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第一五一二話 アリエルちゃんのスタイル

 ダンジョンアタックモード。

 エディットした廃屋ダンジョンを前に、準備を進める私たち。

 しばらく修行に付き合ってあげられなかった間、存外ガッツリとミコバトにて経験を積んだらしいアリエルちゃん。

 ならば得意な武器や戦闘スタイルの一つも見つかっただろうと、話を聞いてみたところ。

 将来はフゥちゃんの相方として、最も力を発揮できるような自分になりたいと夢を語った彼女。

 それと前提付けた上で、今現在アリエルちゃんが得意としているものはと言うと。


「一応、色々と試してみたんだけどね。私って、結構なんでもできる子みたいで」

「まぁ、そんな感じはするけども」


 幸運なことに、どうやらアリエルちゃんはなかなかに幅広い資質に恵まれているらしく。スキルにより行く道を無理やり定められるような不自由とは無縁に思えた。

 才能と当人の目指し歩む道が、必ずしも寄り添っているわけではない、というのは前世からよく聞く話。勿論この世界に於いてもあるあるだ。

 戦闘職に就きたい人が、どういうわけだか生産職系のスキルを有していたり。かと思えばやせ細ってひ弱そうな人が、戦闘職系のスキルを持っていたり、みたいな。

 まぁ、スキルをそのまま才能の可視化である、と捉えるのは安直であるし、ソフィアさんが言うにはそれで結構揉め事も多いのだとか。

 スキルこそが才能であり、才能を活かす形で生きるのが一番だ、と主張する人は多く、それで成功している人も沢山いるってのがまた厄介で。

 かと思えば、スキルとは真逆の道に進んで成功した人もいる。スキルに現れない才能だって存在するのだと、声高に叫ぶ人も。

 そうしたアレコレを踏まえると、やりたいことと才能やスキルが合致しているアリエルちゃんは、正に「才能に恵まれた子」という表現が相応しいのだろう。


「んで、中でも一番自分に合ってるなって思ったスタイルは、攻撃魔法主体の中距離戦闘かな。得物は短杖、って言うかステッキがしっくり来る感じ。魔法少女のときにも持つからかも」

「ほえー」


 なるほど、幅広い活躍の見込める中衛ってところか。なんでも器用にこなせるアリエルちゃんには、確かに向いているポジションなのかも知れない。

 チームミコバトで言うと、私やゼノワ、リリにイクシスさん辺りがそれに近いかも。あとフゥちゃんもそのタイプか。

 おや、図らずも私やフゥちゃんとの共通項になっちゃうね。もしやこれがうちの流派ってことになったりして。全然そんなつもりは無いけども。


「サブで短剣。二本装備して、なんちゃって双剣! とかやってみたりして」

「ほほぉ、それはやっぱり、誰かさんを意識してのことっすか」

「もちろんっ」

「だ、だれのことなのだ~?」


 ついっと目を逸らし、ポッと頬を赤くする誰かさん。白々しくも微笑ましい。

 しかしなるほど、敵と接近した場合は二本の短剣、即ちツインダガーで対応しようってわけだ。それなら確かに、魔法で戦って良し、近づいて斬りつけて良しっていう自由な戦闘スタイルを確立できそうではある。

 この際、フゥちゃんとの相性っていうのは一旦横に置いておいて良いかもね。先ずはアリエルちゃんが、きちんと戦えるようになることが肝要だもの。

 でも、フゥちゃんも中衛タイプで大きな弱点っていうのも特にないから、同じく弱点のない相棒ってのは相性が良いのかも。

 さておき。


「ツインダガースタイル、スタイリッシュでカッコいいよね。双剣とは立ち回りからして違ってくるけど大丈夫そ?」

「勿論心得てるよ。そりゃ私も双剣を背負えたらって思うけど、私の体格じゃ難しいし。それにフゥクスお姉ちゃんと同じスタイルを目指したんじゃ、相乗効果を引き出すのに都合が悪いでしょ?」

「それも尤もなのだ。違う良さをかけ合わせてこそ、高みへ登っていけるのだ!」


 将来どうなるかはさておき、現在のアリエルちゃんは華奢である。とてもじゃないけど、剣を二本も背負って立ち回れるほど、ガッシリとした体つきはしていない。まぁそれを言うのならフゥちゃんも大差ないし、そもそもこの世界基準で言うと筋肉よりもステータスが物を言うからね。極論、筋肉はなくともパワーは宿る、ファンタジー仕様なわけで。それに鑑みれば、アリエルちゃんが双剣を振り回すことも可能ではあった。

