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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第一〇九話 副業への道

 相変わらず降り止まぬ雨音をバックに、私たちはダイニングテーブルを囲んで意見を交わしていた。

 議題は、私専用武器の開発に関するアイデア出しだ。

 テーブルの上にはアイデアを書きなぐった紙や、描きかけの設計図なんかが散乱している。

 私たちはそれに目を落としながら、案や疑問などを挙げていった。その都度小さな議論が生じ、また次の疑問や提案が飛び出す。


「魔法で刃を作ったなら、わざわざ刃物を取り付ける必要がないのでは?」

「確かにそうだね。ただそうなると、燃費や出力がどうのって話になる。そうなると、武器っていうより魔道具の分野になっちまうからね……私一人の手には負えなくなっちまう」

「協力者を募る?」

「それも悪くはないが、何分当てがないんだよ。それに魔道具職人なら誰だって良いわけでもない。確かな実力がなくちゃ厳しいだろうね」

「しかもミコトに係る案件だからな。情報が漏れる可能性も低くないだろう」


 聞いてる分にはとてもロマンのある話だと思う。

 魔道具と武器を融合した、カテゴリー不明の専用武器。うーん、ときめきが止まらない!

 が、それを実現するのはいかにも難しいようだ。

 信頼の置ける魔道具職人をどこかから見つけてこなくちゃならない。しかもオレ姉の要望に応えられるような腕の持ち主を。

 そうなると当然、武器作りにかかる費用もとんでもなく高く付いちゃうんだろうなぁ。現段階でも既に懐が寒いっていうのに。

 普通に考えたら、まぁ夢物語で終わってしまいそうな話だ。


「はぁ……いっそのこと、私が魔道具を作れたら解決なのにね」

「「「「…………」」」」

「ちょっと、急にみんなで黙るの止めてくれない?」

「ミコト、魔道具作り……やってみないかい?」

「え」


 思いがけない提案に、面食らってしまった。

 魔道具って、私みたいな素人にも作れるようなものなの? 戦闘職だよ私。

 あ、いや、でも、うーん。プレイヤーって本当に戦闘職なの? っていう疑問も一応あるか。

 私のジョブである【プレイヤー】は『ゲームプレイヤー』の意味だと思っているのだけれど、仮にそうだったとして、それがどうして戦闘にのみ特化していると言えるのだろう。

 ゲームと言っても様々な種類がある。

 それこそ中には『モノ作り』を楽しむゲームだって。


「……うん。可能性はあるかも……よし。やるだけやってみようかな!」

「そうこなくっちゃね!」

「で、でもミコト様、今から魔道具作りを学び始めるとなると、武器の完成は当分先になってしまいますよ?」

「待ってココロ。案外そうとも言い切れないかも知れない」

「ミコトはつい三ヶ月前、ろくに戦い方も知らなかったのだろう? それなら……」


 皆の視線が、改めて私へ向かう。や、そんな期待されても困るんだけどね。

 例えば地球には、スキルや魔法の代わりに科学があった。機械があった。

 他でもない、私が大好きなゲームというのもこれに当たる。

 ゲーム以外にも、様々な機械が身の回りには溢れていて、私たちはそれを当たり前のように使いこなしていた。

 だけれど、それの詳しい仕組みを知っているかと問われれば、そんなことはない。

 ましてやそれを一から作れるかだなんて問われたら、絶対ムリだと断言できる。


 なら、魔道具はどうだろう?

