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12.波乱を呼ぶ観覧車

「高倉くーん!! こっちこっち!」

 遊園地のゲート前で楽しそうに羅々ちゃんが僕に向かって手を振っている。

 やっぱり可愛い子が僕を待っている姿って悪くない。


「ごめん、待った?」

 こうなる事は予想してたけど、早速スルッと腕を絡めて来た彼女をいつものようにさり気なくかわして、少し距離を置き歩き始める。


「ねぇ、いつになったら手を繋いでくれるの?」


 またその話……

 全くうんざりするなぁ。

 なんで女の子ってのは手を繋ぎたがるんだろう?

 繋いでるうちにお互い汗をかいて気持ち悪いじゃんか。


「別にただ遊びに来ただけだろ? 手なんか繋がなくったって僕は楽しいよ」

 彼女は不満そうに『この前は日曜日たっぷり繋いでくれるって言ってたのに……』とブツブツ文句を言っている。


「いいから、いいから。中入ろうぜ!」

 入園料はしっかりと割り勘で入り、その時もらったパンフレットに目を通す。


「何から乗る?」

 少しばかり不機嫌になった羅々ちゃんに声をかけると、僕に向かってわざとらしくため息をつきながらアトラクションを指さした。


「あれ……?」

 指の先に目をやると、大きな観覧車。


「いきなりあれかよ……」

 なんか嫌な予感がする。

 この()やけにスキンシップしたがるし。

 そして何より僕は高いところが大嫌いだ!


 ま、外を見なければ……

 行けるかもしれないが……

 早速情けないところを彼女に見せるわけにはいかないからな。


「なぁ、これだけアトラクションあるんだから、あれは後にしない?」

 あわよくば面倒臭い事になりそうだし、許されるなら乗らずに帰りたい。


「ヤダ! 観覧車に乗る!!」

 駄々っ子の様に頬を膨らませる彼女を横目で見ながら、しょっぱなから機嫌悪くさせたら後々気不味くなるかと思い直して渋々観覧車に向かった。




「おい、結構行列出来てるな……」

 待ち時間40分か……

 ただ上って下りて来るだけのものに40分も無駄に時間を使うのが何だか勿体無い。

 でも羅々ちゃんをチラッと見ると横で嬉しそうに乗る気満々でいる。


(仕方ないか……)

 ため息混じりに列にならんだ。

 彼女が僕に向かってマシンガンの様に何か話している。

 適当に相槌を打ちながらボーッと前を見ていた。


(………ん?)

 三人前のカップル……アイツ、コンビニの色黒男じゃないか?!

 ったく一香のこと狙ってるとか言っときながら、別の女連れて来てデートかよ!

 やっぱり見た目通りチャラ男だったな。


 僕は心の中で嘲笑ってやった。

 そう、やっぱり男なんてこんなもんだ。

 モテる奴のみが自分のプライドを満たすことができる。

 あの色黒男も毎回女の子をとっかえ引っ換え連れて、いい思いをしてるんだろう?

 結局僕と同じじゃねーか!



「一香ちゃん、曇ってるけど寒くない?」



(……えっ? 今一香って言ったか……?)



 色黒男は自分の着ていたパーカーを隣の女の子肩にかけた。

「ありがとう、佐久間さん」

 そう言ってニッコリ笑い返すのは……やっぱり一香じゃないか?!

 しかも……メガネしてない……

 なんだ、あの服は……! 露出、多すぎやしないか??


 僕の見たことのない一香が、あの色黒男に幸せそうな笑顔を終始浮かべている……


(マジかよ……)

 そこから僕は何かに取り憑かれた様に二人から目が離せなくなった……


 ◇◆ ◇◆



「一香ちゃん、今日スッゴイ可愛いじゃん!」

 女の子っていうのは本当に服とメイクでえらく変わるもんだ。

 元々可愛い子だとは思ってたけど、ここまでとは!

 道ゆく男どもがみんなこっちを振り返ってる。

 彼女は全く気付いてないみたいだけど。


「咲さんの着ていた服のおさがりで全身コーディネートしてもらったんですけど……、ちょっと恥ずかしい」

 俯き頬染める彼女は奥ゆかしくて『高倉くん』には本当に勿体無い。


「なんか新しい一香ちゃんが見れて嬉しいよ。ホントよく似合ってる」

 ヤバイ、見惚れちまう。

 いかんいかん、俺はあくまでも二人のサポート役だ!


 スマホのバイブが鳴る。

(咲だな?)


『二人とも観覧車に向かったわ!』

 ふむふむ。『了解!』っと。


 実は今日、『高倉くん』たちを、密かに咲がつけている。

 彼らに動きがあったらすぐに俺に連絡が来るように打ち合わせ済みだ。


 もちろん一香ちゃんには今日ココに『高倉くん』とその連れのカワイコチャンが来てるって事は知らせていないし、できれば知られる事なく今日一日のミッションを終了させたいとは思っている。


「一香ちゃん。観覧車に行こう! この遊園地のおすすめみたいだぞ」

 俺は彼女の手を引き歩く速度を早める。

 ちょっと振り回してる感が否めないが……そこは頼む、勘弁してくれ!


「わぁ! 私観覧車大好きなんです!」

 嬉しそうに俺を見る。


「そうかそうか。観覧車は女の子の大好物だもんな!」

 彼女の頭にポンと手を乗せる。

 嬉しそうに頷く彼女を急いで列に並ばせる。

 目を凝らすとちょうど『高倉くん』と女の子がこっちへ来るところだ。


(ふう、間に合ったか……)

 結構神経使うしハードだな。

 無事作戦が成功するといいんだが……


 一香ちゃんに俺の上着をかけてやった瞬間、針のような視線が突き刺さる。

(ハハ……早速かかりやがったやがったな……)


 俺は一香ちゃんの最高の笑顔を引き出すために、今まで習得した女の子が喜ぶ事を次々と繰り出していく。

 喉が乾いてないかとか、楽しい話題を探したりだとか……

 着るもの、メイク……とにかく褒めて褒めて褒めちぎるっっ!!


 でも別に全て決して嘘じゃない。

 彼女を見て本当にしてあげたい、伝えたい事しか口に出していない。


 今まで見たことのない嬉しそうな表情で段々と心を許し始める彼女を、今アイツはどんな気持ちで見ているだろうか?

 なんとも思ってないわけ……ないよな?


 目の前の観覧車に乗り込んだ。

『高倉くん』に見えるように彼女をエスコートする。


 チラッと様子を伺うと……あれ?

 どうした……??



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