異世界と黙示録のラッパ
このせかいは。
双子のまおうと言う。邪悪なモノが世界を亡ぼさんとしていました。
それに争い続け、立ち向かったのは、ゆうしゃです。
世界を壊さんとするまおう。
それに立ち向かうゆうしゃ。
ゆうしゃは何度打ちのめされようと立ち上がっては立ち向かいました。
それは、この世界を守るためです。
なら、まおうは?
なぜ、まおうはこの美しき世界を壊そうとしたのでしょう?
これは、太古の昔のような近未来のおとぎばなし。
「聖女様、勇者様。よくぞ来てくださいました!ずっと、ずっとこの時を待っていたのです!
私達の世界を救ってくださる救世主様を!」
「は?」「え…」
私達兄弟は間抜けな声をする。突然と光景を変えた世界に。
「あぁ、失礼を。私はこの国の第1皇女。フロル・キャメロット・ファブリアスと申します
異界の強き方。高潔な魂のかの方々様。
私達を脅かす魔王をどうぞ打ち取ってください」
中世紀西洋のような服装。日本ではあり得ない金髪をはじめとした色取り取りの瞳に髪。
そして、足元に広がる怪しげな魔法陣。
非科学的な科学だ。
「…??あれ、意思疎通ができない。
貴方方はだれ?」
「……はは」
首を傾げる、詩に。僕は自虐めに笑った。
どうやら、人類の試みは成功したらしい。
銀河系太陽系第3惑星水の星地球。
科学技術により繁栄を極めていたのは今は昔。
そんな、終末期に日本という国で育った僕たち兄弟。
人類は衰退の一途を辿っていた。
そこで持ち上がったのは、人類救済計画。
事の発端は1人の理性を無くした科学者の世迷い言から始まった。
古代より受けた神の啓示は実現された。
神の身許に帰るときが来たのだ。
その全てを全ての者に教えてあげよう。と。
概要はこうだ。
黙示録による人類の進化、それに伴う肉体と意思の消失を人類の進化と評し、完結させる。
ようするに、黙示録のラッパだ。
人類はそれを進化と評し、身体を捨てる。
生きとし生けるもの生物は皆んな居なくなる。
昔の言葉で表すなら〝滅亡〟と言う言葉がしっくり来るだろう。
あれだ、あれ。意思、肉体を捨てみんなで神の身許に帰りましょって、あれだ。
神の所業と言う者もいた。
しかし、その内容を人は科学を持って証明してしまった。
長くなりすぎたテロメア。
地上を火の海にしてしまうほどの科学技術。
その、傲慢さ。
人が人として求めて止まなかった何かを人類は手に入れたのだから。
神ではないが、神気取り、いや、神なのかもしれない。因果律、輪廻転成、魂が行き着く宇宙の果てまで観測してしまったのだから。
僕たちはその実験体。
新世紀を告げるもの。
僕たちは神の啓示そのものだ。
「その実験は見事成功した。…生贄にされたこの星は可哀想だな」
「?…?」
そうなの?と、きょとんと首をかしげる詩に僕は苦笑した。
この世界には心底同情する。
「驚かれ、混乱されるのも無理もありませんわ。ですが、どうかご安心を。
高潔な魂をお持ちの勇者様、聖女様。その魂が為すべき事を覚えておいでです。
きっと、この世界を平和へと導くことでしょう」
「魂が…?なんの話をしているの?理解できないわ」
「国王陛下がお待ちです」
騎士の格好をした男達が僕たちの周りを取り囲んだ。まるで、僕たちが逃げるとでも言いたげだな。ご苦労なこった。
「さぁ」
「なぜ、意識を共有していないの?思考がまるでバラバラだわ。こんな酷い、プログラムは見たことがないわ」
「?動揺されるのも無理ありませんわ。大丈夫ですわ。ちゃんと、ご説明致しますわ。
その為には、父に。国王陛下に会わねばなりません。ですから、今は何も言わずに付いてきてください。どうか、心を鎮めて」
皇女と名乗った女はそう言いながら僕に胸を寄せてくる。召喚された異界の人間が、あれよあれよ良いように使われる想像が安易にできる。
きっと、全てを他人任せにして住人たる自分たちは神のように高みの見物。
「あれはなに?
甲冑にこんな石造の建造物。なんて非生産的なの」
「数千世紀前の技術だよ。生産性に溢れた古代の芸術だ。
…詩、落ち着いて。大丈夫僕がついてるんだら。僕が間違えたことなんてあった?