 私はどういうわけか、魔法を人よりは上手く扱うことが出来るらしい。魔道具の扱いも慣れたものだ。

 だけれど、だからといって魔法の詳しい原理を紐解いたわけでもなければ、魔道具の作り方を知っているわけでもない。

 知らないからこそ学ぶのだと言われたなら、まぁそれはそのとおりなのだけれど。

 それを短期間で覚え、技術を身に付けるだなんてことが果たして出来るものなのか。

 私は無責任に、万能マスタリーへと期待をかける他無かった。


「あまり過度な期待はしないで欲しいんだけど。まぁやれるだけのことはやってみるよ」

「もし魔道具作りを本当に覚えてしまったら、ミコトはいよいよ『なんでもできる』を地で行くことになりそう」

「既にほぼほぼ何でも出来てる気もするけどねぇ」


 なんて茶化されながら、私は冒険者稼業の傍ら、魔道具職人をも目指すことになったのだった。

 とりあえず老後はこれで食っていける! ってくらいの技術が身につけば御の字かな。

 問題は何処で技術を学ぶかなんだけど、当面は図書館で勉強するか。


 という具合に、一先ず武器へ魔道機構を組み込む案は保留となり、話はまた振り出しへ。

 とは言えそこそこイメージは見えてきているのだ。

 まず近接でもしっかり武器として扱えること。

 魔法を使用する際の媒体としても有用であること。

 特殊能力を付けること。

 それらが一先ずの条件として挙がっている。特殊能力はともかくとして、近接武器と魔法媒体を兼ねるというのがやはりネックなようで。

 ぱっと思い浮かぶのは、打撃武器と杖を合わせたような『メイス』ということになるだろう。ココロちゃんが以前使っていたものが正にそれだった。

 しかしながら、それではオレ姉と私が大好きな『ぼくの考えた最強の武器!』ってコンセプトから外れてしまうことになる。

 加えて、いずれは魔道機構を融合して、よりかっこよく強力な武器へ仕上げるのだと考えると、その下地になりそうなものが好ましい。

 そう考えると、やっぱり難しい話になってくるわけで。


「もういっそのこと、近接戦闘は黒太刀か舞姫に任せて、中遠距離用の武器にしたら?」

「あ、実はココロもそれ考えてました」


 オルカとココロちゃんがそんな事を言い始める。

 確かにそれも一理あるのだ。なんでも詰め込もうとするからアイデアがまとまらない、というのは否めないことである。

 ちらりとオレ姉に視線を向けると、それに気づいたオレ姉がふぅと一つ息をついた。


「まぁ、そうだね。多様性のある武器は確かにロマンだけど、それを実現するにはミコトが魔道具技術を身に付けてからでも遅くない。なら今回は、中遠距離用の武器ってことで話を詰めたほうが良さそうだね」

「やれやれ、ようやく話が一歩進んだみたいだな」

「これが産みの苦しみ?」

「大変なんですねぇ」


 皆がしみじみと感想をこぼす中、しかしてオレ姉は次なる難題を投下してきたのである。

 それは先程後回しにしたもの。実は私もずっと気になっていたそれとは、即ち。


「で、だ。特殊能力についてなんだが」


 これである。

 オレ姉の説明によると、武器に特殊能力を付与する際、それはギャンブル要素となるのが一般的だというのだ。

 というのも、特殊能力は装備製作に用いる良質な素材の中で眠っているものであり、そんじょそこらの鑑定スキル持ちでは素材が秘めたるそれを見破ることは出来ないという。

 精々が、特殊能力を秘めた素材であるか否かを判別できる程度なのだと。


「私の目標は、黒太刀にも負けない装備に仕上げることさ。そのためには、狙った特殊能力をあてがって、武器の形状と相乗効果を引き出すことが重要だと考えている」

「それはつまり、事前に素材の持つ特殊能力の詳細を見極めないといけない、ってこと?」

「そうなるね」

「オレ姉にはその鑑定ができる?」

「出来ない」

「じゃぁ、鑑定士の知り合いとか」

「そんな腕の良い知り合いはいないかねぇ」


 ということで、理想的な武器を作り出すために、また別途必要なものというのが出てきてしまった。

 鑑定である。しかもかなり高度な鑑定スキルが必要とのこと。

 私たちは互いに顔を見合わせ、心当たりはないかと確かめあった。

 その結果。


「やっぱり、ギルドの買取おじさんが一番の有力候補かなぁ?」

「まぁそうなる」

「ココロもほかに思い当たる人はいませんね」

「右に同じだ」


 そんなわけで、一先ず話はここで一旦打ち止めとなった。

 ギルドへはこの後私が赴いて、買取おじさん(名前は知らない)に話を聞いて来ることにする。クラウも同行してくれるそうだ。

 オルカたちはそろそろダンジョンへ向かうというので、ワープでササッと送ることに。


「オレ姉、お茶ごちそうさま」

「お邪魔しました!」

「おう、またいつでもおいで」


 と、彼女らが短く挨拶を交わすのを待って、私はオルカたちとともにダンジョン付近へワープ。勿論事前にモザイクと、それに水除の魔法もかけてある。

 幸いワープ先で誰かに見つかることはなかったので、モザイクだけ解除して二人を見送った。

 それからオレ姉の店にとんぼ返りし、彼女に後でまた来ると伝え、クラウと二人冒険者ギルドへ向かう。

 まだまだ降らせ足りないのか、灰色の雨雲はごきげんにドンドコ雨粒を投げつけてくる。

 私もクラウも水除の魔法のおかげで、どうということもない。ただ、なるべく人目は避けて歩いた。魔法は他人に見せびらかすようなものじゃないからね。

 そも、スキルバレというのはリスクなのだ、私の場合は特に。朝はそこに思い至らなかった。

 ということで、念入りに仮面の力で気配を隠してまで私は注意を払った。


 そうして程なくし、ギルドの入口をくぐった私とクラウ。冒険者による混雑はなく、ロビー内は静かなものだった。

 ソフィアさんがこちらを目ざとく見つけ、小さく手を振ってくる。そんなことされたら、振り返すしか無いじゃないか。

 だがあまり気を取られてもいられない。私たちはさっさと用件を済ませるべく、買取カウンターへと足を向けた。

 そこにはいつものおじさんが、暇そうに欠伸をしている姿があった。

 見た目は異世界クオリティの、無駄に渋いおじさんなのだけれど、話してみると拍子抜けするほど普通の人だ。声まで渋いなんてこともなく、公務員然としたただのおじさん。

 しかしながら、長年ここで素材鑑定を行っている実績があるはず。スキルレベルも相応に高いのではなかろうか。

 私たちはそれなりの期待をもって、いざ買取おじさんへと声をかけたのである。

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