 が、双剣使い同士がわざわざ好んでPTを組む理由ってのも無いだろう。相乗効果を狙うのであれば、意識的に差別化を図るべきだ。

 って考えると、なるほど敢えてのツインダガーも良い選択のように思えてくる。


「マスタリースキルはどう?」

「生えてきたよ」

「おぉ……自分に合ってるって言うだけのことはあるね」


 マスタリースキルがあるから使いやすいのか、使いやすいからマスタリースキルが生えたのか。卵が先か、鶏が先か。

 何にせよ、適正面から見ても十分な様子。この先もずっとその道を歩むのか、はたまた何処かで転機を迎えるのかは定かでないにせよ、一先ず自分のスタイルらしきものを見つけられたというのなら、方向性を持って自己研鑽に励むことが出来る。素晴らしいことじゃないか。


「でもチームミコバトにツインダガー使いは居ないから、せっかくだしこの機会にお手本を見せてもらおうと思って。出来る?」

「なるほど。ってことは、今回私はツインダガーをメインにビルドを組む感じか」

「うん、それでお願い」


 そう言えば元は、今回どんな装備で行こうかって話だったっけね。アリエルちゃんの要望はツインダガーでの戦い方を見せて欲しい、と。

 チームミコバトでツインダガーを扱えるとしたら、オルカとか、敵に接近されたときのクオさんやソフィアさん、あとは一通りの武器はある程度使いこなせるレジェンズくらいか。しかし何れもが、必要があれば使えなくもないって程度。そりゃ一般冒険者からすると、十分に過ぎるレベルだろうけれど、チームミコバト基準で言うと非推奨評価に当たってしまう。

 けど、私であれば……。


「アリエルちゃん、師匠の万能マスタリーは凄いのだ。だけどそれに甘えない師匠は、裏でいろんな武器を実際に扱って鍛錬してるのだ!」

「な、何で知ってるのさ……」

「師匠のことだから、どうせやってると思ったのだ」

「なるほど、これが鍛錬バカ……」

「!」


 なんか、誘導尋問を食らったような気分なんですけど。

 まぁでも、本当のことではある。鍛錬バカ呼ばわりはちょっとアレだけども。

 サブボディは肉体疲労と無縁の存在。ゆえに、身体を動かして技術を学ぶ、というような鍛錬において非常に強いアドバンテージを有している。

 まぁ、その点はミコバト内で鍛錬するのと似たようなものだから、最も優れた鍛錬方法だ! とまでは言わないけれど。しかしスキル経験値の足しになるって面から言うのなら、やっぱりサブボディによる鍛錬は強い。

 ツインダガーの扱いについても勿論、地道に練習を積んでいる。なにせ、数多ある武器種の中でも、中二的でカッコいいものの一つだからね。熱も入ろうというもの。

 他だと、例えば糸の扱いだってコソ練してたりする。糸使いのキャラってカッコいいもん。ポロッとそういう武器を入手する機会もあるわけだし、そりゃ練習するでしょう。

 っと、思考が逸れてしまったけれど。


「それじゃ、実際に装備やスキルを選ぼうか」

「のだ。アリエルちゃんは引き継ぎデータをそのまま使うのだ?」

「うん、そのつもり。そうだ、せっかくだからちょっと紹介させてよ」


 いよいよ本題であるところの、実際の装備選び。今回はどんな装いでダンジョンへ挑もうか、というビルディングのお時間。

 とその前に、アリエルちゃんの引き継ぎデータ自慢が始まるようだ。


 私の知らぬところで幾度も行われた、アリエルちゃんによるダンジョンアタック。

 どうやら手の空いているメンバーを誘い、今日のように一緒に潜ってもらう機会もちょいちょいあったようだけど。その度に彼女はいろんな知識を吸収し、経験を得、そして戦利品を獲得してきたのだろう。

 アリエルちゃんの披露してみせた装備は、既に何れもが特殊能力を宿しており。未だ冒険者資格すら得られぬ幼い身で携えるには、明らかに過ぎた品。されども自身の力で集めたというのだから、相応であると認めざるを得ず。

 それらを一つ一つ、簡単な入手エピソードとともに紹介してくれる彼女は、実に楽しげであり、誇らしげでもあった。

 将来有望すぎないか……?

今週も誤字報告感謝です!


もう10月かぁ。ならハロウィンですね!

私、イベントごとって好きなんですよ。参加するわけではないんですけど、皆がワイワイしているのを眺めるだけでも心躍ると言いますか。

まぁ、マナーの悪い輩を見ると、自転車のサドルに鳥の糞を見つけたときのような気持ちになりますが。清々しい朝とかにね、水をさしやがってこの野郎っていう。

皆さんも己の行動はきちんと顧みましょうね! 私も出来るだけ気をつけます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 >鍛練バカ どっかのアミ○みたく「俺は甜菜…じゃない天才だ!」と自己研鑽しないやつより、ちょっと引く位に修行してる人の方がカッコいいとは思いますけどね。 アリエルちゃ…
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