24.逢いたい……
思いっきり高倉くんの頬を叩いてしまった。
今でもまだ掌がジンジンしてる……
城田くんとはここ最近急激に距離が縮まった。
面白いし、一緒にいると自分の中から高倉くんが完全に消えていくような気持ちになった。
きっとこうして毎日過ごしていったら、きっと忘れられる。
高倉くんの声も表情も……城田くんに上書きされて自然と私の中から居なくなっていくのかもしれない。
そうは思っても『好き』なんて気持ち、すぐには生まれない。
4年近い片想いの気持ちはそんな簡単に消えては行かない。
でも、もしかしたら……
もしかしたら……城田くんの事を好きになれるかも知れない。
穏やかに微笑んでいる城田くんの横でそう思い始めた矢先に突然彼から告白された。
まだ高倉くんが完全に私の中から消えていないのに。
遠目で見かける度にまだ心臓がドキンと鳴ってしまう自分の馬鹿さ加減を嫌でも思いしらされる自分。
城田くんの事が本当に好きになれるかどうかなんて……とても自信が持てなかった。
だから『ずっと好きだった人がいるの』正直にそう言って一度は断った。
それでもう終わりだと思った。
高倉くんを忘れるために付き合うなんていけない事だって分かってたから……
それなのに城田くんは、その相手が誰なのかも聞かずに『それでもいいから。俺には相葉さんに好きになってもらう自信があるんだ』って。
私はその言葉に甘えて、やっとの思いで一歩前に踏み出せたと思ってたのに。
「相葉さん!!」
高倉くんに腕を引かれた後、散々城田くんは私を探してくれていたようだった。
「……ごめんなさい。私、やっぱり城田くんとは付き合えないよ」
結局何も変われなかった。
高倉くんに言われた『城田は一香には似合わない』その言葉は私の胸を深く鋭く突き刺した。
悔しいけどその通りだよ。
こんなに卑怯で醜い私に城田くんが似合うはずがない。
聞きたくなかった言葉から自分を守るように、思わず手をあげてしまった。
「ちょっと待ってよ!! 突然キスしようとしたのはごめん、ちょっと焦ってたんだ……。本当にごめん。でも……まだ相葉さんだって何も俺のこと知らないだろ? もう少し考えて欲しいんだ。本気で相葉さんと付き合いたいんだ」
彼の真っ直ぐな瞳から溢れる自信は、今にも消えて無くなりそうな私にはあまりにも眩しすぎた。
「考えても一緒だよ。私城田くんにに好きになってもらえる資格なんてないの。だから……」
「分かってるよ。高倉の事好きなんだろ? でもよく考えて欲しい。俺は女の子と遊んだりしない。ちゃんと相葉さんの事だけ見てるから……結論は今出さないで! いつまでも待ってるから」
高倉くんが好きだって事……気づいてたんだ……
「もう強引に近づいたりしない。でも相葉さんの彼氏候補の中に……俺の事、入れておいて欲しい」
軽く右手を振りながらそう言い残して走り去った。
(どうしよう……)
もう何かを考える事すら億劫になっていた。
誰かを好きになる事も、好きな人を忘れる事も出来ない私。
もう……大嫌い……
◇◆
連休はバイトでいっぱいにした。
高倉くんが隣にいるのかと思うと平常心を保っている自信がなかった。
あれから桃ちゃんと城田くんがヒソヒソと何やら影で会っているようで、もう私のことなど完全に忘れてしまったのかなと思った。
残念な気持ちよりも……素直にホッとした。
何をするにも集中できなくて成績は下がるわ、バイトでミスするわでもうメンタルがボロボロだった。
「はぁ……生まれ変わりたいな……」
人生全部一からやり直したい。
高倉くんに出逢わなかった人生だったら……幸せだったのかな……?
疲れた足でようやくアパートに辿り着いた。
(美味しいもの……食べて元気出すか!)
無理してでも台所に立った。
何かをしてないと時間がなかなか過ぎていかない。
頭の中にハンバーグが浮かんだ。
あの雨の日……ここに高倉くんが来たのは夢だったんだろうか?
勝手に手が動いた。
一緒に高倉くんと食べたあの味を、どうしてももう一度食べたくなった。
言いようのない、穏やかで優しくて……ドキドキした時間が蘇って来るようだった。
ボウルにたっぷり二人分の挽肉が入っている事がなんだか嬉しかった。
(幸せだったな……食べてくれて)
気がつけば一人きりの部屋で二人分作っていた。
部屋のどこを見ても高倉くんと笑っている声が響いている気がした。
逢いたい……
もう……顔を合わせる事も出来ない位酷い事をしてしまったのに……