それこそ、非理論的だ」
「声帯を震わせている醒の方が非生産性よ。醒は言葉遊びがしたいの?」
僕は微笑みながらそう言った。
僕たちは、お互いの思考が繋がっている。
古い文献では、人と人とは対話をすると書いてあった。事実、研究者達は対話は多用していた。
特に、兄弟といっで詩は感情が少し抜け落ちてしまっていた。
科学者はそれは神に近い思考というが。
醒、うるさい。
ああ、でも気になるだろう。供物となる哀れな奴らは一体どちらのことだろうね。
「よくぞ参られた、勇者に聖女よ。其方らにはこの世界を脅かす魔王を討伐任をその力を持って遂行してもらいたい。なに、心配することはない。高潔なその魂が為すべき事を呼び起こすだろう。
ふむ、そうだな1ヶ月。この世界にもまだ慣れて居らぬだろう。
お主らの前に降臨された勇者も聖女もそれは偉大なる功績を残したものだ。
活躍を期待しておるぞ」
満足気にさも当たり前に王は言った。選択肢などない。有無を言わせぬ言葉の数々。
敬意のかけらもない。当たり前だと思ってる。
「???私たちは同一して異なる存在だけど、道具じゃないのよ。あなたが言っていることよくわからないわ。
そもそも、君主制なんて時代遅れだわ」
「王の御前であるぞ!小娘!」
「まぁ、良い。混乱しておるのだろう。時期に気がつく。そう、荒立てるな」
問う詩、怒る騎士、宥める王。
茶番だ。
「???生産性の余地のある、非効率な世界の為になぜ命をかけなければならないの?なぜ、効率性をあげないの!」
「な、この世界は私達の手に負えない魔王の手によって滅亡に瀕しているのです。人々を見殺しにする気なのですか!」
茶番だ。茶番だわ。
僕は笑いを堪えるのに必死だ。
言い分が稚拙。醒も何か言ってよ。
進化進化とオウムのように繰り返すやんごとなき方々の考えは僕たちには理解できない。
ようやく、お役目御免になったんだから。
好きにやらせてもらおう。
それも、そうね。
「ああ、酷いね。実験による投薬も暴力も」
「無くなって、終わったと思ったのに」
僕は言葉遊びを始める。
「終わったよ?役目は終わった」
「え?そうなの?」
「そうさ、僕たちは自由になったんだよ」
「痛いことする奴らもいない?」
「そうだよ。僕たちの好きにしていいんだ」
「じゃあ、もう」
俺たちには必要のないものだ。だが、こう言うのも終末には悪くない。
「「シんでもいい?」んだ」
言葉遊びは完結し、僕と詩は満面の笑みを浮かべた。
「国王陛下、発言の許可を」
「……」
踏ん反り返る王。仮面の笑みで膝をついた。
君主制を理解するのは難しいが、それに従んずる事はできる。
「…大変結構。申してみよ」
「ありがとうございます。是非ともお話ししたい事がございます。黙示録のラッパのことを」
「…」眉をひそめる国賓達。
「そうですね。この世界で言う魔王のことでしょうか?」
「!…その言い方ですと、あなた方の世界にも魔王がいると?」
含みのある笑みで王座を見上げる。
「神の使者ともなれば、それは即ち神託でしょう。協会側からも同席する許可願いたく。」
「…私のようなもの言葉を聞いていただけるとは、身に余る光栄です」
「今回の勇者は飲み込みが早い。フロル。お前なにをタラし込んだんだ?」
「……いいえ、まだ何も」
腕を絡ませて、くっついていた詩は不満を漏らした。
「うん。教えてあげないと可哀想だろう?」
自分達の終焉を。
「そうなの?」「そう言うの、優しさって言うんだよ」「知ってた」暇を持て余すように、僕たちはつまらない言葉遊びをした。
人払いを済ませた大きな王座の間。
「余程の話なのだろうな」
皆、険しい表情だが僕たちは上の空だ。
「はい。まずは、僕たちの星の話をしましょう。」
「それは、とても興味深いですね。
しかし、あなた様の御霊は元々この世界のもの。さぞや、彼方での生活は辛かった事でしょう」
「その世で無いものは、異物として弾き出そうとする力があるものです」
集まった偉い人は、僕たちを慰めているようだった。
「僕たちの星にも有名な神の啓示が沢山あるんですよ。
とりわけ、もっとも興味深いのは黙示録。黄金のラッパです。
僕たちの国ではすでにラッパが鳴ってしまった。第1のラッパにより血の混じった雹と火が地上に降り注ぎ、地上の三分の一と木々の三分の一と、すべての青草が焼けてしまった。」
僕は淡々と喋る。まるで、そっちの話など聞いていない風に。実際聞いてはいないのだが。
「ここまではいいですか?」
