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34.四人のカオスな温泉旅行?!

「じゃあ、取りあえず説明してもらおうかな」

 何とか気まずい空気を払拭しよう。


「俺は高倉くんとは初対面じゃないから顔は知ってると思うけど、一香ちゃんと同じバイトをしてる佐久間真也と言います。大学生で20歳」

 沈黙は続く……


「そ、そしてコイツが糸田咲。俺とタメ。大学生……で元カノ」

 咲の肩をポンと叩いて紹介する。


「元カノ……」

 高倉くんが反応した。


「そ、元カノなの。今でもまぁ、こうして普通に絡んでるけどね」

 いつもよりもゆっくりな口調で高倉くんに話しかけた。


「あ、言っとくけど一香ちゃんは妹みたいな可愛い後輩で、付き合ったりとかはしてないからな」

 聞かれた訳じゃないけど、おそらくその顔は気になってんだろうな。

 俺を見る視線が痛すぎるぞ!


「咲さんには普段から色々お世話になってて……、昨日羅々ちゃんに、今日高倉くんちに行くから『お姉さんに会わせて』って言われちゃって……。高倉くんには隣に住んでる事言うなって言われてたし、もし知られちゃったら……羅々ちゃんとも高倉くん、気まずくなっちゃうでしょ?」

 チラッと一香ちゃんが高倉くんを見た。


「だから、急で申し訳なかったんだけど、咲さんにお姉ちゃんのフリをお願いしたら快くOKしてくれて。高倉くんには全く話してなくて、ごめんなさい」

 一香ちゃんは高倉くんに深々と頭を下げた。


「別に……一香は全然悪くないだろ。羅々ちゃんと気まずくなったって、俺は別に何とも思わないし」

 真っ赤な顔でフイとそっぽを向く。


「えっ? なんで?」

『なんで?』じゃないだろ、一香ちゃん!!

 そう言うことに決まってんでしょ?!


「だから、羅々ちゃんにどう思われようが俺にとってはどうでもいいことだって言ってんだよ!」

 急に声を荒げたもんだから一香ちゃん、萎縮しちゃってんじゃないか!


「だからね、一香ちゃん……」

 俺はもどかしくてつい高倉くんの思いを解説しそうになった所を咲に激しく膝を叩かれて止められた。


「痛っ!! 何すんだよ!」

 鋭い咲の睨みに俺は口を噤む。


「あ、あのさ! せっかくこうして顔を揃えて仲良くなったんだから、今度四人で日帰り温泉でも行かない?」

 おい、咲。この空気、お前は感じれてるか?

 温泉どころか、会話すらままならないのに!!


「私最近肩凝っちゃってさ〜! 行きたい温泉あるんだけど友達みんなに年寄りクサイって断られちゃって。今日せっかく協力してあげたんだから付き合ってよ〜! お願い!!」

 咲は駄々っ子のように身体を揺らしながら顔の前で両手を合わせた。


 何となく魂胆は分かるけど……

 少なくともこの二人だけじゃなくて、俺とお前も今、なかなか気まずいだろうが。


「私はいいですけど……なんなら咲さん、私と二人で行きますか?」

 一香ちゃんが最大限に気を遣ってくれているのが分かる。


「一香ちゃん、俺も行くよ。人数多い方が楽しいだろ? 高倉くんも行くよな?」

 わかった、わかった。

 もう先のことなんか知った事か!

 どの道この二人にはじっくりと向き合う時間が必要みたいだし、乗っかった船だ、最後まで見届けてやるよ。


「……まぁ、いいですけど、別に」

 高倉! 素直になれよ!!

 嬉しいんだろ??

 俺も本命には奥手なタイプだが、お前も大概だな!


「よし、じゃあ決まり!!」

 咲はニッコリと笑っていた。


 ……久しぶりだな、俺の隣でこんなに笑ってる咲を見るの……


 ようやく和やかになりつつある空気。

 区切りをつけるかのように『ポン』と高倉くんのスマホの通知音が鳴る。

 手に取り『拓兄、まだいんのか』と呟いた。


 そうだ!!

 咲にいきなり迫っていたあの謎のイケメンの正体は……


「なぁ、さっき拓兄って呼んでたのは高倉くんのお兄さん?」

 ここはハッキリさせておかなくては!


「あ、そうです。過度の女好きで、付き合ってた女の子と別れ話をした後によくウチに逃げ込みに来るんです。なんか咲さんにも色々失礼な事言って……すみませんでした」

 素直に頭を下げていた。

 君は女好きではなかったのかな?

 過去にとっかえ引っ換え女の子を連れてきていた高倉くんに、俺は心の中で突っ込んだ。


「別にいいわよ。ああ言う男にはなれてるし。似たようなのが隣にもいるしね」

 おいおい、いつの話してんだよっ!

 咲と付き合いだしてからは俺はずっと咲しか見てなかったし、別れてからも誰とも付き合ったり遊んだりしてないぞ?!


「……はは」

 言いたい事は山ほどあったがまた空気を悪くするのもなんだと思ってなんとか堪えぬいた。


「拓兄には俺からうまく言っときます。もう、色々女の子のことに関しては病的なんで」

 頼もしい高倉くんの言葉にホッとした。


「温泉の事、詳しく決まったら一香ちゃんにまた連絡するわね!」

 そう言って咲はカップを手に取り最後の一口を飲み干した。


「じゃ、そろそろ行くわね。御馳走様!」

 そう言って立ち上がる咲の後を追うように俺も上着を着た。


「今日は色々お騒がせしました。本当にありがとうございました」

 一香ちゃんは何度も俺たちに頭を下げていた。


「あの……静かに外出て下さい」

 高倉くんが申し訳なさそうに小声で話す。


「あぁ、近所の人? 大丈夫よ、そんな大騒ぎしないから」

 アハハと咲は笑って玄関を開ける。


「いや……そっちじゃなくて……」

 途端に高倉くんの部屋の扉がガチャリと空いた。


「咲ちゃん!! どっか行くの?? お願い、連絡先だけでも教えてよ〜」

 そう飛び出してきたのは『拓兄』だった。


「おい、いい加減にしろよ!」

 俺は少しでも咲から『拓兄』から遠ざけようと間に入る。


「あぁ、彼氏さんだっけ? 俺、本気になった女の子に彼氏とかいても気にならないタイプなんで」

 そう言って咲の手の中に無理やりメモらしきものを捻じ込んだ。


「咲ちゃん、この人に嫌気がさしたら、いつでも俺のところに連絡してね! 待ってるから」

 そう言って厚い眼差しを咲に向けていた。


「ほら、咲行くぞ!!」

 呆気にとられている彼女の手を引き、俺はアパートの階段を下っていく。


「中々強引だったわね。私嫌いじゃないな、あぁいうストレートな人」

 ……おい、正気か?

 何、メモ大事そうにポケットに仕舞い込んでんだよ?!


 あぁ! どうなってんだ、一体!!



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