30.なんでここに羅々ちゃんが?!
「高倉くん、めっちゃカッコよかったね〜! 最近なんだか性格丸くなった気がしない?」
今日は校内の弁論大会開かれた。
舞台の上に颯爽と歩いていく高倉くん。
少しの緊張も感じさせず、サラッと当たり前のように話して一礼する姿は体育館中の女子生徒の目を釘付けにしたに違いない。
順番を待っている生徒達はみんな異様に汗を掻いていたり、顔色が悪かったりと見ているだけで痛いくらい緊張が伝わってくるようだ。
そんな中、発表を完璧に終えた後は大拍手が巻き起こっているのに、何事も無かったかのように飄々と無表情で舞台を下りて行く高倉くんの姿を女の子達は目で追いながら、ピンク色のため息を漏らしていた。
「でもさ、最近遊んでくれなくなったよねー。高倉くんにガチ恋の女の子達、すっごいガッカリしてたもん」
私の前の列の観客席に座っている女の子達の会話が聞こえてくる。
それもそのはず……実は最近ではもう土日も関係なくお互いの家で勉強するのが当たり前のようになっていて……
今まで何日も顔を合わせない日なんてザラだったのに、一気に何というか……仲良くなって、ここ最近は学校でも頻繁に私のクラスまで顔を出しに来てくれていた。
最初は羅々ちゃんに会いに来たと思っていた女の子達も、いつの間にか私といる時間の方が多い事に気づき始めたのか……高倉くんが自分のクラスに帰った途端、私の方を見てコソコソと噂をされている気がしていた。
今までずっと避けられていた高倉くんが少しづつでも歩み寄って来てくれていることが凄く嬉しい!!
嬉しいんだけど……
他の女子達の刺さるような視線がとっても痛い。
特に羅々ちゃんは私と高倉くんが一緒にいるのを目撃すると必ず間を割って入ってくる。
学校で仲良くできる事は嬉しいんだけど……
やっぱりいい気しない女の子はたくさんいるよね。
(思い切って……話してみようかな……? 私たちは恋人なんかじゃないんだし……)
いつものように高倉くんの部屋で勉強をして、そろそろ切り上げるかって話になった。
(もう、今しかない!!)
「あの、学校での事なんだけどさ……一緒にいると、その……私と高倉くんの事誤解する女の子がいるからさ」
うぅ、言いづらい。
せっかく仲良くなって来たのになぁ……
「うん? どうした?」
テーブルの上を片付けていた手を止めてじっと私を見つめている。
「……あ、あの……あのさ、高倉くんは私なんかと一緒にいて困ってないの?」
あんなに女の子に囲まれて嬉しそうにしてたのに、ここ最近だもんなぁ、急に私の勉強見てくれるようになったの。
「困る? なんで?」
やっぱり言えない。
せっかく自分の時間を私のために使ってくれているのに。
急に学校では少し距離を置きたいなんて贅沢な事、絶対に言えない!!
「えと……。ほ、ほら、高倉くん、私の事思いっきり避けてたじゃない。前だって困るって言ってたじゃない」
そうよ、あんなに避けられてたんだから、私。
「……あの時は……本当にごめん。……今はそんな風に思ってないよ」
ドキンと鼓動が高なった。
……どういう……意味……?
「なぁ、今度一緒に遊びに行かないか? たまには気分転換で」
「……えっ??」
ビックリして……頭が真っ白だよ!!
そんなに優しい目で見つめられたら勘違いしちゃうよ……私。
「いいの? 私で……?」
急にフイっと目を逸らして頭を掻いた。
「今までの、お礼とお詫び……ちゃんとしたいし……な」
ほんのり顔を赤くして俯いている姿が愛おしすぎて……
『大好き』って言葉が喉元まで出かかったのに。
どうしても勇気が出なくて……今の穏やかな関係を壊したくなくて言えなかった。
「行くっ!!」
飛びつきたいくらい嬉しいんだよ、本当に。
「じゃあ、詳しい事はまた今度」
「うん。楽しみにしてる」
まだ夢でも見てるのかな……
こんなに幸せな気持ちで身体中がいっぱいになったのって、もしかしたら生まれて初めてかも。
自分の部屋に戻ってノートを開くと、高倉くんの文字と私の書いた文字がページいっぱいに仲良く並んでいる。
「もうちょっと勉強頑張ろうかな。高倉くんに少しでも近づけるように」
ポソリと口に出したら顔が綻んでしまう。
こんな事を素直に言える自分が嬉しかった。
(あれ? お気に入りのシャープペンがない)
イルカのチャームのついたいつも愛用しているやつ……
高倉くんちかな??
慌てて高倉くんの部屋に引き返そうと玄関を出た時だった。
「相葉さん……?」
大きな目を限界まで見開いて驚いている羅々ちゃんが私の姿を捉えたまま、高倉くんの部屋の前で棒立ちしていた……




