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一発と思われた銃声はその音質を今度は連続で数十発の弾丸を撃った様なものになった。
そして、徐々にだが近づいている。銃声も、それにつられるようにして来る大きな地響きも。
葉の擦れる音が聞こえ、森の方を見るとそこから一人の少年が走ってきていた。少年といっても同年代ぐらいだが、その手には自衛隊が手にするような機関銃が抱えられ一直線にこちらに走って来る。
「った!」
た?
息を切らしながら彼は叫んだ。
「助けてくれー!!!!」
その叫びと同時に森からオークの大群が木をなぎ倒し向かってきた。
「待て!待て!待って!待て!」
状況が理解しきれず同じ方向に逃げてしまった。銃を持った彼はさすがに追いつけないだろうと罪悪感にかられたが、ものの数秒で追いつかれた。
「待って、逃げないで、助けて!」
滅茶苦茶動揺して話しかけてきた彼は自分の持っているソレを何だと思っているのだろうか。
「銃持ってんだろ!戦えよ!」
「いや・・・あたらないんだよ!」
「はぁ!?」
彼は少し追い越すと振り返りバックステップをしながらオークの群れに銃弾を発射した。
最初の三発だけがオークの足元に着弾したと思うと後の銃弾は射撃の反動で上空へと飛んでいった。
態勢を直して再び二人で同じ方向へ走る。
「な!」
「な!じゃないだろう!」
無我夢中で走っていると徐々にオーク達との距離は離れ、向こうも諦めてくれたようで追いかけてこなくなった。
本来ならあり得ない距離を一気に走ったため、呼吸がまともに出来なくなった。荒くなった呼吸を必死で戻して言ってやる
「・・ふざけんなよ。・・・訳の分からないことに・・・巻き込むな。」
それでもまともに話せなかった。
「いや、森に降り立ったかと思うといきなりあのオークが出てきてな、コレは俺が力を使いこなして敵を殲滅するイベントかと思って。」
「出来てないじゃないか。」
「銃は出せたんだ!でもまさかAIM力がないなんて誰が想像できるんよ!」
銃を出せた?AIM力?何の話をしているんだこいつは。
「しかも、俺の能力って銃を無限に生成できるモノなんだけど、召喚したらどこにもしまえないんだよ。」
「欠点ばっかりだな!」
どうやら彼はあのアンケートに答えたようだ。彼の右往左往の仕様に僕は改めて自分の書いた答えに満足した。