表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

44.一香の居ない愛の告白

「なんでここに……」

 羅々ちゃんの家からここまで、軽く一時間以上はある。

 一体何時からここにいたんだ……?


「ねぇ、高倉くんのお母さんとお兄さんって素敵な人ね!! 昨日すっごく楽しかった!」

 羅々ちゃんが俺の腕に自分の手を絡めてくる。


「私すっかり仲良くなっちゃった。今度は実家にも遊びに来てって言われちゃってさ」

 鼻歌を鳴らしながら一方的に喋りまくる羅々ちゃんが何を企んでいるのか……


 ガチャリと隣のドアが開いた。

「……あれ? ……今日相葉さんここに泊まってたの?」

 急に表情が険しくなった羅々ちゃんは俺の腕を強引に引っ張り出す。


「ね、早く行こ!! 相葉さんに盗み聞きされたくないし」

 羅々ちゃんの一言に、さすがにもう我慢が出来なかった。


「一香の事悪く言うなよ! 彼女はただそこにいるだけじゃないか!!」

 絡まった彼女の腕を振り解く。


「……そんな事言っていいの?? これ、みんなに言っちゃうよ?」

 そう言って目の前に出されたスマホの中の写真は俺の中学の時の卒アル写真だった。


「カッコイイ高倉くんが中学までこんなだったって知ったら、みんなびっくりしちゃうよねぇ!」

 クスクスと怖いくらい愉しそうに笑っている。


「別にいいよ。バラしたけりゃ好きにしろ!」

 そんなの、もうどうでもいいんだ。

 誰にどう思われようと、俺は一香にさえ目を向けてもらえればそれで十分だって分かったんだよ。


「高倉くんっ!! ダメだよ、そんなの絶対!!」

 一香が泣きそうな顔で俺を見ている。


「私の事はいいから、羅々ちゃんと先に行って! お願い!!」

 そう言って一香は俺と羅々ちゃんの背中を押した。


「そんな訳にいくかよ!」

 そんな俺から逃げるように一香は自分の部屋に戻っていく。


「先に行ってくれなきゃ、私今日学校休むから!!」

 そう言って内側からガチャリと鍵をかける音が聞こえた。


「ほらね、相葉さんもそう言ってくれてる事だし、一緒に学校いきましょ!」

 俺の弱みを握って我が物顔でいる羅々ちゃんに心底嫌気がさした。


 俺は一香が学校に来てくれる事を信じて羅々ちゃんが追いつけないくらいの速度で走り出した。


 ◇◆


「一香、来てる?」

 俺は何度も隣のクラスを訪ねた。

 昼過ぎになっても来てる様子がない。


 一香のクラスの担任をつかまえて事情を聞いたら、体調不良で休むと連絡があったそうだ。


(……なんで……? どうして来ないんだ!!)

 あの写真の事、気にしてるのか?

 確かに入学当時はこんな姿を晒される位なら、死んだ方がマシだって思ったかもしれない。

 でも、今の俺はもう違うんだ。

 どんな姿だって一香は変わらず俺のことを好きでいてくれたじゃないか!

 千人に軽蔑されても、一人の一香に好きでいてもらえた方が俺は幸せなんだよ!


 昼休み、俺は羅々ちゃんに写っているのは本当に俺なのか?と疑いをかけてスマホの写真を開かせた。

「ちょっと借りるな」

 ほんの少しの隙を狙って羅々ちゃんのスマホを手に取り、教壇の上に駆け上がった。


「みんな、ここに写ってる奴、誰か分かるか?」

 一斉にクラス中の顔が向けられる。


「なんだよ、可愛い女の子の写真でも見せてくれんのか?」

 そんな事を言いながらゾロゾロとみんなが近寄ってくる。


「なんだよ、それ! 男じゃん!」

 みんなのガッカリした表情にイイ気はしなかったが、こうして注目される事に何も感じなかった。


「これ、俺」

 自分の顔を指差しながら少しスクロールして写真の下の名前を見せた。


「えっ?! マジで?? 嘘だろ?!」

 女の子達の悲鳴に近い声と、男子の笑い声とが入り混じる。


「高校に入る前にダイエットして痩せたんだ。俺は元々たいした取り柄もない、卑屈で空っぽな人間だったんだ」

『なんでわざわざそんな事を暴露する必要があるんだ?』皆んながみんなそんな表情をしていた。


「このクラスの相葉一香は、俺と同じ中学で、こんな巨漢だった俺のことをずっと好きでいてくれた。俺はそんな一香の気持ちを何度も踏みにじるような酷い事をしたのに……彼女はまだ俺を好きでいてくれてる。だから、応えたいんだ、その気持ちに。なにより、……俺が一香の事が好きで好きでどうしようもなくなったんだよ」

 静かに俺の話に耳を貸してくれていたみんなが、『えっ?』とどよめき始めた。


 いつもいつも俺に突っ掛かって『ウザい』と思っていた奴が急に声を上げる。

「……お前さ、なんか変わったな。嫌な奴だとずっと思ってたけど、俺は今の話を聞いてなんかすごく興奮してる」

そう言ってハハハと笑った。


「ま、あたしも相葉さんといる時は高倉くん何か雰囲気いつもと違うなぁって思ってたし……そんなに強烈に愛の告白できちゃう彼女がいるんならウチらの入る隙なんてなくない?」

 女子達が揃って頷きだす。


「もうっ!! 一香ちゃんに聞かせてあげたいよ、今の言葉!!」

 その後ろの方で一香の仲良くしてる清水桃華が涙ぐんでいた。


 パチパチと少しずつ拍手が上がり、クリスマスのせいもあるのか教室中が色めいた空気に包まれていく。


 俺はそんなみんなをかき分け羅々ちゃんの姿を探したが……

 彼女はどこにもいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やだ陽一くんイケメン、キライじゃないわっ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