正確に操ってみせ、傷の上に叩きつけるミコト。修復の隙を許さぬ刹那の連撃。

 瞬間、ボス部屋を席巻するような爆発音とともに、鋭い杭が鎧へと突き立てられた。


(通った!)


 頑強に過ぎる鎧を通した杭が、どうしてその下の肉体を破れぬものか。

 必然、親分オーガの胸部に深々と突き刺さり、勢い余って貫通まで成してしまう無骨なパイル。

 尚も勢い衰えず、地に引かれることもない直線軌道は実のところ、ミコトの施した重力魔法に由来しており。

 このままどこまでも向こうへ飛んでいくものと思われた、超重量の金属杭はしかし、フッと霞がごとく消え失せあたかも証拠隠滅、完全犯罪さながらである。

 それというのも、ミコトの取った次なる行動に原因があり。


(ここで一気に殺し切る!)


 たかだか胸の真ん中に大穴が空いた程度で、隠しボスを倒しただなどと楽観視しない彼女は、パイルバンカーを直ぐ様ステッキに戻し、未だダメージリアクションの最中である手負いの親分オーガへ向けて、情け容赦無く襲いかかったのである。

 が、しかし。どうやら敵も然る者、そんなミコトの追撃を件の力で防ぎ切り、気合一つで跳ね除けてみせるではないか。

 一度穴を開けたとて、大きなダメージを入れたとて、それで途端に脆くなるほど頼りない力ではなかったらしい。


 見えざる力の鎧となり、常に親分オーガを守るそれは、拳に乗れば拳圧として遠くのものすら圧壊させる。ミコトを跳ね除けたのは、その応用技とも言えるもので。

 簡単な話、圧を全方に向け放ったのだ。威力こそ落ちるけれど、風圧などとは桁の違うノックバック効果を受けては、流石の彼女も退かざるを得ず。

 壁際ではAさんが、ぎゅうぎゅうと透明なフィルムでも押し付けられたように、壁にへばりついて変顔を晒していた。余波だけでも相当なものであったらしい。


(ええい、便利な技持ってるじゃん!)


 モザイクの下で歯噛みするミコト。悔し紛れに魔法を撃つも、案の定力の鎧に阻まれ僅かの痛痒も与えやしない。

 対し、胸の真ん中にポッカリと穴を開けられるという、本来なら即死しているべき重傷を負った親分オーガ。

 されども彼は、膝を屈するでもなくしっかりと二本の足で床を踏みしめており。あまつさえクツクツと喉を鳴らし笑っている。

 そのささやかでありながら、心底楽しげな笑みは、次第にボリュームを増し迫力のある大笑いへと変わっていった。


 それだけであったなら、まだ良かったのだろう。

 だがミコトにとっては困ったことに、事態は急変を迎えることになる。

 大きなダメージを負ったボスモンスターの大半がそうするように、彼もまた大きな変化を示してみせたのだ。


 そう、第二形態、或いは本気モードへの移行である。

今年も年越しと同時に更新!


ってわけで、明けましておめでとうございます!

本年もご愛読のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます!

っていう新年のご挨拶。

変則あとがき失礼しましたー

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― 新着の感想 ―
新年あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いします。
更新お疲れ様です&明けましておめでとうございます! なるほど…あの見えない壁はバキュ○ではなくドラゴンボー○のカチカッチ○鋼みたく、死ぬほど硬いけど破壊は可能だったんですね。 そしてやはり有りました…
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