「恐ろしい話ですな。余程、彼方の世界の神は慈悲に掻ける。そんな物が啓示など」
困惑した表情。案の定、そんなくだらない話で時間を浪費したく無い。そんな感じだ。
待ても出来ない子供みたいだ。
「そう。だから僕は僕たちの世界の魔王のこと。と言ったんです。僕たちの世界には魔王も魔法も存在しません。発達したのは科学です。
物理化学的によって全てが証明された世界です。」
「つまり、勇者様は何を言いたいのですか?」
「そうですね。貴方方の言葉を使い表現するなら。人こそ、魔王あり神なんです。
そして、人は魔王として黙示録のラッパを鳴らした。そして、手に入れたんです」
「なっ」偉い人が言葉を詰まらす。
「僕たちの世界ではそれを進化と言いますが、
こちらの時代で言うのならそれは滅亡ですよ。滅亡。魔王も人類も」
笑顔を纏わせたまま、淡々と語る少年を見て。何かがおかしいと。異常だと感じるだろう。
「元々、こちらの魔王と呼ばれる存在は人のようですが。神だなんだと信じているなら、光栄なことなんでしょ。神の身許に帰りましょうって事なんですから。
なんで、そんな顔をするのでしょう?」
それは、時すでに遅しだ。
「ま、魔族!」「まさか!」魔族を呼び出してしまったのではと、王座は騒ぐ。
「ごほん。ああ、何というかご愁傷様です。あなた達は自分達の保険と引き換えに、とんでもないものを呼び出してしまったんですよ」
「奴らをすぐさま捉えなさい!!」
「フロル!?あ、ああ!あの邪悪なものを取り押さえろ!!」
「近親兵!早く!」
皇女が声を上げる。控えていた近親兵。側近たちが僕たちを取り囲む。
「僕たちの役目は果たされた。
ようやく手に入れた自由だ。
この知らぬ世界が滅ぶその時まで、僕たちの生きられなかった時間を生きる事にするよ」
抜刀された。その刃は僕たちに届くことはない。
「君たちはプログラムの中で永遠の思考を獲得する。永遠を手に入れることに無事成功した。これ以上に何を望んでる?」
「醒」
「詩」
「「黙示録のラッパを鳴らそう」」
バリィィイイイイン。
天窓のガラスが割れる。
「人間!貴様らまた余計なことを」
紫色の肌と、怖そうな角と黒い服。
「魔王!!どうやって結界を砕いた!」
「悠長に話してる場合か!己らが一体なにを呼び出したのかなんと愚か」
酷く怖い顔をして現れたのは魔族と呼ばれる種族の王。この世界の倒したいやつ。
「君がこの世界の王?」
「…如何にも。元の世界に帰ってもらおう。この世を終焉になどさせない」
世界の倒したいやつが、事の次第を理解しているなんて滑稽だ。
……。
「話ができるだけでも、見えぬ意思に比べればやりようはいくらでもあるのにね」
話が聞けるだけでもまだましなのに。
静かに呟いてやる。
そして、未だ殺意のこもった瞳で唯一僕を見つめる王女と視線を合わせる。
「貴様らも己を守りたいというのならあやつらを止めろ。」
「なにを…」
炎を飛ばす。恐ろしい火力。
一撃で受けたらきっと死ぬ筈の魔力と呼ばれる神の奇跡。その本質は…。言わずもがな。
「やったか!」「やったぞ!流石、魔王様」
未だ燃える王座。
「いやまだだ」
炎は一気に拡散する。
「第1騎士団何をしている!!!」「五帝魔術元老院は何をしている!」「結界が!」
酷く慌てふためく、何もわかっていない人族を横目に流す。
「僕たちを殺すの?」
「塵れ」
氷の槍が降る。
「僕たちは何度でも転生する。元の世界の因果、輪廻から隔離された僕たちは。この次元の因果律そのものに干渉対象を変えた。」
魔王に近寄るように歩く。
「終わらせる事が出来る?このプログラムには飽きたの」
現れたのは傷ひとつない異世界の2人の悪魔。
「化け物が。」
「「君には言われたくないな」」
僕と詩は苦笑する。
魔王は怒だ。
「防御はコチラに任せてください。」
「ふん、危機がようやくわかったか」
魔法が展開される。皇女のものだ。
「いいえ、貴方を殺して覇者になるのは父ではない。私だと知っているからです」
「減らず口が」
王が逃げ出した王座は空っぽだ。
「醒、先に行っているね」
「うん、すぐ行くよ。詩」
僕の愛しき兄弟。
王座に静かに立つ。啓示に示された天使のポーズを取る。
「始まるぞ。終焉が」
空に放たれる紫色の光。
それを、この世界では魔力と言うが。
僕たちの世界では、ナノテクノロジーと呼ぶ。
「綺麗…」
降り注ぐ宝石の雪が眩く光る。
「きゃぁあ」「なんだっ」「結晶化!」
人々がプログラム化していく。
