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警報音が鳴った。
全員がビクつきその原因を必死に探る。発信源は今手に持っているこの機械からだった。
彼女に異常は見られない。問題は開いていた地図の方だ。
赤い点が俺達の後ろに現れた。
考えなくても分かる。
後ろに何かいる。
山田はアサルトライフルを手元に召喚し後ろを振り向いた。それに合わせて俺も後方を確認する。
そこに立っていたのは、一頭のオークだった。
荒い息遣い、血走った眼、何故この距離にいて気付かなかったのだと自身の正気を疑ってしまう。
ゆっくり後ずさりし再び逃走を始める準備をしたが山本は銃口を向けたまま動かない。
直ぐに襲い掛かって来ると思ったが呼吸に合わせて肩を上下に揺らすだけでそれ以外の行動をしてのない。もしかしたらこちらが行動をしない限り襲ってこないのかもしれない。ならここは逃げるが勝ちだ。
「何やってんだ。逃げるぞ。」
「いや、この距離ならさすがに外さないだろう。ここは任せろ。」
俺には銃の種類何て全く分からないがこいつが構えているこの銃はそんなにあてになるものなのだろうか。
知り合って短いが、さすがに見捨てて逃げるのは気が引ける。
「分かった。信じるぞ。」
「・・・おう。」
山本が構えた銃は頭ではなく胴体に向いている。射撃の反動で銃口が跳ね上がった時の対策だろうか、肩に引き付けている力をかなり強くしているのが分かった。
そしてその時がやって来る。
放った銃弾は確かにオークに直撃した。力強く引き付け、銃口をずれないようにした努力も最初の三発が限界でフルートで銃弾が射出される度に反動でその銃口は徐々に上へと向かっていた。しかし、今回はそれが功を奏した。
偶然にも跳ね上がった銃口はオークの頭部へ向けられ、数発をその脳天に直撃させ、3秒も経たない内に30発以上を撃ちその銃声は止まった。
オークは絶命し、その亡骸が徐々に力を失い仰向けに倒れた。
俺と山本は
吐いた。
銃で生き物が撃たれるところを見るのは初めてだ。
だから、胴体に銃弾が入った後に残る気色の悪い穴と頭部に放たれた数発の弾丸のせいで、ぐじゃぐじゃになった顔がどれほどに見ていられないものかなんて知らなかった。
そして、追い打ちを掛けたのが仰向けになった後、その胴体の穴から徐々にはみ出しつつある臓器の醜さと漂う不快な匂いだった。
「・・・・おかしいだろ・・・。」
山本は唾を吐き出しながら言い放った。
「異世界転生系の主人公は何で躊躇無く生き物を殺せるんだ。こんなん見た後じゃあいつらがただのサイコパスにしか思えない。」
何を言っているのか正直分からなったが、その後も俺と山本は腹の中が空になり胃酸が出るほどに吐いた。機械のカメラを伏せていたのは正しい判断だっただろう。彼女にこんなものを見せてはいけない。
深呼吸をして、立ち上がる頃にはソレを見るのに少し耐性が出来たが長時間見ていると神経をやられそうな気がして俺は山本に肩を貸しひとまずソレが見えないくなるまで歩くことにした。