表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霧崎守の幸福論  作者: 影文
9/16

08

日付の感覚が無くなるほどの時間を部屋の中で過ごした。頭の中を覆い尽くす恐怖を忘れようという努力は何の効果ももたらさず、頭を抱え込んでは唸る日々が続く。時より聞こえる親の声がまるで心臓を握りつぶされるような痛みを覚えさせどこにも逃げ場はないのだと実感させた。


 手首から血が流れている。


 冷たいソレの刃が体に差し込まれていくのを感じる。異物が体に侵入してきたことにより全身に拒否反応の様な電流が走り、『今すぐ抜け。』と脳内で誰かが叫んでいるように思えた。刃から柄に伝わる血は手を染め許容量を超えると手首から床へと滴っていった。

 

 しかし、恐怖は消えなかった。


 よろけた体は壁にぶつかり徐々に床へと崩れ落ちていく。広がっていく血の池はドロドロとしており、事故で出血した時のものと到底思えなかった。

 視界が段々と薄暗くなってきている。そして、ここまで来てようやく脳が活動を止め恐怖からの解放が与えられた。

 

 これほどまでに幸福な時間を今まで味わったことはない。


 柄を握っていた手はほどけ床へと転がった。反動で刃が少し体から抜けそこから一気に血が噴き出していく。もうそのころには俺の意識はなかった。

 



 そして気付くと僕はそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