07
停学明けの朝を迎えてもノイズの正体は分からないままだった。
どうしても踏ん切りがつかず彼女に挨拶も出来ていない。
多分、俺は逃げているのだ。なんだかんだと言い訳をして、あの場所に戻らないようにしている。そして多分あのノイズは・・・。
久しぶりに着たこの忌々しい制服は少し痩せたせいか少し大きく感じた。靴を履く時には母がとても心配そうに玄関まで見送りに来た。
「行ってきます。」
出来るだけ明るくそう言った。
既に外の気温はあの時よりもかなり温かく、季節が変わり始めたことを実感させた。
ノイズが走る。
完治した足は松葉杖の感覚が多少残り独特の違和感を歩いていて覚える。
ノイズが走る。
そして、まるでそこで立ち止まらせることが役目の様にあの信号は俺を拘束した。
シャッター音が聞こえた。
咄嗟に周囲を見まわしたが、不自然なほどにそこには誰もいなかった。頭のノイズが激しくなってくる。
目の端で人が赤信号を進もうとしているのを察知した。交差点を向き直すとそこにあったのは彼女の後姿があった。
世界が凍るなんてもんじゃない。世界が止まったとさえ思えるほどの衝撃だった。あまりに現実的な彼女の姿に体は一ミリすら動かなくなった。そのせいで忘れていたのだ
今は赤信号だと。
目の前で勢いよく車が横切った。俺が見ていた彼女を轢いて車は通り過ぎていった。
頭に何かいる。
そう思えるほどの違和感が俺を襲った。それはまるで脳みそを握りつぶさんとする力で痛みを走らせた。叫べるレベルではないその痛みはノイズと混ざり合い例えようのないモノへと変容していく。
信号が青に変わると同時に走ってそこから離れた。距離が開くにつれソレは消え去り学校の敷地内に入るころには家を出る時と同じ程度のノイズが残った。
荒くなった息を整えようと壁にもたれかかった瞬間にソイツは再発した。
「あっ・・・・・ああ!」
頭を抱えて逃げ場を探すと、上に何かあるという感覚に襲われ空を見上げた。
少女が落ちてきた。
彼女が地面にぶつかる寸前、その体は唐突に速度を落とし俺を凝視した。
その目を見てしまった。
ノイズと共に彼女は消えた。
しかし、俺は確かにあの目を見た。
俺は逃げた。
いや、今だけに限った話ではない。俺は逃げていたのだ。
ここに戻らないように、思い出さないように、気付かないように彼女のことを悔いる気持ちがあることを言い訳に逃げてきた。
その答えを僕は知っている。