「魔族の皆さん!一時撤退します!」
王女が魔法を展開する。
「時間停止か」
「はい、貴方の魔力もよこしなさい。それで、最低1時間は持つはず」
玉座の間を隔離し、凍結に成功する。
城下に降りると、プログラム化する人々。そして、あっという間に逃げ出した人々で静まり返っていた。
「魔王!ノコノコと殺されに来たか!」
「低脳は考えることが安易で楽そうだな」
安易な考えの人間が魔王と呼ばれる人間に喚く。
「どう言うことか、説明を」
ソレを手刀沈めたのは意外にもこの国の皇女だった。
「王女様なにを!」
「フロル!娘だからと勝手は許さんぞ」
後ろで、逃げ出して来た王と側近が声を上げる。
「我らと協力する気はあるか?」
「ええ、是非とも」
「なっ、いくら娘とて!」
ザシュッ。
「ならば、反乱を」
ソレは、あっという間の出来事だった。
皇女が王の首を落としたのだ。
「きゃぁあ!なんてことを」
「王女様!なんてことを!狂ったか」
側近が次々に抜刀していく。
「聞きなさい!そして目を逸らさず、あれを見るのです!!」
皇女が指をさした方には。
「助けて!助けて!」
「よるなっ!病原体め!」
「やめて!」
「殺せ!!」
結晶化した人間を病原体と呼び殺していく。
まさに、地獄絵図。
城から逃げ出して来た、家臣や侍女、騎士達はみんなして信じられないと顔を青くする。
「もはや、この世界の全てが狂ってる。真実から目を背け、知らぬと騒ぐな!!
私はそんな愚か者にはならない。」
皇女の言葉が救いだと、皆が自分可愛さに耳を傾ける。
「少なくとも、アレを止めに来た魔王は私達の知らないことを知っている。そうでしょう」
「ああ」
「今これより、この国の王は私だ!
私に異論がなければ黙って私に従え。愚か者!」
臆病者達が黙らせる。
「あー、フロル王女」
そんな、思い沈黙に吉報がやってきた。
「ルルーシュ!」
「サルベージュの宮廷魔導師様。なぜ、隣国のこの国に!!」
現れたのは隣国の宮廷魔導師。ルルーシュ。
その男は、皇女と魔王をチラチラ見ながら近づいてきた。
「世界の危機なんだろ。魔族と手を組んだのはびっくりだけど」
「各国はどんな対策を取ってるの?」
「奴さん達は事態の重要さに気づいてない。この国が魔族の共々滅べばいいとお考えだ」
「でしょうね。私も見るまではとても信じられないもの。」
「…結晶化はどこの国でも起こってる。だが、疫病か何かだと思ってる人の方が多い」
「貴方のような魔力が高い人間はみんな気づいてるのね。この事態に」
「何が、と、聞かれると詳しくはわからない。止めなければと焦燥感はあるな。…時期、力の強いものは集まってるだろう」
事の次第を掴んでいない世界各国に、イライラが募る。どいつもこいつも自分達の保険に走りやがって。
「話は済んだか。時間がない。時間凍結もあと、40分。どうする人間の王よ」
急かすように、魔王が問う。
「王?」「父を殺したからね」「はっ!?」
隣で宮廷魔導師が騒ぐが気にしない。
時間がない。
「そうね、とりあえず二重に凍結魔法をかけ直しましょう。それだけの魔力はまだ残ってるでしょう。
詳細はそれからよ。
とにかく、時間も人選も足りないわ」
「ズバッとぶっとばせないのかよ」
「総攻撃して倒せるものではない。あれは、もはや神に等しい信託だ」
「魔王が信託とか」
「魔族の王の総称であって、悪ではない!低脳な人間には何もわからんだろうがな!」
「やめろ、見苦しいぞ。八番隊」
「奴らは、結晶化ではなく。プログラム化と言っていたわ」
「ん?ぷろぐらむ?聞いたことない単語だな」
「さぁ、魔法をかけ直して聞かせてもらうわよ。魔王」
奴らの中身がどうであれ、時間凍結によって動きは止められている。
それは事実。
まだ、変えられる。
「彼らは行ってしまった?」
「ああ」
「頭はバラバラなのに。こんな精密なプログラムを書くこの世界は凄いわ」
時間の凍結した世界は、そんなに珍しいことではなかった。
「そうだね」
「そうだよ」
このプログラムが終了するまで待ってあげよう。
こうして、ゆうしゃは誕生しました。
こうして、まおうは誕生したました。
そのから、長きに渡り双子のまおうと戦うのですが。
これ、双子のまおうとゆうしゃの
おとぎばなし。
続きが書けそうないので、短編に致しました。
ご容赦ください。
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